目次
2018.2.3. 『私立探偵ダーク・ジェントリー』第2シリーズ公開開始 2018.3.3. SpaceXの快挙 2018.4.7. 『長く暗い魂のティータイム』 2018.5.5. ラジオドラマ第6シリーズ 2018.6.2. ラジオドラマ第6シリーズの収録風景 2018.7.7. Doctor Who: The Christman Invasion 2018.9.1. プラハに行ってきた 2018.10.6. ニール・ゲイマンの受賞なるか 2018.11.3. ニール・ゲイマンの受賞ならず 2018.12.1. ジェイムズ・グリックとの両想い
自分のホームページを初めて世界に向けて公開したのが2001年2月12日、それからほぼ毎週土曜日ごとに地道に更新を続けてきたけれど、その過程で実はひそかにストレスが溜まっていた。
表向き、私のホームページの内容は、ダグラス・アダムスとユーリ・ノルシュテインとアントニオ・ガデスの3人についての紹介で、そこには当然私の主観が色濃く反映されてはいるものの、一応ある程度の客観的な情報を記載するに留めている。その気になれば、誰でも調べられることではあるがそこまで調べようとは思わないだろうこと、たとえばアルメイダ劇場のこととか、または個別には知っていたとしても関連を意味づけようとはしないだろうこと、たとえばダグラス・アダムスとリチャード・ドーキンスの関係とか、そういう類の事柄だ。
だが、そうやって細々とした事どもを追いかけているうち、してやったりの体験や思いがけない幸運に出くわすことがある。だがそれらはあくまで私個人に属することなので、当然これまでホームページの中には一切盛り込まなかった。
たとえば、ロード・クリケット場。私は、ロード・クリケット場に入ったことがある。それも、一観客としてクリケットの試合を見たのではない。大体、私が訪れた日は試合をしてすらいなかった。では、会員でもなければ入れないはずのクリケット場に、どうしてクリケットのルールもロクに知らない私が試合のチケットもなしに入れてもらえたのかと言うと、その時私と一緒にロンドンを旅行していた友達の叔母さまがイギリス人と結婚してロンドンに住んでおられて、その結婚相手のイギリス人紳士がイギリス人紳士にふさわしくクリケットのファンで、ロード・クリケット場の会員だったのだ。そして、私の(かなり歪んだ理由でではあるが)ロード・クリケット場に対する思い入れを知ると、快く案内役を引き受けてくださった。
何年か前の3月。その年は常にない暖冬で、3月とは言えセーター一枚で汗ばむ程の陽気だった。叔母さまの自宅はリージェンツ・パークの東側で、そこからリージェンツ・パークを横切ってロード・クリケット場に歩いて行くことになった。私と友達とイギリス人の叔父さまの3人で、相当に怪しい英語で話しながら、柔らかい緑に染まった公園を散歩したこと、途中公園内にある休憩所で紅茶とお菓子をごちそうになったこと、友達はその時つましくスコーンを一つ手に取ったのに、私はやたらデカくて派手なフルーツタルトを食べたこと、いざクリケット場の前にたどりついて、施錠された門の前に立てただけでも感無量だったのに、叔父さまが中の人に話しかけて鍵を開けてくれるようお願いしてくださったこと、さすがにグラウンドの芝生の中には入れなかったがすぐそばまで行けたこと、私の全く知らないクリケットの名選手の写真が貼られたグラウンドの売店で、シンボルマーク入りのグッズやポスターを買えたこと、それらの記憶は褪せることなく今も鮮明に残っている。
おととしの初夏、叔父さまは早世された。さすがに私は行けなかったが、友達は直ちにイギリスに飛び、デヴォン州で行われた葬儀に間に合うことができた。その時、「クリケットに興味がある珍しい日本人」ということで、私の話も出たらしい。帰国した友達は、普段叔父さまが愛用されていたというロード・クリケット場のマグカップを、形見の品として私にくれた。マグカップには、ENGLAND V AUSTRALIA ASHES SERIES LORD'S 1993 という文字と、クリケットのバットを持った獅子(イギリス)とカンガルー(オーストラリア)のイラストが書かれている。
と、書き始めるときりがないが、それらはあくまで個人レベルの話である。故に、「ロード・クリケット場」の項目に載せるべきではないと考え、実際に書いたのは名称や最寄り駅や歴史についてのとびきり客観的な情報だけに絞った。絞ったものの、欲求不満は残った。
という次第で、「更新履歴・裏ヴァージョン」新設と相成った。こちらには、表の側には載せられない個人的な感想や思い出やその他もろもろについて、週間日記のような感覚で気の向くままに書いていくつもりでいる。
よろしければ、お付き合いください。
2018.2.3. 『私立探偵ダーク・ジェントリー』第2シリーズ公開開始
前回の同コーナーで書いた通り、Netflixのテレビドラマ『私立探偵ダーク・ジェントリー』第2シリーズは、私の期待通り、日本でも1月5日から公開が始まった。めでたい!
第1シリーズが公開された時の経験から、1月5日に公開されると言っても朝一番からアップされる訳ではないと知っていたので、前回のように早起きして待機してがっかりするという愚は繰り返さなかった(同じことをまたやったらさすがにバカだよね)。夜になって、確実にアップされたと思われる時間帯からNetflixにアクセスし、待ってましたとばかりに第2シリーズ第1話を選択したら――
あ、あれ? これ、本当に『私立探偵ダーク・ジェントリー』なの?? ひょっとして私、興奮しすぎて別のプログラムを選んじゃった???
……というのが、第2シリーズ第1話の冒頭を観た瞬間の、率直な感想だった。単に意外に思っただけでなく、実際に再生をいったん停止して番組のタイトルを確認した程だ。そのくらい、あのオープニングには意表を突かれた。
勿論(?)、しばらく進むと第1シリーズですっかりおなじみになった面々が登場し、ああ良かった、やっぱりこれは本当に『私立探偵ダーク・ジェントリー』だったんだ、と納得できたけど、第2シリーズ第1話ではサミュエル・バーネット扮するダークは組織に拘束されているため、第1シリーズでおなじみの黄色いジャケットは着ていない。初めてあの黄色いジャケット姿を見た時は「いくら何でもヘンテコすぎないか」と思ったのに、今ではすっかりあのジャケットが恋しくなっているから不思議だ、というか、まんまと製作者の意図にハマっているだけか?
その後、イライジャ・ウッド扮するトッドとの再会シーンにも見事に意表を突かれたし、第2シリーズ全体を通してハチャメチャとしか言いようのない出来事が次々起こるにもかかわらず最後には見事にきれいにつなげてみせる辺りは「全体論的」の面目躍如だったと思う。第1シリーズと比べて私が苦手だった血腥さも随分薄らいでいて、私としては好感が持ちやすかった。ただ残念だったのは、第2シリーズでは第1シリーズと違ってダグラス・アダムスの原作小説への言及とかほのめかしのようなものがほとんど出てこないこと。すっかりNetflix版テレビドラマ作品の世界として確立されていて、そのこと自体はいいんだけど、もう少し細部で目配せがあると良かったのに――と思ったけど、ひょっとして私がまんまと見逃しただけかもしれないので、やっぱりもう一度最初から冷静に見直してみようっと。
そして今回の更新は、テレビドラマ『私立探偵ダーク・ジェントリー』第2シリーズに加え、コミックス版の3作目 The Salmon of Doubt も紹介。合わせて、このコミックスの第1巻に付けられていた、テレビドラマで過激な殺戮者バートを演じた女優フィオナ・ドゥーリフによるイントロダクションも追加した。
コミックス The Salmon of Doubt は、『私立探偵ダーク・ジェントリー』第1シリーズの内容とコラボしていて、コミックスとテレビドラマの両方に目を通していた上で読むとなかなかおもしろい――言い換えると、コミックスとテレビドラマの両方に馴染みがない人にはやや意味不明かもしれない。当然ながら、アメコミ化されたサミュエル・バーネットなダークやイライジャ・ウッドなトッドも登場していて、サミュエル・バーネットはまだしもイライジャ・ウッドはあまりにも本人と似ていなかったため、びっくりしたことを告白しておく。それから、今年も勿論、「My Profile」コーナーに「2017年のマイベスト」も追加したので、こちらもよろしく。ま、2017年のベスト小説に関しては、「言わずもがな」もいいところだけどね。
あと、関連人物一覧に、2016年3月に開催された第14回ダグラス・アダムス記念講演で講演者を務めたアリス・ロバーツを追加した。私が気付いてなかっただけで、著書の日本語訳も出版されたのね。にしても、2017年に続き、2018年も今のところダグラス・アダムス記念講演が開催されるというニュースは入っていないが、やはり記念講演自体がもう終了なのかしら……?
現地時間2018年2月6日、SpaceX社は民間企業のロケットとしては破格の巨大サイズロケット、ファルコン・ヘビーの打ち上げに成功した。このロケットには、SpaceX社のCEOであるイーロン・マスクが所有する電気自動車テスラ・ロードスターが搭載され、(ダミー人形が座る)車の運転席から見える地球の姿も配信された。あたかも車で宇宙空間をドライブしているかのようなファンタスティックな映像だったが、真に注目すべきはこの車のダッシュボードに大きな親しみやすい文字で「DON'T PANIC!」と書かれていたこと。これは勿論、『銀河ヒッチハイク・ガイド』へのオマージュであり、イーロン・マスクによると、車のグローブ・ボックスにはちゃんとタオルも入れてあるらしい。
そう、アメリカの超有名起業家イーロン・マスクもまた、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の大ファンなのだ。
……という事実は、実を言うともう何年も前から友人に教えてもらって知っていた。が、南アフリカ共和国出身で10代のうちに母親の母国であるカナダに渡り、アメリカの大学に進学した彼がいつどのタイミングで『銀河ヒッチハイク・ガイド』を初めて知ったのか、とか、そういったディテールをインタビュー記事や書籍でちゃんとチェックするのがつい億劫で放置しているうちに、ロケット打ち上げで先を越されてしまった次第。とにかく、今度こそきちんと調べてイーロン・マスクを「ダグラス・アダムス関連人物」の一人に追加しなくちゃな。にしても、『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読んで人生が変わったという意味では私もイーロン・マスクも同じなのに、その後の人生ではえらい差がついたもんだよ。
という訳で、これからアメリカやイギリスの企業に本気で就職したいと考えている人は、『銀河ヒッチハイク・ガイド』は絶対におさえておいたほうがいいと思う。ファルコン・ヘビーの打ち上げに関するネット記事も、英語では「Note the "Don't Panic" on the dash display, a nod to Douglas Adams' Hitchhiker's Guide to the Galaxy; there's also, according to Elon, a towel in the glove box.」と書かれているだけだったが、この記事の日本語訳には「〔日本版〕『銀河ヒッチハイク・ガイド』には栄養剤などを染み込ませたタオルを持ち歩くキャラクターが登場する」という注釈がついていて、間違っているとは言えないものの「この注釈を書いた人は絶対に自分で『銀河ヒッチハイク・ガイド』を知らないよねえ」と溜息をつかずにいられなかった。勿論、宇宙開発に関するネット記事にさえこんな注釈が必要だということ自体、私としては忸怩たるものがあるんだけどさ。
と、凹んでばかりもいられない、明日3月4日からはラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』40周年を記念して製作された第6シリーズの放送が始まる(あのスティーヴン・ホーキングもゲスト出演するんですって)し、3月6日には河出文庫からダーク・ジェントリー・シリーズの2作目『長く暗い魂のティータイム』も出版される。ああ、次から次へと忙しいったらないわ。
でもその前、まずは今回の更新として、アダムスの『これが見納め』の20年後を追ったドキュメンタリー本に寄せた、マーク・カーワディンの序文を追加。一足先に序文を追加したスティーヴン・フライは、先日、前立腺ガンの手術を受けたことをネットで告白していたが、今のところ術後の経過は悪くなさそうで何よりだ。
ついに出ました、ダグラス・アダムス著『長く暗い魂のティータイム ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』(河出文庫)!
アダムスの小説を新訳で読めるのもいよいよこれで最後(The Salmon of Doubt とか、アダムス脚本の『ドクター・フー』のノベライズとか、日本語訳の出ていない作品もまだ残っているけれど、さすがにこれらは望み薄でしょ)かと思うと、もったいなくてちびちびと読み進めたいところだったが、いざ読み始めればおもしろくて止められないし、おまけに(日本時間の)3月9日からはラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズが始まり、このラジオドラマの原作であるオーエン・コルファーの『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』上下巻を急いで読み返さなくてはならない、という訳で、書店で『長く暗い魂のティータイム』を手に取った時の、「絶対にゆっくり時間をかけて読むぞ!」という固い決意はどこへやら、結局ほんの3、4日で読了してしまったのだった。あああああ。
正直、『長く暗い魂のティータイム』は、構成という点では前作に及ばないと思う。「神が不老不死ならば、今もこの地球上のどこかで生きて暮らしているはず」というアイディアそのものは悪くないが、それが「全体論的探偵」と巧くマッチしていたかというと、ちょっと怪しい。前作では数々のとんでもない出来事に巻き込まれてひどい目に遭うのはダークではなくもっぱら友人リチャード・マクダフだったのに対し、今回はダーク本人が振り回され役になっていることも、私が「全体論的探偵」らしさを感じられなかった一因かもしれない。
ついでに言うと、『長く暗い魂のティータイム』を読んでいる最中に私が頭に思い浮かべていたダーク・ジェントリー像は、『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』で描写されていたような「腹まわりが少しでっぷり」(p. 193)で明るい茶色のスーツと赤いチェックのシャツと緑のネクタイという格好の中年オヤジではなく、コミックス版で描かれていた細身のダークか、あるいはNetflixのテレビドラマ『私立探偵ダーク・ジェントリー』の、ヘンテコだがかわいらしい、黄色いジャケット姿のサミュエル・バーネットだった。前作を読んでいた時は、どちらも全くイメージしなかったのにな。我ながら謎だ。一方、(日本時間の)3月9日にはラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズの放送が始まり、『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』を大急ぎで読み返してみたところ――偶然ながら、『長く暗い魂のティータイム』にも『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』にも北欧神話の神々が登場していて実にややこしい。コルファーの頭の中では『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』のトールも『長く暗い魂のティータイム』のトールも同一人物(?)という設定だったのだろうか。私としては『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』で描かれるうじうじしたトールはあまり好きではなくて、原著を読んだ数年後、ケネス・ブラナー監督のアメコミ映画『マイティ・ソー』でクリス・へムズワース演じるソーを観て溜飲を下げた記憶があるのだが。
ということで、今回の更新はラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズについて。目下、第5話まで放送されていてBBC iPlayerの公式サイトから聴くことができる――日本にいても、何の問題もなくストリーミング視聴できる。今じゃ当たり前すぎて何とも思わないが、考えてみれば第4・5シリーズが放送された時は「CD発売を待たずに聴ける」ことに大いに感動したっけ。勿論、ファンとしてはモノとしてのCDも購入するつもりだけど、でもイギリスのAmazonでは4月13日発売なのに、日本やアメリカのAmazonでは9月25日発売になっていて、どうやら日本やアメリカのAmazonで販売されるのは「International Edition」らしいんだけど、ちょっと待ってよ、この違いは何ーーー?!
ラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズは、オーエン・コルファーの原作小説『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』があまり好きではないという意味でそんなに期待していなかったが、いやいやなんの、よく出来ていた。原作で私がうざいと感じていた小ネタの数々はばっさりカットされており、ネタバレというほどのことでもないと思うから書くけれど、ダーク・マッグス脚本のラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズは、オーエン・コルファーの原作小説とはラストシーンが異なっていて、この改変がまた原作よりずっといい!
さらに嬉しい驚きだったのが、かなりの高齢となった主要キャストたちの声が、見事なまでに第1シリーズの時から変わっていなかったこと。特にアーサー役のサイモン・ジョーンズときたら、声だけ聴いていると第1シリーズかがら40年(!)もの歳月が過ぎたとはとても思えませんって。
とは言え、さすがに既に亡くなられた主要キャストについては別の人が担当するしかない(そりゃそうだ)。トリリアン役は、スーザン・シェリダンに替わってテレビドラマでトリリアン役だったサンドラ・ディキンソンが務めている。サンドラ・ディキンソンはラジオドラマ第5シリーズで(並行宇宙の)トリシア・マクミラン役を既にやっていただけに妥当なキャスティングだとは思うが、彼女が演じたトリシア・マクミランは「ゼイフォードの宇宙船に乗り損ねたトリシア・マクミラン」のほうであって、「ゼイフォードの宇宙船で地球を脱出し、後にランダムという娘の母親となるトリリアン」ではない。それでなくても元々ややこしくこんがらがった話なのに、この交代劇でより一層ややこしいことになってないか?
その他、第6シリーズから新規で参加したナレーター役のジョン・ロイドは、本職はプロデューサーなのにそつなくこなしている感じで、さすがケンブリッジ大学フットライツ卒だけのことはある、と感心。一方、今回マーヴィン役を務めたジム・ブロードベントについては、これまでのラジオドラマとテレビドラマのスティーヴン・ムーアや映画のアラン・リックマンのマーヴィンと比べると鬱っぽさが足りない気がして、こちらはやや残念だった。
そんなラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズは、既にCD-BOXも発売されているし、手軽にAudible.comからダウンロード購入することもできる。興味のある方は、是非。
そして今回の更新は、今年1月に発売されたジェイムズ・ゴスによるノベライズ Doctor Who and the Krikkitmen の冒頭に掲載された、ダグラス・アダムス本人が遺していた提案書を追加。映画版「ドクター・フー」に向けての具体的な企画というよりは「SF映画はかくあるべし」という主張とか宣言に近くて、とても興味深い文章だった。
が、しかし。アダムスは、映画『ソイレント・グリーン』を観る気にもなれないと貶す一方、SF作家ハリイ・ハリスンのことは高く評価していて、えーーっと、『ソイレント・グリーン』の原作小説『人間がいっぱい』の著者は他ならぬハリイ・ハリスンだと知った上で書いてます? それとも不運な偶然かしら??
2018年5月25日、イギリスのペンギン・ブックスが「タオル・デー」を記念し、ラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズの収録時の映像を公式ツイッターアカウントでアップした。
それが、こちら。
貴重な映像、どうもありがとうございます(感泣)。にしても、ラジオドラマとして音で聴いている分には何とも思わなかったが、アーサー役のサイモン・ジョーンズとフェンチャーチ役のジェーン・ホロックスが並んでいる映像を見ると、恋人同士というより親子だよね(苦笑)。
という訳で、イギリスのペンギン・ブックスが『銀河ヒッチハイク・ガイド』を推してくださっていることには大いに感謝しているものの、正直言って私は未だに「『銀河ヒッチハイク・ガイド』と言えばパン・ブックスじゃないの?」という気がしてならない。実際、今でもアダムスが書いた小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズはすべてパン・ブックス(正確には今では「パン・ブックス」という名称ではなく、マクミラン社の傘下にある一部門の「パン」)から出版されている。実際、2017年11月にもまた新しい装丁の全1巻ペーパーバックを発売して私から金を巻き上げたばかりだ。
それに対し、ペンギン・ブックスが版権を持っているのは、オーエン・コルファーが書いたシリーズ6作目だけ。ま、今回はこの作品がラジオドラマになったということで、ペンギン・ブックスが積極的な営業ツイートをしたとしてもおかしくはないけれど、ツイートに貼られたリンク先にあるのはAmazon.co.ukで販売されているBBC Degital Audioが発売しているラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズのCDで、さすがにここはコルファーが書いた原作小説へのリンクでも良かったんじゃないかしら……?
ともあれ今回の更新は、ラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズのCDに入っていたリーフレットに書かれていた、プロデューサー兼ディレクター兼脚本家のダーク・マッグスによる「プログラム・ノート」を追加する。これを読んでから、親切なイギリスのペンギン・ブックスがアップしてくれた収録映像を見ると、さらに感無量なこと間違いなしだ。
それからダグラス・アダムス関連の最新ニュースとして、また新たに発売されたアダムス作品の解説書 You and 42: The Hitchhiker's Guide to Douglas Adams を追加した。この本は、複数の書き手がアダムスに関するそれぞれの得意分野(?)について記した短い文章を集めたもので、先日ようやく手元に届いた実物を手に取ってみても、書き手の経歴の類は記載されていない――多分、本職の研究者というより在野のマニアとかファンの人たちなんだと思う。想像していたより字が小さくて昨今いよいよ本格的に老眼に悩まされ始めた身には少々キツいけど、きっとアダムスや『銀河ヒッチハイク・ガイド』に対する愛に溢れた文章を楽しめると思う。
2018.7.7. Doctor Who: The Christmas Invasion
ダグラス・アダムスについて語る上でイギリスのSFテレビドラマ『ドクター・フー』を外すことはできないし、『ドクター・フー』を語る上でダグラス・アダムスを外すことはできない、という話は、このコーナーでもこれまで何度も書いてきたし、両者の関わり合いについてまとめた長文もアップした。だから、今さら『ドクター・フー』作品の中で誰がどんなオマージュをしようと、喜びはしても驚きはしない自信があったのだが。
2018年4月、ターゲット・ブックスからまた新たな『ドクター・フー』のノベライズが出版された。オリジナル・ストーリーではなく、2005年12月25日にクリスマススペシャルとして放送された「クリスマスの侵略」というエピソードを小説化したもの――そう、デイヴィッド・テナント扮する10代目ドクターお披露目の回にして、かつ、テレビドラマの中でドクターが自分のことを「アーサー・デントみたい」と揶揄する回である。今から約10年ほど前、このエピソードを日本語字幕で観て"Just Arthur Dent"の台詞に初めて気付いて驚天動地した時のことは、2008年2月23日付の同コーナーで長々と書いた通りだが、ううむ、このエピソードが小説化されたとあっては、私としても一応目を通しておかねばなるまい、と、不承不承ながら(一番安い)電子書籍版をダウンロード購入して読んでみたところ――「ちょっと待て、本当にここまで踏み込んで書いていいの?!」と、またぞろ驚天動地する羽目に。
私としては、テレビドラマの台詞をなぞるくらいで十分だったんだけどねえ。まさか、そのさらに先まで進むとはねえ。このノベライズの著者ジェニー・T・コルガンが巻末に添えた謝辞には、ダグラス・アダムス・エステートに加え、もともとこのエピソードの脚本を書いたラッセル・T・デイヴィスの名前も出ていた("Russell T Davies particularly for his patience with my stupid questions and for being SO FUNNY")くらいだから関係各所と相談の上で書いたんだろうが、それにしてもびっくりしたなあ、もう(苦笑)。
……ということで、今回のノベライズで私が何にどう驚いたかについては、『ドクター・フー』関連記事の第6章に追記したので、良かったらこちらも覗いてみてください(にしても、これをやったら他との整合性が取れないと思うんだがな、これはあくまで今回のノベライズに限っての設定ってことでいいのかな???)。
合わせて、アメリカの人気シチュエーション・コメディ『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』について「Topics」欄に追加した。こちらも、内容が内容だけに、『銀河ヒッチハイク・ガイド』が出てこないほうが不思議なくらいの番組である。というか、もっとどんどん積極的に言及してくれてもいいのよ?
さらに、ラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』CDに、第6シリーズの目次も加筆。単にラジオドラマを聴くだけならAudible等でダウンロード視聴するほうが手軽だが、Audibleだと各章のタイトルが表示されないのが謎。この差は何?
……そして、この夏もまた、私は2ヶ月の夏休みに入ります。次回の更新は、9月1日。月日の経つのが年々早く感じられ、2018年も既に半分以上終わってしまったなんて信じられないとか言ってるくらいなので、2ヶ月なんてきっとあっという間だろうなあ……。
夏休みを利用して、ウィーンとプラハに行ってきた。
ウィーンに行くのは3度目で、プラハは初めて。2016年夏に初めてウィーンを訪れた際には、2016年9月3日付の同コーナーにも書いた通り、ウィーン自然史博物館に行ってコモドオオトカゲやアマゾンマナティーやカカポやドードーに会ったけど、今回はそれもなし。このサイトの内容とは関係なく、純然たる観光旅行を楽しむつもりだったのだが――。
プラハの街は素晴らしかった。かわいい装飾でいっぱいのアールデコな建物も、暗く重くそびえ立つ荘厳な建物も、石畳の狭い道路も広い橋も、何もかもがあまりに魅力的で、歩き続けずにいられなかった。が、さすがに歩き疲れてプラハにある有名な老舗カフェ、カフェ・スラヴィアで一休みし、さてホテルに戻ろうかとカフェを出たところ、すぐそばに「ACADEMIA」という書店を見つけた。チェコ語は全くわからないけれど、何となく店の感じが良さそうだったのでふらふらと入ってみて、何となくフィクション、それも翻訳フィクションが並んでいそうなコーナーを探してみたら、
チェコ語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』があったーーー!!!まさに鳥肌モノの瞬間。チェコ語に翻訳されたことがあるのは知ってたけど、2018年の今なお、たいして広くもない翻訳小説のコーナーに、ハードカバー&イラスト付きのチェコ語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』が置いてあるなんて思わなかったもの。掻き抱くようにしてレジに持って行くと、書店の包装紙で綺麗にラッピングしてくれて、これまた感泣モノだった(勿体ないやらありがたいやらで、その時の包装紙は今も大事に保管している)。
プラハの街そのものも「死ぬまでに来られてよかった」というレベルに素晴らしかったのに加え、そこにチェコ語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』まで手に入ったとあっては、もう万々歳。ヘタレな私にとって、ウィーンに行くだけでも大冒険だ。なのに、そこからさらに電車に乗って国境を越えてプラハまで行くなんて、自分の甲斐性を過信しすぎてはいないだろうか、無謀な計画じゃなかろうか、と、さんざん迷ったけれど、思い切って行って本当に良かった。
……などと考えながらホテルまで戻り、大切なチェコ語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』を速攻でスーツケースにしまい込む。汚したり濡らしたり盗られたりしたらシャレにならないからね。それから再びホテルを出て近くの百貨店にショッピングに出かけたら、その百貨店にも書店が入っていて、しかも先程の店より圧倒的に広いではないか。これはもしやひょっとして、と、翻訳小説のコーナー、というよりSF/ファンタジーのコーナーを探してみると、やっぱりあった。しかも今度は、『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズ全5冊をまとめた1巻本のペーパーバック!
『銀河ヒッチハイク・ガイド』、チェコでは本当に人気があるんだなあ、と、しみじみしながらレジへと向かう。迷った末に買わなかったけど、このペーパーバックの隣にはニール・ゲイマンが書いたダグラス・アダムスの伝記本 Don't Panic のチェコ語訳まであったくらいだもの。チェコで『銀河ヒッチハイク・ガイド』は、定番中の定番として認知されている、と断言してもいいのではなかろうか。いやはや、私のチェコへの好感度は上がる一方だぞ。
ということで今回の更新では、チェコ語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』ゲットを祝して、これまでに私が集めた小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』のコレクションをまとめて公開することにした。同じ本ばかり、よくまあこれだけ買ったもんだよ。
チェコには負けるかもしれないが、日本でも『銀河ヒッチハイク・ガイド』の知名度は年々上がっている気配はあって、先日、それを裏付けるかのような記事が雑誌「ポパイ」2018年9月号に掲載された。8月24日にダグラス・アダムス関連の最新ニュースとして追加した通り、「Comedy Guide for City Boys」という特集記事の中で、コメディの「SF」部門は「ダグラス・アダムス一択で」と、見開き2ページで大々的に紹介してくれている。マニアな私の目からみてもとても濃くて充実した内容になっていて、嬉しいったらない。
「ポパイ」の記事のことを、このホームページの「ご意見・ご感想はこちらまで」のコーナー経由で私に教えてくれたのは、2016年3月5日付の同コーナーでご紹介したアーティストのQUESTION No. 6さん。本当にありがとうございました!
前回の更新で、私が所有する小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズのコレクションを33点まとめてアップしたが、実際の私の部屋の中ではそれらはちっとも整理されていない。恥ずかしながら、前回の更新のために数年ぶりに部屋のあちこちから本を引っぱり出してみて、たっぷりホコリをかぶっているだけならまだしも日に焼けて変色しているのに気付いて「ひーーー」と悲鳴を上げたりした。
そうやって発掘(?)した中の1冊が、2002年にデル・レイ・ブックスから出版された『銀河ヒッチハイク・ガイド』の全1巻本。今から15年以上前、2001年にアダムスが亡くなってから程なくして出版されたこの本には、ニール・ゲイマンによる序文がついている。とっくにこのホームページで紹介したかと思いきやまだ手つかずだったので、今回の更新で追加することにした。
あれから15年以上経ち、現在のニール・ゲイマンは、今年のノーベル文学賞がセクハラ問題で見送りとなったことを受けてスウェーデンの別の組織が選ぶ今回限りの新文学賞の、最終候補4人のうちの1人にノミネートされている。何という快進撃!
ゲイマン本人は「ノミネートされただけで十分光栄」とか何とかツイートしていたけれど、私としては是非ともゲイマンに受賞してもらいたい。それも、やはり候補者の一人である村上春樹を蹴落として受賞してもらいたい――と思っていたのに、村上春樹が「メディアの注目を避けて執筆活動に専念したい」とか何とかいう理由でノミネートを辞退してしまったため、ゲイマンが「蹴落として受賞」する目はなくなった。ちっ、つまらん。
そんなことはさておき、もし10月12日の選考結果発表で本当にゲイマンが受賞したら、2010年に角川書店から出版された『墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』を最後にストップしたままになっているゲイマンの長編小説の日本語訳が、また新たに出版されるようになるかもしれない。そういう意味でも、私は大いに期待している。一時は、2006年の『アナンシの血脈』を皮切りにゲイマンの長編小説の日本語訳が毎年のように出版されて私を狂喜させたというのに、今じゃテレビドラマ化されて話題となっている(はずの)『アメリカン・ゴッズ』すら絶版という有様だ。どうしてゲイマンの小説は日本であんまり受けないんだろう。ううううう。
どうか新文学賞の受賞が起爆剤になって、Fortunately, the Milk とか The Ocean at the Lane とか、未訳作の日本語訳が出てくれますように。絶対に日本語訳が出ない、と分かっている作家や作品なら、私もあきらめて英語で読むことを考えるけれど、ニール・ゲイマンなら日本の出版社からいつ出てもおかしくない気がして、英語でトライする気になれないのよ。
今回の更新では、ニール・ゲイマンの序文と共に、ダグラス・アダムス関連人物コーナーにコリン・ジョイスというイギリス人ジャーナリストも追加した。日本に長らく在住したことがあって、日本人に知られざる本当のイギリスとかイギリス人に知られざる本当の日本といった事柄についてのエッセイ記事をたくさん書いている人だが、彼もまた、かなりのダグラス・アダムス・ファンだった。現時点で、私がまだ読んでいないエッセイ本が何冊かあるので、ひょっとしたら来月の更新で書き足せる何かが見つかるかもしれない。
書き足せる何か、と言えば、今月はリチャード・ドーキンスの新著『魂に息づく科学 ドーキンスの反ポピュリズム宣言』も早川書房から発売されるんだった。この本に「書き足せる何か」が含まれていることは間違いなしなので、今から楽しみ。早いところ近所の書店で予約しておかなくては。
ノーベル文学賞に代えて今年限りで発表された「ニューアカデミー文学賞」、私の期待を裏切ってニール・ゲイマンの受賞とはならなかった。ちっ、残念。
ま、受賞しようとしまいと、ニール・ゲイマンの日本語訳さえ出てくれれば私は満足なんだけどね。アマゾン・プライムで放送されているテレビドラマ『アメリカン・ゴッズ』は高評価かつ大人気みたいだし、続いて『グッド・オーメンズ』もテレビドラマ化されるみたいだし、そちらのほうからゲイマンの人気に火がついてくれるというならそれはそれで大歓迎だが、今の日本ではまだちと難しいか(私自身、アマゾン・プライムに入ってなくて観られないし)。一方、ついに日本で大ブレイクを果たしたのが、P・G・ウッドハウスである。何と、皇后さまがお誕生日の会見で、退位後の楽しみとして「ジーヴスも二、三冊待機しています」とおっしゃったのだ。さまざまなマスメディアで「ジーヴスって何ぞや」が大々的に報道され、アマゾンの週間書籍ランキングにはウッドハウスのジーヴス・シリーズがランクイン。まさに日本最強の推し、である。
私のツイッターのTLでは、文藝春秋翻訳出版部の公式アカウントと国書刊行会の公式アカウントが仲良く(?)ツイートやリプライをしていて、そのやり取りをリアルタイムで追うのも楽しかった。その中で文藝春秋翻訳出版部の公式アカウントが提案していた、まずは文春文庫から全2巻で出ているよりすぐりの短編集を読んでみて、気に入ったら国書刊行会の全シリーズに手を出す、という流れに私も賛成。さらに私としては、「ウッドハウスまでたどり着いたら、『銀河ヒッチハイク・ガイド』まであと一歩!」と言いたいところだが――さすがに無理があるかしら?本の話題で言えば、先月はリチャード・ドーキンスの新訳も出たっけ。『魂に息づく科学 ドーキンスの反ポピュリスト宣言』(早川書房)。これまでに発表したエッセイを選りすぐってまとめた1冊、ということで、当然のようにダグラス・アダムスの名前も出てくるのだが、ここに収録された「さようなら、夢見るデジタルエリート」というエッセイは、みすず書房から出版されたアダムスの『これが見納め――絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』でも日本語訳が読めるので、残念ながらありがたみはイマイチだった。
そして今回の更新は、在野のダグラス・アダムスのファンや研究者たちのエッセイを集めた You and 42 に、ダグラス・アダムスの公式伝記本の著者、ジェム・ロバーツが寄せた序文を追加した。
近所の図書館の新刊コーナーで、ジェイムズ・グリック著『タイムトラベル 「時間」の歴史を物語る』という翻訳書を見つけた。
こんなタイトルの本ならきっとダグラス・アダムス作品も出てくるはず、と、巻末の参考図書欄に目を走らせたところ、期待たがわずちゃんとアダムスの名前も挙がっていた。それも、『宇宙の果てのレストラン』と並んで、アダムスが脚本を書いた『ドクター・フー』の1エピソード、'The Pirate Planet' まで!
ただ、残念ながらこの翻訳書には参考図書は載っていてもインデックスは載っていないため、本のどこに『宇宙の果てのレストラン』や 'The Pirate Planet' が出てくるかまでは分からない。知りたきゃ自分で読むしかない。
幸い、副題に「物語る」と書かれている通り、かなり読みやすい本ではあった。H・G・ウエルズの『タイムマシン』や映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、そして勿論『ドクター・フー』といったフィクションをまじえて、時間の概念や理論といったものが、哲学や物理学を通していかに考えられてきたかを系統立てて説明してくれる。とは言え、合間に出てくる相対性理論だのシューレディンガー方程式だのは私の手には負えなくて、さくっと飛ばし読みしたのも事実。すみません。
今回の更新では、当然、『タイムトラベル 「時間」の歴史を物語る』に出てくるアダムス関連の箇所を紹介している。が、紹介するにあたって、「ジェイムズ・グリックって名前、何か聞き覚えがあるなあ」と思ったら、既に「ダグラス・アダムス関連人物」の中に挙がっていた(うっ)。自分で書いておいてすっかり忘れ果てていたが、ジェイムズ・グリックが1987年に書いた科学書『カオス―新しい科学をつくる』を、アダムスが激賞していたんだった。この本は1991年に新潮文庫として出版されていて、私も買って持っていたんだった(うっっっ)。いつか読まなきゃと思ったきり、冒頭の3ページくらいまでしか読んでなかったよ、そりゃ憶えてないはずだよ……。
にしても、かつてアダムスが愛読していた本の著者が、後に自著でアダムス作品を引用するなんて、アダムス本人が知ったらさぞ嬉しく思うんじゃないだろうか。それも、誰もが知ってて当然の『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズだけでなく、『ドクター・フー』旧シリーズの1エピソードまで引っ張り出すとは、ジェイムズ・グリックはかなりのダグラス・アダムス・ファンだね、きっと。
気を取り直して、今回の更新では、You and 42 という在野のダグラス・アダムス・ファンによるエッセイ集の内容についても紹介している。今回採り上げた中でも、現在24,5歳と思われる若いアメリカ人男性が今は亡きアダムスに宛てて書いたファンレターには、読みながら泣くほど心を動かされた。正直、このファンレターを読むためだけでも安からぬ送料を払ってこの本を購入した甲斐があった、とも。
その一方、前回の更新で追加したこの本へのジェム・ロバーツの序文に関しては、訳していて「そういう言い方ってどうなの?」と思うことしばしで、私の誤読かなあと首をひねることもしばしだった。ロバーツが書いたアダムスの伝記本が期待したほど売れなかったことはよく分かったけど、誰の伝記であれ死後20年も経っていないのに4種類もの伝記本が出回れば、そりゃ売り上げも頭打ちになるだろう。5種類でも6種類でも、あればあるだけ買って読み比べたいと思う(私のような)ディープなマニアは、さすがにそんなに多くないですって。
そして、今年の更新もこれで最後になります。次の更新は2019年2月2日の予定ですので、またどうぞよろしく!