The Hitch-Hiker's Guide to the Galaxy : Hexagonal Phase
Program Note by Dirk Maggs


 以下は、ラジオ・ドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第6シリーズのCDに入っているリーフレットにプロデューサー、ダーク・マッグスが寄せたプログラム・ノートの抄訳である。
 ただし、訳したのは素人の私であるので、少なからぬ誤訳を含んでいる可能性が高い。そのため、この訳はあくまで参考程度にとどめて、全貌をきちんと知りたい方は、必ずオリジナルにあたってくださるようお願いする。

Program Note

 勿論、ダグラスがいるのといないのとでは大違いだ。彼は、僕らがラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第3シリーズを製作するためにスタジオにたどり着く前に亡くなっていた。将来新しいシリーズを作るなら「the Tertiary Phase」と名付けるべきだろうね、と話し合った気がするのだが――それから、勿論、オリジナルのキャストたちにはそれぞれのキャラクターについてあれこれ相談させてもらった。僕らはさらに第4シリーズと第5シリーズを立て続けに製作し、ダグラスが書いたストーリーを根本的に完結させた。彼は5作目の小説のラストでシリーズの愛すべきキャラクターたちを死なせてしまったことを後悔していると僕に話していたので、僕はおこがましくもラジオドラマのラストシーンで、彼らは本当には死んでいないかもしれない、という告知を追加した。この改変について、ダグラスの言葉を引用すると、「多くの人が立腹したし、よけいなことをしてくれたというのがおおかたの意見だった」(『宇宙の果てのレストラン』、p. 7)。でも、放送から数年間の間に僕が受け取った電子メールによれば、多くの人を幸せにもしたようで、ほっとした。

 勿論、キャストの皆さんとはその後もずっと交友関係は続いていたが、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の仕事に関しては一段落したという気分だった。が、2008年、ダグラスの弟にあたるジェイムズ・スリフトが、ラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』30周年を記念して、僕らみんなが最集合し、ラジオのオリジナル脚本を使ってライブパフォーマンスをしないかと持ちかけてきた。それも、王立地理学学会で開催される、ダグラス・アダムス記念講演の場で。

 ライブパフォーマンスは大成功に終わり、アルテミス・ファウル・シリーズの著者オーエン・コルファーによる『銀河ヒッチハイク・ガイド』の新作小説が公表され、2009年、僕らはロイヤル・フェスティバル・ホールで再演することになった(オーエンは、『宇宙の果てのレストラン』に出てくる、とてもアイリッシュな「本日の料理」役を務めた)。さらに、オリジナル・キャストによる『銀河ヒッチハイク・ガイド』ライブツアーが持ち上がり、僕らは2012年から2013年にかけてイギリス中を東奔西走し(いつも絶対そうだったとは言い切れないけれど、大体のところ、観客は楽しんでくれたと思う)、2015年3月4日にはBBC Radio4で一度限りの簡易版ライブパフォーマンスをさせてもらった。みんなで放送局を出て、暖かい日差しの下、スタジオYGI(ヨークシャー・グレイ・パブのこと)に向かいながら、今度こそ本当に『銀河ヒッチハイク・ガイド』は区切りがついたなと感じていた。

 勿論、区切りはちっとも区切りではなく、現に僕らはまたこうして集まって、『銀河ヒッチハイク・ガイド』40周年を記念してオーエン・コルファーの小説のラジオドラマ化に取り組んでいる。2009年にBBC Radio4の「Book At Bedtime」で放送された、小説『新・銀河ヒッチハイク・ガイド』の完全版の朗読を聴きながら、僕は、ダグラスが未発表のまま遺したメモや没原稿を漁りまくって、それらをオーエンが書いた愉快でワクワクするような語りの中に混ぜ込むことができるんじゃないかと考えていた。この手のリサーチにかけては、『銀河ヒッチハイク・ガイド』と誰より長い付き合いがあり、シリーズのありとあらゆるヴァージョンに通じたビデオ年代記録者、ケヴィン・ジョン・デイヴィスの右に出る者はいない。彼は、何日もケンブリッジ大学のセント・ジョンズ・カレッジ図書館で過ごし、ダグラスが寄贈した記録類を熟読した。その結果、素晴らしい材料が山ほど見つかり、オーエンの壮大な物語を補強することができた。そういった素材は、願わくばそうと気づかない形で、ラジオドラマの中に編み込まれている――そうすることで、ダグラス本人が物理的に不在である以上、全く同じではないにせよ、それでも僕らの作品には彼のヴィジョンや精神が埋め込まれている。

 『銀河ヒッチハイク・ガイド』のキャストが再結集した同窓会はいつだって楽しい――中心になるのは、サイモンと彼の妻ナンシー、ジェフ、マーク、そしてサンドラ。まるで家族みたいな感じは、さらにファンや友人たちへと拡大していく。どの時点でどんな形で加わわったにせよ、事を始めた張本人であるはずのダグラスの死後、ずっと『銀河ヒッチハイク・ガイド』にばかりかまけていたわけでないにせよ。

 キャストも増えている。マーク・ウィング・ダーヴェーが2013年のUKツアーにゼイフォード役として参加することができず、コメディアンでソングライターでミュージシャンのミッチ・ベンが役を引き継いでくれたことで、僕にも野心が目覚め、音楽ディレクターのフィリップ・ポープに頼んで「宇宙の果てのレストラン」のシーンに「テレフォン・ブルース」という曲を追加することにした。そして今回、オーエンが『新・銀河ヒッチハイク・ガイド』でゼイフォードの頭を二つに分けたため、僕はラジオドラマ第6シリーズでもミッチをキャスティングし、文字通りマークと共演させることができた。

 残念ながら家族のメンバーには別れを余儀なくされ、二度と一緒に共演できない者もいる。スティーヴン・ムーアは俳優の仕事からの引退を表明したため、彼が演じた鬱病ロボットのマーヴィンの陰気な声を残念ながらあきらめざるを得なかったが、代わりにジム・ブロードベントが(第1シリーズ以来初めて)参加してくることになったのは望外の喜びだった。

 とりわけ嬉しかったのは、ダグラスのかつてのルームメイトにして共著者であり、テレビ番組「QI」の製作者でもジョン・ロイドが、新しい「本」の声を引き受けてくれたことだった。ジョンはオリジナルのラジオドラマ・シリーズの役柄に多くのインスピレーションを与え、第6シリーズでも独自の解釈を見せてくれた(と同時に、たくさんの悪態も聞かせてくれた)。何たって読みづらいのだ。とりわけダグラスが書いた箇所は。

 2015年に我らが愛しのイングリッシュ・ローズ、トリリアンことスー・シェリダンが亡くなったことは、僕らみんなにとって衝撃だった。スーは声と同じくらい優しい人で、とっと変わったユーモアのセンスの持ち主だった。そして最後まで現役の俳優だった。二度目のUKツアーでは、体力が戻るよう直前まで舞台袖で横になり、舞台で全力を出し切った。この最後のシリーズは、スーと、最近亡くなった二人の友人に捧げている。ジェーン・ベルソン、ダグラスの未亡人で、『銀河ヒッチハイク・ガイド』を生かし続ける許可を得ようとヴォゴン人並みのバトルを繰り広げていた時に僕らを支持してくれた。それから、侮りがたきエド・ヴィクター、ダグラスのエージェントで、以前、僕らが『銀河ヒッチハイク・ガイド』をオリジナルの形で留めようとあがいているのを見て「まるで絵本の『ちびっこきかんしゃだいじょうぶ('the little engine that could')』だね」と評したこともあった。

 ともあれ、ちびっこきかんしゃはとうとう終着駅に着きました。みなさまが快適な乗車を過ごされますように、そして、これまでの旅と同じくらい楽しまれますように。

 

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