関連人物一覧  -D-


Davies, Russel T. ラッセル・T・デイヴィス
Davison, Peter ピーター・デイヴィソン
Dawkins, Richard リチャード・ドーキンス
Dent, Arthur アーサー・デント
Dickinson, Sandra サンドラ・ディキンソン
Dixon, David デヴィッド・ディクソン
Doherty, Berlie バーリー・ドハティ
Dourif, Fiona フィオナ・ドゥーリフ
Du Sautoy, Marcus マーカス・デュ・ソートイ


Davies, Russel T.  ラッセル・T・デイヴィス 1963-

 イギリスの脚本家。これまでに多くのテレビ・ドラマの脚本を手掛けているが、そのかたわら、1996年には『ドクター・フー』のノベライズ本 Damaged Goods を出版する。この小説の中では、7代目ドクターの旅の仲間(コンパニオン)のクリスが、アダムスの『ほとんど無害』を読んだという設定になっているらしい。
 2005年から放送の始まった『ドクター・フー』の新シリーズでは、デイヴィスは脚本家兼エグゼクティブ・プロデューサーとして、自ら多くのエピソードの脚本をを執筆するのみならず、新シリーズの脚本全体を監督するような立場になった。そして、彼が書いたエピソードの一つ、2005年12月25日に放映された「クリスマスの侵略」では、主人公ドクターの台詞に「アーサー・デント」の名前が出てくる。このエピソードでは、ドクターは珍しくパジャマとガウン姿で活躍することになり、それを踏まえて自分のことを "Just Arthur Dent" と語るのだ。BBCがクリスマスに放映する特別番組のクライマックス・シーンで、唐突に「アーサー・デント」を出しても視聴者に意味が通じると判断されるのだから、いかにイギリスで『銀河ヒッチハイク・ガイド』の知名度が高いか、よく分かるというものである。
 さらに、2007年12月25日放映の 'Voyage of the Damned' では、「宇宙船タイタニック」のアイディアが中核となっている。ただし、デイヴィスがこの脚本を書き始めた時、アダムス製作のコンピュータ・ゲームのことは知らなかったようだ。
 この他に、2007年5月19日に放映された '42' も、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の「42」を踏まえている(ただし、このエピソードの脚本家はデイヴィス本人ではなくクリス・チブナル)。
 デイヴィスは、ウェールズのスウォンジー生まれ。これまでのところ、『ドクター・フー』以外の作品は日本では放映されていないが、Children's WardThe GrandQueer as FolkMine All Mine といったテレビ・ドラマ・シリーズ作品の他、後に9代目ドクターを演じることになるクリストファー・エクルストン主演のドラマ、The Second Coming (2003) の脚本で高い評価を得た。また、Casanova (2005) では10代目ドクターになるデイヴィッド・テナントが主演している。
 また、小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』30周年を記念して、2009年9月1日にパン・ブックスから新装版のペーパーバックが出版された際には、序文を寄せた。デイヴィスとベンジャミン・クックのメール書簡をまとめた The Writer's Tale: The Last Chapter には、2008年11月14日に序文執筆を依頼された時のデイヴィスの感想が書かれている。

One other thing happened today: I've been asked to write the Foreword for the 30th anniversary publication on The Hitchhiker's Guide to the Galaxy. I'm so honoured. That book, of all books. When I was 16, that book was as cool as punk rock, and drugs, and sex, it really was. Everyone carried it around with them at school. In a plain old Swansea comprehensive. And now, I'm writing the Forward! I can't believe they've asked me. (pp. 512-513)

 実際にデイヴィスが書いた『銀河ヒッチハイク・ガイド』への序文を読んで、少なくとも2009年の時点では、彼以上の適任者はいないと思ったのは私だけではないと思う。


Davison, Peter  ピーター・デイヴィソン 1951.4.13-

 イギリスの俳優。テレビ・ドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』第5話で「本日の料理」役として出演した(この役は、ラジオ・ドラマ版ではまだ存在していなかった)。彼はまた、同じくテレビ・ドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』でトリリアン役だった、サンドラ・ディキンスンの夫でもある。
 当時から既に高名だったピーター・デイヴィソンを配役する経緯について、テレビ・ドラマ版のプロデューサーのアラン・J・W・ベルいわく、

サンドラが僕のところにやってきて、ピーターが『銀河ヒッチハイク・ガイド』にゲスト出演したがっているんだけど、本日の料理役なんかどうかしら、と提案した。「まさか、あのピーター・デイヴィソンに牛の着ぐるみを着させる訳にはいかないよ!」と断ったんだが、「でも、彼はそういうのをやりたがっているんだってば」とサンドラに食い下がられ、僕はOKを出し採用することにした。彼には、スターにふさわしい報酬を渡さなかったけれど、彼はお金のためじゃなく楽しむために出てくれたんだしね。それに、演技のほうもとても素晴らしかった。(Gaiman, p. 81)

 デイヴィソンはロンドン生まれ。多くのテレビや映画に出演しているが、「本日の料理」の後、1981年から1984年にかけてテレビ・ドラマ『ドクター・フー』で5代目ドクター役を務めている。2013年11月、『ドクター・フー』50周年を記念してさまざまな特別番組が放送されたが、ネット配信された30分番組 The Five(ish) Doctors Reboot の脚本も担当し、アダムスが脚本を書いた『ドクター・フー』のエピソード 'Shada' の映像も一部取り入れた。
 また、2008年10月2日から放送の始まったラジオ・ドラマ『ダーク・ジェントリー』第2シリーズでは、サイモン・ドライコット役を務めている。
 主な出演作品は以下の通り。

Doctor Who (1981-1984) 『ドクター・フー』(テレビ・ドラマ)
Campion (1989) 『探偵紳士キャンピオン』(テレビ・ドラマ)
Black Beauty (1994) 『ブラック・ビューティー/黒馬物語』
The Mrs. Bradley Mysteries (2000) 『ブラッドリー夫人の推理』(テレビ・ドラマ)
Unforgiven (2009) 『アンフォーギヴン 記憶の扉』(テレビ・ドラマ)


Dawkins, Richard リチャード・ドーキンス 1941.3.26-

 オックスフォード大学教授。生物学者。アダムスの死に際して、「ガーディアン」紙に追悼文を寄稿した。
 アダムスはドーキンスのファンであることを公言していたが、一方のドーキンスもアダムスのファンで、アダムスにファンレターを送ったことがあるという。実際、二人の交際はドーキンスのファンレターがきっかけで始まり、プライベートでも頻繁に電子メールをやり取りする仲になった。1992年には、アダムスの紹介で知り合ったララ・ウォードと結婚している。
 ドーキンスの代表作『利己的な遺伝子』(1989年版)の442頁および520頁にはアダムス関連の記載もあるし、『虹の解体』でもすぐれたSF作品の一例として『銀河ヒッチハイク・ガイド』が取り上げられている。

SF小説では自然法則に手を加えることがあるが、一つの局面で、せいぜい一カ所が限度、それもよく考えられた末のことだ。法則性が根底からないがしろにされることはなく、それゆえにすぐれたSF小説たりえるのである。小説の中のコンピュータは進化して意識を持つようになり、それは悪意に満ちたものであったり、ダグラス・アダムスの名作『銀河ヒッチハイク・ガイド』のように被害妄想に陥ったりする。宇宙船は未来工学が作り出したワープ航法によって遠く離れた銀河まで旅する。しかしどの場合でも核心の部分では、科学のありようは一定のラインを保っている。科学は謎を認めるが、魔法は認めない。奔放な想像力を越えた不可思議は認めるが、呪術や魔術を認めない。安易な奇跡を認めない。質の悪いSFでは法則を守るという軸足を失って、かわりに「何でもあり」の魔術が乱発される。最悪なのは、それが超自然現象と手を組むケースである。(p.52)

 ドーキンスの言う「被害妄想に陥った」コンピュータとは、鬱病ロボットのマーヴィンのことか? それとも『宇宙の果てのレストラン』に出てくるノイローゼになったエレヴェーターのことか?

 エッセイ集『悪魔に仕える牧師』には、ガーディアン紙に掲載の追悼文と、セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ教会で行われた追悼集会でのドーキンスの頌徳の辞が収録されている他、「心のウィルス」「立ち上がるべきとき」と題されたエッセイでも、アダムスの言葉や文章が引用されている。
 また、『祖先の物語』では、アダムスが『最後の光景』で書いたアイアイの描写を絶賛し(『上巻』、pp. 246-247)、『ドクター・フー』並びに『ダーク・ジェントリー』で絶滅した飛べない鳥ドードーを哀悼したことに、深い共感を寄せた(同、pp. 403-404)。
 無神論について語る最新作『神は妄想である 宗教との決別』では、ドーキンスはアダムスに献辞を捧げている。

そもそも本書をダグラスの思い出に捧げようと考えたのは、ダグラスが私の初期の本――ほかの誰かを転向させることはなかった――を読んで転向したことがきっかけになっている、ということを申し添えたい!(略)ダグラス、私はあなたを失ったのが淋しい。あなたは私にとって、もっとも賢明で、愉快で、もっとも心広く、機知に富み、もっとも背が高く、そしておそらくたった一人のわが回心者だ。私はこの本があなたを笑わせることができたのではないかと思っている――あなたが私を笑わせてくれたほどではないにしても。(pp.174-176)

 2013年に出版された『ドーキンス自伝1 好奇心の赴くままに 私が科学者になるまで』にも、アダムスの名前は登場している。ドーキンスがアダムスと知り合う前の、『利己的な遺伝子』発売直後のことしか書かれていないにもかかわらず、だ。

ダグラス・アダムスは、まさに私を襲ったようなコンピューター中毒をおもしろおかしく風刺した。彼の皮肉の標的は、解決する必要のあるXという特定の問題を抱えたプログラマーだった。彼はXを解決するプログラムを五分で書き、それから仕事を進めて、その解決法を使った。しかし、それをするだけで終わらず、彼は、より包括的なXという部類のすべての同様な問題を、誰でもがいつでも使うことができるような、より一般的なプログラムを書くことに何日も何週間も費やした。何が楽しいかと言えば、その一般性と、一団の仮説上の、おそらくはまず存在しないユーザーにとって審美的に心地よく、ユーザーフレンドリーな作品を供給することにあり、特定のX問題への答えを実際に見つけることがそうなのではなかった(p. 324)。

 アダムスが皮肉の標的とした悩めるプログラマーは、アダムス自身のことでもあるとみて間違いないだろう。

 続いて2015年に出版された第2弾の自伝『ドーキンス自伝2 ささやかな知のロウソク 科学に捧げた一生』は、1976年に『利己的な遺伝子』を出版し、一躍その名前を知られるようになってからの日々について語っている。ただし、時系列に沿って書かれていた前作とは異なり、「テーマによって分けられ、横道への脱線と逸話によって区切られた、一連のフラッシュバック」(p. 44)という構成になっている。
 オックスフォード大学で学生を個別指導していた頃の話、アナバチについての共同研究の話、招待された学会の話、出演したテレビ番組の話、出版した本の話……と、さまざまなテーマに分かれているが、さすがに大学での研究と学会発表には出てこないものの、その他のあちこちでダグラス・アダムスの名前が出てくる。冒頭のカラー口絵でさえ、アダムスの写真が2枚も載せられている。
 該当箇所は以下の通り。

「ある祝宴での回想」

 ドーキンスが、70歳の誕生パーティで行ったスピーチ。「悲しいかなこの祝宴にはいない、ダグラス・アダムスという、偉大な忘れがたい人物が思い起こされます。一九九六年、五五歳のときに私は自分より一〇歳若いダグラスと、《科学の障壁を破る》と題するチャンネル4のテレビ・ドキュメンタリー番組で対談したのです。この番組の目的はほかでもなく、科学がもっと広い文化のなかで花開く必要があることを示そうとするもので、ダグラスへの私のインタビューはその白眉でした」(p. 39)

「クリスマス講演」

 イギリスの王立研究所では、毎年、子どもたちのためのクリスマス講演が開催されていて、ドーキンスがその講演を依頼された時の話。全5回の講演のうち、4回目の講演でドーキンスは「人間が動物を搾取してきた歴史について」話したが、その中で『宇宙の果てのレストラン』に出てくる、自らレストランのメニューとして客に食べられたがるウシの話を引用しようとして、

このブラックなユーモアに富んだ哲学的に秀逸な作品を朗読してくれる人間が必要になった。ここで私はまたしても、「幼い聴衆」のなかから志願者を募った。いつものように、数十本の熱心な手が挙がり、私はそのうちの一人を指さした。大男が七フィート(二メートル)近い長身を伸ばしたので、私は彼を、前に来るよう差し招いた。

「お名前はなんとおっしゃいますか」
「えーと、ダグラスです」
「ダグラス何さまですか」
「えーと、アダムス」
「ダグラス・アダムス! なんという驚くべき偶然でしょう」

 少なくとも年かさの子どもたちは、このやり取りが仕組まれたものであることに気づいていた(pp. 184-185)

「出版社を得るものは恵みを得る」

 ダグラス・アダムスの40歳の誕生パーティ会場で、後に結婚することになる三度目の妻ララ・ウォードと初めて出会った時のエピソードが語られる。「ララスティーヴン・フライと話をしているところへ、ダグラスが私を連れて行き、私たちは引き合わされた」(p. 227)
 1996年に『不可能の山に登る』の宣伝ツアーで、ドーキンスがララと一緒にニュージーランドを訪れた際には、「残念ながら、フィヨルドランド(この場所についてダグラス・アダムスは、誰しもが最初に思わずするのは「ただ自然に拍手喝采してしまうことだ」と言っていた)にまで行くことはできなかった」(p. 235)。

「テレビの裏側」

 《科学の障壁を破る》というテレビ番組で、アダムスにインタビューした時の話をきっかけに、アダムスと知り合うことになったいきさつ、その後の交流について語られている。(pp. 299-303)

「シモニー教授職」

 数学教師のグウェン・ロバーツについて、「もし作家であれば、きわめてエキゾチックなpulverbatchをもてるだろう」(p. 415)。同じページにpulverbatch という言葉についての註があって、「ダグラス・アダムスの造語〔本のカバーの有名な作家たちが寄せる推薦文の冒頭の一節のことで、若い頃に苦労したとかいうようなことが書かれている〕。

「編まれた本の糸を解きほぐす」

 『不可能の山に登る』で、貝殻の形を例にあげて生物の進化パターンを考えると、貝殻の形状の変化は、フレア、ヴァーム、スパイアと名付けられた3つの数値が作る三次元の枠の中に限定されることが分かる。しかし、「いくつかのかなり大きな、数学は許容するがいかなるものも実際に生き延びることのできないような、「立ち入り禁止」区域(面というよりもむしろ空間)がある。これは、そうした形状が機能的に生存不能だからである。そうした「危険(ここにはドラゴンがいる)」〔ダグラス・アダムスの『これが見納め』に出てくるコモドオオトカゲの存在を警告する看板の文句〕地帯にとどまる突然変異体は、ただ死ぬしかない」(p. 523)

 『神は妄想である』を2006年に出版した際に、ドーキンスに向けられた非難に対する反論。「そのような非難がなされるのは、宗教が批判を、あるいは上記のような文章に盛り込まれたような穏やかな冷やかしさえも禁止する慣例を受け入れようとでもしているのでなければありえないと、私は推測する。この論点は、『神は妄想である』の何年か前に、ダグラス・アダムスがケンブリッジ大学での即興スピーチではっきりと述べていた」(p. 597)

 『ドーキンス自伝2 ささやかな知のロウソク 科学に捧げた一生』で、ドーキンスはアダムスが『ドクター・フー』の仕事をしていたことにも触れている。ドーキンスいわく、1970年代後半が「《ドクター・フー》がもっとも才気にあふれた番組であった頃」であり、その理由は「彼(アダムスのこと)はこの番組のスクリプト・エディターをしていて、ララトム・ベイカーの、二人組の主役としての独創的に皮肉な演技が、台本の機知の価値をさらに高めていたから」(pp. 236-237)とのこと。『ドクター・フー』の数あるエピソードのうち、ドーキンスは少なくともアダムスとララ・ウォードが直接関わっているものについては視聴済みのようだ。

 ドーキンスの主な著作は以下の通り。

The Selfish Gene (1976) 『生物=生存機械論』 紀伊國屋書店 
The Extended Phenotype (1982) 『延長された表現型』 紀伊國屋書店 1987年
The Blind Watchmaker (1986) 『盲目の時計職人』(『ブラインド・ウォッチメーカー』改題) 早川書房 2004年
The Selfish Gene: new edition (1989) 『利己的な遺伝子(増補改題『生物=生存機械論』)』 紀伊國屋書店 1991年
The River Out of Eden (1994) 『遺伝子の川』 草思社 1995年
Unweaving the Rainbow (1998) 『虹の解体』 早川書房 2001年 
A Devil's Chaplain (2003)  『悪魔に仕える牧師』 早川書房 2004年
The Ancestor's Tale: A Pilgrimage to the Dawn of Life (2004) 『祖先の物語 ドーキンスの生命史』 小学館 2006年
The God Delusion (2006)  『神は妄想である 宗教との決別』 早川書房 2007年
The Greatest Show on Earth (2009)  『進化の存在証明』 早川書房 2009年
The Magic of Reality: How We Know What's Really True (2011)  『ドーキンス博士が教える「世界の秘密」』 早川書房 2012年
An Appetite For Wonder: The Making of a Scientist (2013)  『好奇心の赴くままに ドーキンス自伝I: 私が科学者になるまで』 早川書房 2014年
ABrief Candle in the Dark: My Life in Science (2015)  『ドーキンス自伝2 ささやかな知のロウソク 科学に捧げた一生』 早川書房 2017年
Science in the Soul: Selected Writings of a Passionate Rationalist (2017)  『魂に息づく科学:ドーキンスの反ポピュリズム宣言』 早川書房 2018年
Outgrowing God: A Beginner's Guide (2019)  『さらば、神よ 科学こそが道を作る』 早川書房 2020年

  この他に、『リチャード・ドーキンスの生命の進化』(1997)というCD-ROMも主婦の友社より発売されている。


Dent, Arthur  アーサー・デント (died 1607)

 エセックス州の聖職者で清教徒。1601年に説教集 The Plaine Man's Pathway to Heaven を出版した。
 アダムスはかつて、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の主人公の名前はこの聖職者にちなんで付けたのではないかという指摘の手紙を受け取ったことがある。アダムス自身はこんな本があること自体知らなかったと語っていたが、アダムスの自伝の著者シンプソンによれば、1976年夏に滞在していたケンブリッジの教員ハリー・ポーター宅でアダムスがこの本を目にしていた可能性が高いという。ちょうどアダムスが彼の家に滞在していた時に、ポーターは友人から17世紀に出版されたオリジナル本を借りていたと言うのだ。
 シンプソンは「偶然ということはない」(Hitchhiker, p. 94)と、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の主人公と The Plaine Man's Pathway to Heaven の著者との関連を断言しているが、さて真相はいかに?


Dickinson, Sandra  サンドラ・ディキンソン 1948.10.22-

 アメリカの女優。テレビ・ドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』ではトリリアン役を、ラジオ・ドラマ第5シリーズではトリシア・マクミラン役を務めた。
 これまで数多くの映画、テレビ・ドラマに出演しているが、主な出演映画は以下の通り(* は声の出演)。

The Final Programme (1973) 『ファイナル・プログラム/インプット完了メシア創造の瞬間』
Superman III (1983)  『スーパーマン2/電子の要塞』
Supergirl (1984)  『スーパーガール』
Balto (1995) * 『バルト』
Space Truckers (1996)  『スペース・トラッカー』


Dixon, David  デヴィッド・ディクソン 1947.10.28-

 イギリスの俳優。テレビ・ドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』でフォード役を務めた。
 ダービシャー生まれ。数多くのテレビ・ドラマに出演している。主な作品はシェイクスピア原作の『あらし』(1980年)など。


Doherty, Berlie  バーリー・ドハティ 1943- 

 児童文学作家。イギリス・シェフィールド在住。
 代表作『シェフィールドを発つ日』(福武書店)と『ディア ノーバディ』(新潮社)で、二度のカーネギー賞を受賞している。
 その『ディア ノーバディ』(1992年)に、アダムスの『宇宙の果てのレストラン』が登場する。主人公の少年クリスが、友達のトムと一緒にフランスを自転車で旅行する際に持参した本の中に、『宇宙の果てのレストラン』も入っていたのだ。

夜には雨がふりだした。トムはぼくのテントに入ってくるだろうし、ぼくは寝袋なしで寝なければならない。ぼくの足が突きだすはずのあたりには、自転車の後輪がばらばらになっていた。女の子がふたり、近くでテントを張りはじめた。彼女たちがやっぱり石ころのせいで苦労していたから、そしてトムは自信家だったから、それにどっちみちぼくとは冷戦状態だったから、トムは彼女たちの手伝いにいった。ぼくはふくれっつらですわりこみ、『宇宙の果てのレストラン』を読むことにした。おかしいはずのSFなのにすこしも笑えなかった。(p.179)

 自転車は故障、トムとは喧嘩。「『宇宙の果てのレストラン』を読んでも笑えない」のは、いかにこの時の主人公が不機嫌であるかの証という意味なのか、はたまた単純に『宇宙の果てのレストラン』なんてたいしておもしろくなくて気分転換の役にも立たないという意味なのか?

 そして、翌日。

朝いちばんに自転車を預けてしまうと、あとは一日じゅう本を読んでいた。『レストラン』を読みおえ、『ライ麦畑でつかまえて』を読みはじめた。「この本はきみの人生を変えるぞ」とヒッピーはいっていた。たしかに、変わってくれなきゃ困る。(p.180)

 自転車旅行にしては、この主人公たちはたくさんの本を携帯している。旅行前に英文学教師のヒッピー・ハリントンから貰ったもので、「どれも彼のバイブル」とのこと。その他に名前の挙がっている本は、『禅とモーターサイクルの手入れ』というハウツー本と、ジャック・ケルアック著『オン・ザ・ロード』。
 『ライ麦畑でつかまえて』については引用した通りだし、『オン・ザ・ロード』についても「やっぱりヒッピーのお薦め」という形容が入っている。しかし、肝心の『宇宙の果てのレストラン』に関しては、ヒッピーのヒの字もついていない。前後の文脈からして恐らくはこの本も「彼のバイブル」だろうと思われるけれども、いくら何でもこの本だけクリスが自分で本屋で買ったということはないだろうとも思われるけれども、どうせなら私個人してはアダムスに対するヒッピー先生の一言コメントをいただきたかった。


Dourif, Fiona  フィオナ・ドゥーリフ 1981.10.30- 

 アメリカの俳優。Netflixで公開中のテレビドラマ『私立探偵ダーク・ジェントリー』で凶暴な殺し屋バート役を務めた。2017年6月に発売されたコミックス版『ダーク・ジェントリー』3作目に、イントロダクションを寄せている。
 ニューヨーク生まれ、ロスアンジェルス在住。これまで数々の映画やテレビドラマに脇役やゲストとして出演してきたが、『私立探偵ダーク・ジェントリー』のバートを現時点での彼女の代表作と看做していいだろう。父親は俳優のブラッド・ドゥーリフで、「チャイルド・プレイ」のチャッキーを彼が声を担当している関係からか、彼女も「チャイルド・プレイ」シリーズ最新作で主演している。


Du Sautoy, Marcus  マーカス・デュ・ソートイ 1965.8.26- 

 イギリスの数学者。2010年3月11日に開催された第8回ダグラス・アダムス記念講演の講演を行った。
 2006年、デュ・ソートイは、素数の謎を解くいわゆる「リーマン予想」に「42」という数字が重要な鍵となる可能性を示唆するエッセイ "Prime Numbers Get Hitched" を、Seed Magazine というウェブマガジン上で発表している。  

We have known since the 1920s that the first two numbers are 1 and 2, but it wasn't until a few years ago that mathematicians conjectured that the third number in the sequence may be 42―a figure greatly significant to those well-versed in The Hitchhiker's Guide to the Galaxy.

 ダグラス・アダムス記念講演の演題は、"42: the answer to life, the universe and prime numbers"。演題から察するに、素数と「42」の関係について語ったと思われる。
 デュ・ソートイは、オックスフォード大学数学研究所教授を務め、多くの専門論文を発表するかたわら、タイムズやガーディアンなどに寄稿している。中でも、一般向けに書かれた数学の啓蒙書『素数の音楽』(2003年)はベストセラーとなった。2008年には、初代リチャード・ドーキンスの後を継いで、オックスフォード大学に設置された「科学的精神普及のための寄付講座」(the Simonyi Professorship for the Public Understanding of Science)の教授に就任した。その他の著書には、『シンメトリーの地図』(2008年)、『数学の国のミステリー』(2010年)がある。

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