関連人物一覧  -W-

Walters, Minette ミネット・ウォルターズ
Ward, Lalla ララ・ウォード
Waugh, Evelyn イーヴリン・ウォー
Westfahl, Gary ゲイリー・ウェストファール
Wickens, Paul 'Wix' ポール・'ウィックス'・ウィッケンズ
Willis, Connie コニー・ウィリス
Wingrove, David デイヴィッド・ウィングローヴ
Winston, Robert ロバート・ウィンストン
Wodehouse, P. G. P・G・ウッドハウス
Wood, Elijah イライジャ・ウッド


Walters, Minette  ミネット・ウォルターズ 1949.9.26-

 イギリスの推理小説作家。
 第3作『鉄の枷』(英国推理作家協会ゴールドダガー賞受賞)で、『銀河ヒッチハイク・ガイド』が印象的に引用されている。
 まずは冒頭のエピグラフより、

「四十二!」ルーンクォールが叫んだ。「七百五十万年かけて、それだけか?」
「何度も徹底的に検算しました」コンピュータが応じた。「まちがいなくそれが答えです。率直なところ、みなさんのほうで究極の疑問が何であるかわかっていなかったところに問題があるのです……。究極の疑問が何であるかわかりさえすれば、答えの意味するところもおわかりになるでしょう」 ダグラス・アダムス『銀河ヒッチハイク・ガイド』(p. 4)

 そして、作品のエンディング近くにおいて、

警部は乾いた笑い声をたてた。「答えが四十二だとしたら、究極の疑問は何だ? 『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読めよ。正しい疑問を持つのは、正しい答えを得るよりむずかしいんだ。だから、そのことで眠れないほど悩むのはやめたほうがいい」(p.321)

 ウォルターズはイングランド南東部ハートフォードシャー生まれ。ソールズベリーのゴドルフィン・スクールからダーラム大学に進学、フランス語を学ぶ。大学を卒業してからは、いくつかの職を転々とした後、女性向けロマンス雑誌の編集者となる。一時は複数のペンネームを用いてロマンス小説を書きまくっていた。結婚してしばらく執筆をやめていたが、やがてもともと自分が好きだったミステリー小説を書き始め、これがミネット・ウォルターズ名義で発表された事実上の第1作、『氷の家』となる。この小説で英国推理作家協会最優秀新人賞を受賞し、一躍その名をミステリー界に知らしめた。翌年に発表された第2作『女彫刻家』でも、アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞を受賞、その後も1,2年に一作のペースで新作を発表し続けている。
 ウォルターズの主な著作は以下の通り。

The Ice House (1992) 『氷の家』 東京創元文庫
The Sculptress (1993) 『女彫刻家』 東京創元文庫
The Scold's Bridle (1994) 『鉄の枷』 東京創元社 1996年
The Dark Room (1995) 『昏い部屋』 東京創元社
The Echo (1997) 『囁く谺』 東京創元文庫 2002年
The Breaker (1998) 『破壊者』 東京創元文庫 2011年
The Shape of Snakes (2000) 『蛇の形』 東京創元文庫 2004年
Acid Row (2001) 『遮断地区』 東京創元文庫 2013年
Fox Evil (2002) 『病める狐 上・下』 東京創元文庫 2007年
Disordered Mind (2003)
The Devil's Father (2005) 『悪魔の羽根』 東京創元文庫 2015年
The Chameleon's Shadow (2007)
The Cellar (2015)

 この他に、The Tinder Box (1999)、Chickenfeed (2006)の中編2作を収録した『養鶏場の殺人/火口箱』(東京創元文庫、2014年)がある。


Ward, Lalla  ララ・ウォード 1951.6.28-

 イギリスの女優。アダムスがテレビ・ドラマ『ドクター・フー』の脚本の仕事をしていた時、彼女も出演者の一人だった(ドクターの助手のロマーナ役)。その縁で、後にアダムス経由でリチャード・ドーキンスと知り合い、結婚することになる。ドーキンスは、2001年5月14日付のガーディアン紙に寄せたアダムスへの追悼文の中で

彼の四○歳の誕生パーティの際に、私に妻を紹介してくれた。彼と妻は同い年で、某博士のところで一緒に働いていたのだ。私は妻に今すぐ伝えるべきだろうか、それとも、悲惨な一日が始まるまで、ほんのすこしだけ余計に眠らせておいてやるべきだろうか? 私たちが一緒になるきっかけを与えてくれたのは彼で、ずっと変わることなく私たちにとって重要な役割を果たしてくれていた。やはり、今すぐ彼女に報せなければ。(『悪魔に仕える牧師』、p. 289)

 と書いたが、ここに出てくる「某博士」というのが要するに『ドクター・フー』のことである。原文は "He was exactly her age, they had worked together on Dr. Who" となっており、『ドクター・フー』を全く知らない訳者に誤解されても無理はないか。
 ウォードはロンドン生まれ。いくつかの映画やテレビ・ドラマに出演し、1979年から1980年まで『ドクター・フー』のロマーナ役を務めたが、これはちょうどアダムスが『ドクター・フー』の脚本の仕事に携わっていた時期でもあった。1980年12月にはドクター役だったトム・ベイカーと結婚するも、16ヶ月で離婚している。その後も女優業を続けるかたわら、イラストや執筆などで数冊の本も出版しており、1992年にドーキンスと二度目の結婚をした。アダムスとは、ドーキンス夫人となってからのほうが却って頻繁に会うようになったのだとか。それだけに、夫からアダムスの突然の死を知らされた時の驚きは大きく、最初は冗談かと思ったという。
 その後、2002年になって、アダムスが脚本を書きウォード自身も撮影に参加したもののBBCのストのせいで放送されないままに終わってしまった『ドクター・フー』のエピソード、Shada が新たにオーディオ・ドラマ化された時には、ウォードはオリジナルキャストの一人としてロマーナ役を務めている。さらに、2012年3月にShadaギャレス・ロバーツによって小説化されると、その朗読も手掛けている。


Waugh, Evelyn  イーヴリン・ウォー 1903.10.28 -1966.4.10

 イギリスの小説家。風刺性が強くブラック・ユーモアに満ちた作品を発表する。中でも、ウォーの代表作『一握の塵』(A Handful of Dust, 1934年)はアダムスいわく20世紀英文学の白眉とのこと。
 ロンドン郊外ハムステッド生まれ。父親はジャーナリストにして出版社の重役、母親の一族もインドで軍人や役人を輩出するという、裕福ではあるが中産階級の家庭に育ち、子供の頃は毎週日曜には父親と英国国教会の教会に通っていた。パブリック・スクールを卒業して1922年にオックスフォード大学ハートフォード・カレッジに進学、専攻は歴史だったが勉強よりももっぱら仲間とのつきあいを楽しんだようで、1924年に退学。その後は、美術や工芸に興味を持ち、学校に通ったものの才能のなさを自覚してあきらめ、ラファエル前派の画家、ダンテ・ガブリエル・ロセッティの評伝を書く。この評伝と、同じく1928年に出版された処女小説『大転落』が認められ、以後は作家として小説作品を発表するかたわら、アフリカや南米を回ってその旅行記も執筆している。1930年、英国国教会からカトリックに改宗。また、第二次世界大戦時には、自ら志願して軍務についた。1966年、自宅にて死去。享年62歳。
 『銀河ヒッチハイク・ガイド』の情けない主人公、アーサー・デントは、ウォーの『一握の塵』に登場するトニィ・ラーストや『大転落』(Decline and Fall)の主人公ポール・ペニーフェザーにも共通するイギリス特有のヒーロー像だとアダムスは言う。そのため、後に『銀河ヒッチハイク・ガイド』のハリウッドで映画化されることになり、アダムスがその脚本執筆に携わった際には、アメリカ人プロデューサーに「アーサーのヒーロー性」を納得してもらうのが難しかったとも述懐している(Arthur Dent 参照)。
 アーサーもトニィもポールも、自分の身に次々と降りかかる災難にただ受け身で対処するばかりで、積極的に立ち向かう意志を持たないか、たまに持ったとしても手ひどい失敗に終わる。かと言って、その失敗から何かを学んで成長するということもない。まさに、西欧の伝統的な教養小説(Bildungsroman、無垢で無知な主人公がさまざまな試練や経験を経て成長する物語)の対極にあり、そういう意味では、ウォーとアダムスの作品はよく似ている。『大転落』について書かれた、「Paul はどうどうめぐりで少しも成長を遂げない。それは(略)この小説の作中人物のほとんどが、何らかの因果関係の法則に従って動いているのではない、という事実と無関係ではなかろう。人生を一本の線上の階段と考え、一つ一つの体験の積み上げが何らかの成長をもたらし、その成就を目的として生きる、という人生観はこの小説では通用しない。Paul の物語はいつまでも円環の図を描く。だから、前に出会った同僚と別の場所・状況でまた出会っても、少しも不思議はないし、その出会いはどちらの人物にとっても何の影響、結果をももたらさない」「ある所まで進むと完全に最初からの繰返しとなり、どこで終えてもいい。終っても何か作者にかつがれたような印象で、ぽかんとしてしまう」(小池滋、pp. 8-9)という文章は、Paul に Arthur に置き換えれば、そっくりそのまま『銀河ヒッチハイク・ガイド』についても当てはめることができる。
 また、「成長しない主人公の物語」の代表格とも言える一連のP・G・ウッドハウス作品を、ウォーとアダムスが揃って愛読しているという点も興味深い。2005年に文藝春秋から刊行された『P・G・ウッドハウス選集 II ジーヴズの事件簿』には、ウォーがウッドハウスについて書いたエッセイも収録されているので、こちらも是非ご一読あれ。
 ウォーの主な著作は以下の通り。

Rossetti: His Life and Works (1928) ダンテ・ガブリエル・ロセッティの評伝
Decline and Fall (1928) 『大転落』 富山太佳夫訳 岩波文庫 1992年
Vile Bodies (1930) 『卑しい肉体』 大久保譲訳 新人物往来社 2012年
Black Mischief (1932) 『黒いいたずら』 吉田健一訳 白水Uブックス 1984年
A Handful of Dust (1934) 『一握の塵』 小泉博一訳 山口書店 1993年/奥山康治訳 彩流社 1996年
Ninety-Two Days: The Account of a Tropical Journey through British Guiana and a Part of Brazil (1934) 『ガイアナとブラジルの九十二日間』 由木礼訳 図書出版社 1992年
Mr. Loveday's Little Outing, and Other Sad Stories (1936) 『イヴリン・ウォー作品集 ラヴディ氏の遠足』 短編集
Scoop: A Novel about Journalists (1938) 『スクープ』 高儀進訳 白水社 2015年
Work Suspended (1942) 未完の中篇小説
Brideshead Revisited: The Sacred and Profane Memories of Captain Charles Ryder (1945) 『ブライヅヘッドふたたび』 吉田健一訳 ちくま文庫 1990年/『回想のブライズヘッド 上/下』 小野寺健訳 岩波文庫
Scott-King's Modern Europe (1947)
The Loved One: An Anglo-American Tragedy (1948) 『囁きの霊園』 早川書房/『愛されたもの』 中村健二訳 岩波文庫/『ご遺体』 小林章夫訳 光文社古典新訳文庫
Helena (1950) 『十字架はこうして見つかった――聖女ヘレナの生涯』 岡本浜江訳 女子パウロ会 1977年/『ヘレナ』 岡本浜江訳 文遊社
Men at Arms (1952)
Love among the Ruins: A Romance of the Near Future (1953)
Officers and Gentlemen (1955)
The Ordeal of Gilbert Pinfold: A Conversation Piece (1957) 『集英社ギャラリー<世界の文学>5 イギリス ピンフォールドの試練』 集英社/『ピンフォールドの試練』 白水社 2015年
Unconditional Surrender (1961)
Basil Seal Rides Again: Or, the Rake's Regress (1963)
Sword of Honour (1965) Men at Arms, Officers and Gentlemen, Unconditional Surrender の3作品をまとめたもの。『名誉の剣』三部作として知られる。そのうち、Men at Armsは、『イヴリン・ウォー作品集』の中で翻訳されたことがある。


Westfahl, Gary  ゲイリー・ウェストファール

 アメリカのSF研究者。カリフォルニア大学リバーサイド校で教鞭と執りつつ、さまざまなエッセイや批評を書き、またSF百科等の編集にも携わる。
 2003年にケンブリッジ大学出版局から出版された The Cambridge Companion to Science Fiction というSFの解説書に、ウェストファールは「スペース・オペラ」というタイトルのエッセイを寄稿した。このエッセイの中で、彼は『銀河ヒッチハイク・ガイド』を "The outstanding example of satirical spece opera"(傑出した風刺型スペース・オペラの一例)と評している。
 それにしても、何故『銀河ヒッチハイク・ガイド』はSFではなくSFのサブジャンルであるスペース・オペラなのか。ウェストファールは、1941年にウィルソン・タッカーが発表した「スペース・オペラ」の定義をふまえつつ説明する。
 タッカーの定義によれば、スペース・オペラとは、まず第一に、宇宙船が出てくること。海洋小説のもじりにような言葉を使って、未知の世界との出会いを描く。第二に、わくわくするような冒険物語であること。その結果として、陳腐でお定まりのプロットになりがちであること。
 この定義から推測すれば、「スペース・オペラ」というカテゴリーに入れられただけで、作品の質の悪さは保証されたも同然だ。実際、初期の作品の大半は今では読むに耐えない代物であることをウェストファールも認めている。それ故、その後の書き手たち、1950年代を代表する作家、アーサー・C・クラークやアイザック・アシモフらは自作を「スペース・オペラ」と呼ばれることを好まなかった。
 その一方、宇宙の架空戦記、さしずめ宇宙版『ゼンダ城の虜』とでも言うべきジャンルの小説が台頭するようになった。『ゼンダ城の虜』に倣って「ルリタニアン・スペース・オペラ」とも呼ばれるこの亜種では、主人公は宇宙船の船長や戦士ばかりでなく、商人だったり外交官だったり医者だったりと、職業設定の幅が広がることになる。1960年代には、「スペース・オペラ」が依然忌避され続けると同時に、ジャンルそのものを風刺するような作品も登場するようになり、風刺に不可欠なジョークやユーモアが作品に持ち込まれることになった――そして、ウェストファールいわく、そうした風刺型スペース・オペラの代表作こそ『銀河ヒッチハイク・ガイド』であり、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の成功こそスペース・オペラが真にポピュラー・カルチャーの一部となった証である(pp. 203-204)、と。
 もっとも、そもそもスペース・オペラとはSFの一部分であるということを考えれば、『銀河ヒッチハイク・ガイド』がスペース・オペラなのかSFなのかとあまり真剣に悩む必要はないのかもしれない。基本的に、すべてのスペース・オペラはSFなのだから。ウェストファールに言わせれば、『銀河ヒッチハイク・ガイド』だけでなく、『スター・トレック』や『スター・ウォーズ』もスペース・オペラであり、また近年では、以前のクラークやアシモフの頃とは違って自作に「スペース・オペラ」のレッテルを貼られることに嫌悪感を持たない作家も増え、イアン・M・バンクス作品に代表されるような、よりシニカルな作風の「ポストモダン・スペース・オペラ」も出てきているという。

 2005年に出版されたウェストファール編集の Science Fiction Quotations は、エイリアン、死、数学、旅、宇宙などのテーマにふさわしい言葉を、SF、それも小説に限らず映画、テレビといったさまざまな媒体から見つけ出して引用した本である。この中で、全部で2928にもなる引用文のうち、ダグラス・アダムス作品からの引用は計78を数えた。
 他の作家と比べるとこの数はかなり多い。この本に序文を書いた、アーサー・C・クラークよりも多い。アダムスと同じくらい、もしくはアダムスより多く引用されているのはフィリップ・K・ディック、ロバート・A・ハインライン、アーシュラ・K・ル=グウィン、テリー・プラチェットくらいである。
 たとえば、「地球」というテーマでは、『さようなら、いままで魚をありがとう』から以下の文章が選ばれた。

 いま彼の生きている地球、大きくて固くて油じみて汚くて虹のかかるこの地球は、想像を絶する無限の宇宙のなかでは顕微鏡的な一点のうえの顕微鏡的な一点だ。しかし、これからはもうそんなことは忘れて生きていけると彼は思っていた。それはまちがっていた。(pp. 90-91)

 「地球」と言われて単純に「ほとんど無害」を選ばない辺り、なかなか気合いが入っているではないか。


Wickens, Paul 'Wix' ポール・'ウィックス'・ウィッケンズ 1956.3.27-

 イギリスのミュージシャン。作曲家兼キーボード奏者で、長年に亘るポール・マッカートニーとのバンド活動により、日本でもマッカートニー・ファンの間ではよく知られているようだが、アダムスとは個人的に親交があった。コンピュータ・ゲーム『宇宙船タイタニック号』の音楽を担当している他、アダムスの死後に製作されたラジオ・ドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第3〜5シリーズの音楽も手掛けている。2001年9月17日にロンドンで行われたアダムスの追悼葬儀でも演奏した。
 アダムスとウィッケンズの付き合いは、ブレントウッド・スクール時代に遡る。ウィッケンズはアダムスより4歳年下だったが、獣医だったウィッケンズの祖父と、王立動物虐待防止協会の熱心な会員だったアダムスの祖母が知り合いだったこともあって、家族ぐるみの付き合いがあったという。もっとも、二人が親しく付き合うようになるのはウィッケンズがマッカートニーのバンドで演奏するようになってからのことで、マッカートニーのライブに行ったアダムスがライブのプログラムに出ていたウィッケンズのプロフィールを読み、実は二人は同じピアノの先生に習っていたことに気付いたのがきっかけだったらしい(Webb, p. 166)。それからはウィッケンズ夫妻(彼の妻は歌手のマーゴ・ブキャナン)とアダムス夫妻という形の家族ぐるみの付き合いが始まった。
 アダムスが大ファンだったプロコル・ホルムのゲイリー・ブルッカーをアダムスに紹介したのもウィッケンズ夫妻だった。M・J・シンプソンによると紹介したのはウィッケンズ本人だったが(Simpson, p. 278)、公式伝記のほうにはマーゴ・ブキャナンだったと書かれている(Webb, p. 177)。ともあれ、アダムスがイズリントンの自宅で開いたパーティでも、ウィッケンズ夫妻はたびたびゲストとして招かれ、ブルッカーと共に演奏していたことだけは確かなようだ。
 ウィッケンズはエセックス州ブレントウッド生まれ。1989年からポール・マッカートニーのバンドにキーボード担当で参加し、やがて多くのツアーで音楽マネージャーの立場を務めるようになった。マッカートニーの他にも、ボーイ・ジョージやエルトン・ジョン、デイヴィッド・ギルモアなど、多くのミュージシャンの演奏に参加している。


Willis, Connie コニー・ウィリス 1945.12.21-

 アメリカのSF作家。これまでに何度もヒューゴー賞やネビュラ賞を受賞している。翻訳も出ている彼女の代表作を挙げると、

Fire Watch 1985 『わが愛しき娘たちよ』(ハヤカワ文庫)
 短編集。この本に収録されている短編のうち、「見張り」「クリアリー家からの手紙」でそれぞれヒューゴー賞・ネビュラ賞を受賞
Lincoln's Dreams 1987 『リンカーンの夢』(ハヤカワ文庫)
 ジョン・W・キャンベル賞受賞
Doomsday Book 1992 『ドゥームズデイ・ブック』(早川書房)
 ヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞

 このコニー・ウィリス、1997年10月に行われた翻訳家の大森望氏とのインタビューで、(当時の)新作『犬は勘定に入れません』というタイム・トラベルSFについて以下のような発言をしている。

 今回はコメディだし。でもコメディと言っても、ピアズ・アンソニーのファンタジーとか、『銀河ヒッチハイク・ガイド』なんかとは違う。その手のユーモア小説だと、ストーリーはどうでもよくて、キャラクターの身になにが起きるかがおもしろいうわけでしょ。でもわたしの小説はあくまでストーリーが中心。つまり、時間の修復ができないと、第二次世界大戦の結果が変わっちゃうかもしれないとか。

 ご批判の内容はともあれ、少なくともウィリスも『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読んだことがある、ということだけは間違いあるまい。
 なお、このインタビューの全文は「SFオンライン」(SF-Online)というサイトに掲載されている。興味のある方はそちらでお読みください。


Wingrove, David  デイヴィッド・ウィングローヴ 1954.9-

 イギリスのSF作家・評論家。
 ロンドン生まれ。ケント大学で英文学を専攻し、卒業後は銀行で勤務するが、大学に戻りSFの評論と創作活動を始めた。代表作は<チョンクオ風雲録>シリーズ(文春文庫)。評論活動としては、『最新版SFガイドマップ』(サンリオSF文庫)の編集の他、ブライアン・W・オールディスとの共著に『一兆年の宴』がある。この『一兆年の宴』の中にダグラス・アダムスについての記述があるが、ウィングローヴとオールディスのどちらが書いたのかは不明。


Winston, Robert  ロバート・ウィンストン 1940.7.15-

 イギリスの産婦人科医・科学者。2006年3月23日、第4回ダグラス・アダムス記念講演で講演した。生前のアダムスに直接会ったことはなかったけれど、彼の作品には感銘を受けていたので、喜んで引き受けたのだという。演題は、"Is the Human an Endangered Species?"。
 1960年、ロンドン大学を卒業、医学の学位を取る。専門は生殖医療。これまで、体外受精や遺伝性の重度疾患を抱える患者の着床前診断など、分子生物学などのジャンルと密接なかかわりを持つ分野で大きな成果をあげてきた。1995年には一代貴族として男爵の称号を受け、英国上院に労働党員として議席を持つ。現在はロンドン大学で教授として勤務するかたわら、ロンドンにあるはマースミス病院における生殖医療分野の責任者でもある。
 イギリスでは、BBC製作のThe Human BodySecret Life of Twins といったドキュメンタリー番組のプレゼンターとして知名度が高い科学者の一人である。妊娠、または不妊について一般向けに書かれた著作も多いが、2000年のドキュメンタリー番組 Superhuman を基にロリ・オリヴェンシュタインと共同執筆した本は、『スーパーヒューマン 人体に潜む驚異のパワー』のタイトルで日本でも翻訳された。その他の翻訳本には、『人間の本能 心にひそむ進化の過去』『目で見る化学―111種の元素をさぐる』『目で見る進化―ダーウィンからDNAまで』『目で見る脳の働き―感じる心・考える力 』『理系アタマがぐんぐん育つ 科学の実験大図鑑』や『人類大図鑑』(編集)などがある。


Wodehouse, P. G.  P・G・ウッドハウス 1881.10.15-1975.2.14

 20世紀英国最高のユーモア作家。アダムスも大ファンで、もっとも影響を受けた作家の一人としてウッドハウスの名前を挙げる。
 サリー州ギルフォード生まれ。パブリック・スクールの一つ、ダリッジ・カレッジで学んだ後、約2年間銀行員として働くかたわら、まずはジャーナリストとして執筆活動を開始、続いて「パブリック・スクールもの」といわれる学校小説を雑誌に連載する。1902年に最初の小説、The Pothunters を出版。1909年の二度目の渡米を機にアメリカに移住、多くの作品を「サタデー・イブニング・ポスト」に連載した。1939年にはオックスフォード大学名誉文学博士号を授与。第二次大戦中、滞在していた南フランスでドイツ軍に捕らえられ、ナチス・ドイツの英米向けラジオ放送に出演したことで、売国奴との非難を浴びたこともある。1955年にはアメリカに帰化。ジョージ・オーウェルやイーヴリン・ウォーらの擁護もあって、イギリスでも後にウッドハウスの名誉は回復する。その最大の証が、1975年のナイトの称号授与であろう。70年以上の長きにわたって現役作家として活動を続け、発表した作品は約100冊。代表作は、初期のパブリック・スクールもののほか、独身貴族のバーティとその従僕ジーヴスが登場するジーヴス・シリーズ、エムズワース卿が登場するブランディングス城シリーズなど。小説以外に、ミュージカルの脚本を手がけたこともある(代表作は『エニシング・ゴーズ』)。終生イギリスを愛し、イギリスを舞台にした小説を書き続けたウッドハウスだったが、アメリカ・ニューヨーク郊外で生涯の大半を過ごし、その地で没した。享年93歳。
 アダムスいわく、「ウッドハウスはロボットも宇宙船も書かなかったけれど、コメディの構造という点では――期待させておいてそれをひっくり返して驚かせるとか――どこか共通しているところがある」(Crichton, p. 48) 。
 ウッドハウスの主な著作は以下の通り(イギリスとアメリカで出版時のタイトルが異なる場合は、イギリスでのタイトルを優先した)。
 2005年以降、日本でもウッドハウス作品が相次いで翻訳され、下記に上げたもの以外に文藝春秋から出版されている『P・G・ウッドハウス選集』全5巻(現在までに『ジーヴズの事件簿』『エムズワース卿の受難録』『マリナー氏の冒険譚』の3巻が刊行済み)がある。中でも第2巻の『エムズワース卿の受難録』の解説には、アイザック・アシモフと並んでダグラス・アダムスの名前も挙がっている(「その代表作『銀河ヒッチハイク・ガイド』は、奇想と哲学と冗談の絶妙なカクテル――ユーモア文学の系譜に独自の座を占めうるSFコメディの傑作である。彼もやはりウッドハウスの大ファンで、遺作となった未刊のブランディングズ物 Sunset at Blandings (ペンギン版)に序文を書き、ウッドハウスを純粋な言葉の音楽を奏でることのできた偉大な天才と称えている」p. 426)。

The Pothunters (1902)
A Prefect's Uncle (1902)
Tales of St Austin's (1903)(短編集)
The Gold Bat (1904)
William Tell Told Again (1904)
The Head of Kay's (1905)
Love Among the Chickens (1906, 1921)
The White Feather (1907)
Not George Washington (1907)
The Swoop (1909)
Mike (1909)
A Gentleman of Leisure (1910)
Psmith in the City (1910)
The Prince and Betty (1912)
The Little Nugget (1913)
The Man Upstairs (1914)(短編集) 「上の部屋の男」("The Man upstairs") 小野寺健訳 『20世紀イギリス短編集(上)』 小野寺健編訳 岩波文庫 1987年
Psmith, Journalist (1915)
Uneasy Money (1917)
The Man with Two Left Feet (1917)(短編集)
Piccadilly Jim (1918) 『恋人海を渡る』
A Damsel in Distress (1919)
The Coming of Bill (1920)
Jill the Reckless (1921)
Indiscretions of Archie (1921)
The Clicking of Cuthbert (1922)(短編集)
The Girl on the Boat (1922)
The Adventures of Sally (1922)
Bill the Conqueror (1924)
Ukridge (1924)(短編集)
Sam the Sudden (1925)(aka Sam in the Suburbs)
The Heart of a Goof (1926)(短編集)  『ゴルきちの心情』 古賀正義訳 創土社 1983年
The Small Bachelor (1927)
Meet Mr. Mulliner (1927)(短編集)  「ウィリアムの話」("The Story of William")「厳格主義者の肖像」("Portrait of Disciplinarian")「ある写真屋のロマンス」("The Romance of a Bulb-Squeezer")「忍冬が宿」("Honeysuckle Cottage")「ささやかな人生」("A Slice of Life") 井上一夫訳 『世界ユーモア文学全集4 ウッドハウス マリナー氏ご紹介/エイメ マルタン君物語』 井上一夫・江口清訳 筑摩書房 1961年
Money for Nothing (1928)
Mr. Mulliner Speaking (1929)(短編集)
Big Money (1931)
If I Were You (1932)
Doctor Sally (1932)
Hot Water (1932)
Mulliner Nights (1933)(短編集) 「スープの中のストリキニーネ」("Strychnine in the Soup")「名探偵マリナー」("The Smile That Wins") 井上一夫訳 『世界ユーモア文学全集4 ウッドハウス マリナー氏ご紹介/エイメ マルタン君物語』 井上一夫・江口清訳 筑摩書房 1961年
The Luck of the Bodkins (1935)
Young Men in Spats (1936)(短編集) 「フレッド叔父」("Uncle Fred Flits By") 大久保康雄訳 『世界100物語5 意外な結末』 サマセット・モーム編 河出書房新社 1997年
Laughing Gas (1936)
Summer Moonshine (1937)
Eggs, Beans and Crumpets (1940)(短編集) 『エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏』 森村たまき訳 国書刊行会 2008年
Quick Service (1940)
Money in the Bank (1946)
Spring Fever (1948)
The Old Reliable (1951)
Barmy in Wonderland (1952)
Mike at Wrykyn (first part of 1909 Mike)(1953)
Mike and Psmith (second part of 1909 Mike)(1953)
French Leave (1956)
Something Fishy (1957)
A Few Quick Ones (1959)(短編集)
Ice in the Bedroom (1961)
Frozen Assets (1964)
Company for Henry (1967)
Do Butlers Burgle Banks ? (1968)
The Girl in Blue (1970)
Pearls, Girls and Monty Bodkin (1972)(aka The Plot That Thickened)
Bachelors Anonymous (1973)

ジーヴス・シリーズ

The Inimitable Jeeves (1923)(短編集) 『比類なきジーヴス』 森村たまき訳 国書刊行会 2005年
Carry On, Jeeves (1925)(短編集) 「ジーヴス物語」("Jeeves Takes Charge", "The Artistic Career of Corky", "Jeeves and the Unbidden Guest" ) 井上一夫訳 『世界文学全集37 現代ユーモア文学集』 集英社 1966年/『それゆけ、ジーヴス』 森村たまき訳 国書刊行会 2005年
Very Good, Jeeves (1930)(短編集) 「ちょっとした芸術」("The Spot of Art") 高儀進訳 『イギリス・ユーモア文学傑作選 笑いの遊歩道』 澤村灌・高儀進編 白水社 1990年/『でかした、ジーヴス』 森村たまき訳 国書刊行会 2006年
Thank You, Jeeves (1934) 『サンキュー、ジーヴス』 森村たまき訳 国書刊行会 2006年
Right Ho, Jeeves (1934) 『よしきた、ジーヴス』 森村たまき訳 国書刊行会 2005年
The Code of the Woosters (1938) 『ウースター家の掟』 森村たまき訳 国書刊行会 2006年
Joy in the Morning (1946) 『ジーヴスと朝のよろこび』 森村たまき訳 国書刊行会 2007年
The Mating Season (1949) 『ジーヴスと恋の季節』 森村たまき訳 国書刊行会 2007年
Ring for Jeeves (not told by Bertie)(1953)
Jeeves and the Feudal Spirit (1954) 『ジーヴスと封建精神』 森村たまき訳 国書刊行会 2008年
Jeeves in the Offing (1960) 『ジーヴスの帰還』 森村たまき訳 国書刊行会 2009年
Stiff Upper Lip, Jeeves (1963) 『がんばれ、ジーヴス』 森村たまき訳 国書刊行会 2010年
Much Obliged, Jeeves (1971) 『感謝だ、ジーヴス』 森村たまき訳 国書刊行会 2011年
Aunts Aren't Gentlemen (1974) 『ジーヴスとねこさらい』 森村たまき訳 国書刊行会 2012年

ブランディングス城シリーズ

Something Fresh (1915)
Leave it to Psmith (1923) 『スミスにおまかせ』 古賀正義訳 創土社 1982年
Summer Lightning (1929) 『ブランディングズ城の夏の稲妻』 森村たまき訳 国書刊行会 2007年
Heavy Weather (1933) 『ブランディングズ城は荒れ模様』 森村たまき訳 国書刊行会 2009年
Blandings Castle and Elsewhere (1935)(短編集)  「エムズワース卿とガール・フレンド」("Lord Emsworth and the Girl Friend") 常磐新平訳 『現代の世界文学 イギリス短篇24』 丸谷才一編 集英社 1972年
Lord Emsworth and Others (1937)(短編集)
Uncle Fred in the Springtime (1939)
Full Moon (1947)
Uncle Dynamite (1948)
Nothing Serious (1950)(短編集)
Pigs Have Wings (1952)
Cocktail Time (1958)
Service with a Smile (1961)
Galahad at Blandings (1965)
Plum Pie (1966)(短編集)
A Pelican at Blandings (1969)
Sunset at Blandings (1977)


Wood, Elijah  イライジャ・ウッド 1981.1.28-

 アメリカの俳優。Netflixで公開中のテレビドラマ「私立探偵ダーク・ジェントリー」で、ダーク・ジェントリーの相棒(?)トッド役を務めた。
 『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART 2』(1989年)を皮切りに子供の頃からハリウッドの有名子役として数々の映画に出演、大人になってからも『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の主人公フロド役で成功をおさめた。
 主な出演映画は以下の通り。

Back to the Future Part II (1989) 『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART 2』
Internal Affairs (1989) 『背徳の囁き』
Avalon (1990) 『わが心のボルチモア』
Paradise (1991) 『愛に翼を』
Radio Flyer (1992) 『ラジオ・フライヤー』
Forever Young (1992) 『フォーエヴァー・ヤング/時を越えた告白』
The Adventures of Huck Finn (1993) 『ハックフィンの大冒険』
The Good Son (1993) 『危険な遊び』
North (1994) 『ノース/ちいさな旅人』
The War (1994) 『8月のメモワール』
Flipper (1996) 『フリッパー』
The Ice Storm (1997) 『アイス・ストーム』
Deep Impact (1998) 『ディープ・インパクト』
The Faculty (1998) 『パラサイト』
The Bumblebee Flies Anyway (1999) 『記憶の旅人』
Black and White (1999) 『ブラック AND ホワイト』
Lord of the Ring: The Fellowship of the Ring (2001) 『ロード・オブ・ザ・リング』
Ash Wednesday (2002) 『ロード・トゥ・ヘル』
Try Seventeen (2002) 『17歳 〜体験白書〜』
Lord of the Ring: he Two Towers (2002) 『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』
Spy Kids 3-D: Game Over (2003) 『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』
Lord of the Ring: The Return of the King (2003) 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』
Eternal Sunshine of the Spotless Mind (2004) 『エターナル・サンシャイン』
Hooligans (2005) 『フーリガン』
Sin City (2005) 『シン・シティ』
Everything Is Illuminated (2005) 『僕の大事なコレクション』
Paris, je t'aime (2006) 『パリ、ジュテーム』
Bobby (2006) 『ボビー』
Day Zero (2007) 『デイ・ゼロ』
The Oxford Murders (2008) 『オックスフォード連続殺人』
The Romantics (2010) 『選ばれる女にナル3つの方法』
Celeste & Jesse Forever (2012) 『セレステ∞ジェシー』
Revenge for Jolly! (2012) 『リベンジ・フォー・ジョリー 愛犬のために撃て!』
Maniac (2012) 『マニアック』
The Hobbit: An Unexpected Journey (2012) 『ホビット 思いがけない冒険』
Pawn Shop Chronicles (2013) 『スティーラーズ』
Grand Piano (2013) 『グランドピアノ 狙われた黒鍵』
Cooties (2014) 『ゾンビスクール!』
Open Windows (2014) 『ブラック・ハッカー』
The Last Witch Hunter (2015) 『ラスト・ウィッチ・ハンター』
The Trust (2016) 『ダーティー・コップ』
78/52 (2017) 『78/52』
I Don't Feel at Home in This World (2016) 『この世に私の居場所なんてない』

 

 

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