ラジオ・ドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』第3シリーズ


※ 2005年5月3日(火)午後6時半より放送開始の第4・5シリーズについてはこちらへ

※ 2018年3月8日(木)午後6時半より放送開始の第6シリーズについてはこちらへ


 2004年9月21日(火)午後6時半より、BBCラジオ4でラジオ・ドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』の第3シリーズ(全6話)の放送が始まった。
 この新シリーズは、3冊目の小説『宇宙クリケット大戦争』をドラマ化したもので、サイモン・ジョーンズジェフリー・マッギヴァーンスティーヴン・ムーア他、かつての主要キャストたちが顔を揃える他、何とアダムス自身も過去に彼が録音していたアグラジャグのセリフをデジタル技術で復活させて取り込まれている。既にこのシリーズのCDも発売されており、2005年7月1日には第4・5シリーズも合わせた脚本も発売された(この脚本に付けられた、サイモン・ジョーンズダーク・マッグズの序文はこちら)。


 実は、ラジオ・ドラマ第3シリーズの企画が持ち上がったのは、今から10年以上前のことだった。
 1993年、第1・第2シリーズの放送から10年以上経っても、依然としてカセットテープやCDの売り上げが好調であることを受けて、BBCの the Head of Spoken Word Publishing だった Sue Anstruther が、軽演劇部長のジョナサン・ジェイムズ=ムーアに提案し、小説『宇宙クリケット大戦争』を全8話のラジオ・ドラマにすることでアダムスも了承した。
 アダムスは新シリーズのプロデューサーとして、ダーク・マッグズを推薦する。ダーク・マッグスは、1978年にBBCに入社し、『スーパーマン』や『バットマン』のラジオ・ドラマ化の仕事をしていて、アダムスはこれらが気に入っていたらしい。アダムス、マッグス、そしてジェイムズ=ムーアの3人による打ち合わせも行われ、アダムスが自分で脚色する代わりに、誰か新たに脚本家に依頼することになった。
 すべては順調に進行するかと思われた。マッグスは、古参のキャストたちに声をかける一方、クリケットの試合シーンのコメンテイターとしてブライアン・ジョンストンとフレッド・トルーマンに依頼した。BBCでは、新シリーズのカセットテープやCDの発売日程まで計画し始めた。
 が、脚色を依頼されたアリック・ロウが書き上げた第1話は、原作小説とはかなり異なるものだった。アリック・ロウの作品としては、悪いものではなかったのかもしれない。が、これはロウの作品ではなくあくまでアダムスの作品であるべきだった。当然のことながら、ダーク・マッグスから送られた第1話を読んだアダムスは激昂した。マッグスいわく、「アリックは、恐竜の会話を挿入していた。アリックだっていい作家だけれど、アダムスが恐竜の会話を書かなかったのには、書かないだけの充分な理由があったからだ。アダムスもその点をかなり強い口調で主張していたし、私としても迷わずアダムスに同意する」(Hitchhiker, p. 284)
 その一方で、ロウはロウで自分の脚本に自信を持っており、アダムスに命じられるままに書き直しに応じる様子はない。しばらく後に、マッグスが音沙汰のないアダムスを訪ねたところ、彼は第1話の脚本を自ら書き直している最中だという。そしてアダムスはマッグスに書き上げた最初の10分間分の脚本を見せた。
 自分で全部やりたいところだが、とてもその時間はとれない、と言うアダムスに、マッグスは自分が代わりに代筆して、クレジットはアダムス自身の名前にしてもらっても構わないと提案したが、アダムスからは歯切れの悪い返事しか戻ってこない。そして結局、企画そのものが潰えることになってしまった。アダムス自身、かつてのキャスト仲間との再会を楽しみにしていたし、またアグラジャグ役で自分も出演するつもりでもいたのだが。
 1997年頃、また企画が再浮上したこともあったらしい。デジタル・ヴィレッジを訪れたマッグスが話を切り出すと、当時『銀河ヒッチハイク・ガイド』の映画化企画が難航していたこともあって、アダムスは再度考え直す気になったようだ。そして、アダムスは秘かに書いていた第3シリーズの脚本の草稿をマッグスにメールで送信する。今度の今度こそ実現かと思われたが、その矢先、ディズニーと正式に映画化の契約が成立したとの連絡がマッグスの許に届いた……。

 最初の企画から10年もの歳月を経て復活したラジオ・ドラマ第3シリーズ、監督と脚色はダーク・マッグス自身が担当している。ただし、彼は今ではBBCを辞め、フリーのディレクター兼プロデューサーになっている。またこの第3シリーズそのものも製作はBBCではなく、ラジオ番組製作会社 Above the Title Productiion によるもの。
 BBC退社後、マッグスはこの会社と多くの仕事をしていたが、 Above the Title Productiion の代表取締役ブルース・ハイマンがアダムスと親しい友人だったことが分かり(2001年9月21日、ロンドンのセント・マーティン・イン・ザ・フィールズ教会で行われた追悼式で、ハイマンが案内係を務めていたのだ)、彼を通じてアダムスの遺族やエージェントから製作許可及び協力を取り付けることができたのだという。


第1回放送日

第3シリーズ

1 2004.9.21
2 2004.9.28
3 2004.10.5
4 2004.10.12
5 2004.10.19
6 2004.10.26


キャスト一覧 

AGRAJAG Douglas Adams
CRICKET COMMENTATOR Henry Blofeld
POLICE WALKIE TALKIE Fiona Carew
JUDICIARY PAG Rupert Degas
KRIKKIT CIVILIAN 1 Mike Fenton Stevens
VOICE OF THE BOOK William Franklyn
EXHIBIT ROOM VOICE Bob Golding
EDDIE THE COMPUTER Roger Gregg
SLARTIBARTFAST Richard Griffiths
THOR Dominic Hawksley
DEODAT Bruce Hyman
ARTHUR DENT Simon Jones
PRAK Chris Langham
WOWBAGGER Toby Longworth
SYDNEY OPERA HOUSE LADY Joanna Lumley 
FORD PREFECT Geoffrey McGivern
BOY (CRICKET) Theo Maggs
KRIKKIT CIVILIAN 3 Tom Maggs
ANNOUNCER John Marsh
MARVIN THE PARANOID ANDROID Stephen Moore
HACTAR Leslie Phillips
KRIKKIT CIVILIAN 2 Phil Pope
TRILLIAN Susan Sheridan
ZEM THE MATTRESS Andy Taylor
CRICKET COMMENTATOR Fred Trueman 
PARTY DOORMAN Paul 'Wix' Wickens
ZAPHOD BEEBLEBROX Mark Wing-Davey

スタッフ一覧

Producer Bruce Hyman
Helen Chattwell
Director, Co-Produer Dirk Maggs
Krikkit Song Philip Pope
Music Paul 'Wix' Wickens
Studio FX Ken Humphrey
Record & Mix Paul Deeley
Script Editor John Langdon


キャスト・プロフィール

Franklyn, William  ウィリアム・フランクリン 1926.9.22-2006.10.31

 イギリスの俳優。今は亡きピーター・ジョーンズの跡を継いで、ラジオドラマ第3シリーズでは『銀河ヒッチハイク・ガイド』のナレーションを担当している。ピーター・ジョーンズとは、私生活でも親しい友人同士だった。
 ロンドン生まれ。若い頃からテレビや舞台での活動を始める。多くのテレビ・映画作品に出演するが、その他に声の良さを買われて、コマーシャル映像のナレーション等も多く務めているらしい。
 主な出演映画は以下の通り。

Above Us the Waves (1955)  『潜水艦隊帰投せず』
Quatermass 2 (1957) 『宇宙からの侵略生物』
Pit of Darkness (1961)  『暗黒の落し穴』
Fury at Smugglers' Bay (1961) 『大山賊』
The Satanic Rites of Dracula (1974)  『新ドラキュラ/悪魔の儀式』
Nutcracker (1982) 『魔性のメロディ/令嬢バレリーナ』
Splitting Heirs (1993)  『相続王者決定戦』
Diana: Her True Story (1993)  『ダイアナ妃の真実』

Griffiths, Richard  リチャード・グリフィス 1947.7.31- 2013.3.28

 イギリスの性格俳優。今は亡きリチャード・ヴァーノンに代わって、ラジオドラマ第3シリーズではスラーティバートファーストを演じている。
 ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの舞台で活躍し、『ヘンリー8世』の道化や『ウィンザーの陽気な女房たち』のファルスタッフなど、個性的な役柄で高い評価を得た。また、多くのテレビ・映画にも出演している。最近では映画『ハリー・ポッター』シリーズのヴァーノンおじさん役で有名。
 また、映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』ではヴォゴン・イェルツの声を担当した。
 その他の主な出演映画は以下の通り。

Superman II (1980)  『スーパーマン2/冒険篇』
Breaking Glass (1980)  『ブレイキング・グラス』
Chariots of Fire (1981)  『炎のランナー』
The French Lieutenant's Woman (1981)  『フランス軍中尉の女』
Ragtime (1981)  『ラグタイム』
Britannia Hospital (1982) 『ブリタニア・ホスピタル』
Gandhi (1982)  『ガンジー』
Gorky Park (1983)  『ゴーリキー・パーク』
Greystoke: The Legend of Tarzan, Lord of the Apes (1984)  『グレイストーク ―類人猿の王者― ターザンの伝説』
A Private Function (1984)  『最強最後の晩餐』
Shanghai Surprise (1986) 『上海サプライズ』
Whoops Apocalypse (1986)  『大惨事世界大戦』
Withnail and I (1987) 『ウイズネイルと僕』
King Ralph (1991)  『ラルフ1世はアメリカン』
The Naked Gun 2 1/2: The Smell of Fear (1991)  『裸の銃を持つ男2 1/2』
Blame It on the Bellboy (1992)  『ベルボーイ狂騒曲/ベニスで死にそ〜』
Guarding Tess (1994) 『不機嫌な赤いバラ』
Funny Bones (1995) 『ファニー・ボーン/骨まで笑って』
Sleepy Hollow (1999)  『スリーピー・ホロウ』
Vatel (2000)  『宮廷料理人ヴァテール』
Harry Potter and the Sorcerer's Stone (2001)  『ハリー・ポッターと賢者の石』
Harry Potter and the Chamber of Secrets (2002)  『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
Harry Potter and the Prisoner of Azkaban (2004)  『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
Harry Potter and the Goblet of Fire (2005)  『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
The History Boys (2006)  『ヒストリーボーイズ』
Venus (2006)  『ヴィーナス』
Harry Potter and the Order of Pheonix(2007)  『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
Bedtime Stories (2008)  『ベッドタイム・ストーリー』
Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 1 (2009) 『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
Pirates of the Caribbean: On Stranger Tides (2011)  『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』
Hugo (2011)  『ヒューゴの不思議な発明』
Private Peaceful (2012)  『兵士ピースフル』

Langham, Chris  クリス・ランガム 1949.4.14-

 イギリスの有名な声優。『モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン』や『ノット・ザ・ナイン・オクロック・ニュース』を始め、多くのテレビ・映画に出演している。


Lumley, Joanna  ジョアンナ・ラムレイ 1946.5.1-

 イギリスの俳優。
 インド・スリナガル生まれ。モデルの仕事をこなした後、『女王陛下の007』でボンド・ガールを務める。その後も多くのテレビ・映画で活躍するが、中でも1992年からBBCで放映されたコメディ・シリーズ『アブソリュートリー・ファビュラス』で人気を博した。菜食主義者で、動物愛護活動にも熱心らしい。
 主な出演映画は以下の通り。

On Her Majesty's Secret Service (1969)  『女王陛下の007』
The House That Dripped Blood (1970)  『ブラッド・ゾーン』
The Satanic Rites of Dracula (1974)  『新ドラキュラ/悪魔の儀式』
Trail of the Pink Panther (1982)  『トレイル・オブ・ザ・ピンクパンサー』
Curse of the Pink Panther (1983) 『ピンク・パンサー5/クルーゾーは二度死ぬ』
Shirley Valentine (1989)  『旅する女/シャーリー・バレンタイン』
Innocent Lies (1995)  『イノセンス・ライズ』
James and the Giant Peach (1996)  『ジャイアント・ピーチ』
Prince Valiant (1997)  『エクスカリバー』
Sweeny Todd (1997) 『スウィーニー・トッド』
Whispers: An Elephant's Tale (2000) 『子象物語』
The Cat's Meow (2001)  『ブロンドと柩の謎』

Trueman, Fred  フレッド・トルーマン 1931.2.6-

 本職のクリケット解説者。現役時代は輝かしい実績を誇る有名なクリケット選手であり、また引退後はラジオでの解説や新聞へのコラムの寄稿などで人気を博している。Talking Cricket というクリケットに関する著作もある。

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