関連人物一覧 -S-

Sachs, Andrew アンドリュー・サックス
Schell, Catherine カトリーヌ・シェル
Serafinowicz, Peter ピーター・セラフィノウィッツ
Sharp, Anthony アンソニー・シャープ
Shearman, Rob ロブ・シアマン
Sheckley, Robert ロバート・シェクリイ
Sheridan, Susan スーザン・シェリダン
Singh, Simon サイモン・シン
Smart, Christopher クリストファー・スマート
Smith, Kevin ケヴィン・スミス
Smith, Martin マーティン・スミス
Smith, Michael Marshall マイケル・マーシャル・スミス
Sutherland, Joan ジョーン・サザーランド
Stewart, Ian イアン・スチュアート
Swan, Robert ロバート・スワン


Sachs, Andrew アンドリュー・サックス 1930.4.7-2016.11.23

 イギリスの俳優。アダムスが書いた『ドクター・フー』の幻のエピソード、'Shada' が2002年にオーディオ・ドラマ化されることになった時に、声優として悪役エイリアン、スカグラ役を務めた。BBCのサイトに掲載されたインタビューによると、サックスは、'Shada' に出演した時点ではダグラス・アダムス作品は『銀河ヒッチハイク・ガイド』と『最後の光景』しか読んだことがなかったらしいが、2007年10月から放送されたラジオ・ドラマ版 Dirk Gently's Holistic Detective Agency で、今度はクロノティス教授役を演じている。
 ドイツ・ベルリン生まれ。数多くのテレビ・ドラマ、映画に出演しているが、中でもジョン・クリーズが手掛けた傑作シットコム、『フォルティ・タワーズ』の従業員マニュエル役でよく知られている。2016年、享年86年で亡くなったとの訃報が流れると、BBCは番組スケジュールを変更して『フォルティ・タワーズ』を再放送した。


Schell, Catherine  カトリーヌ・シェル 1944.7.17-

 イギリスの俳優。1979年にアダムスが脚本を書いた『ドクター・フー』'City of Death' に伯爵夫人役で出演した。2005年にDVDが発売された時には、特典映像として付けられた 'Paris in the Springtime' に登場している。
 ハンガリーのブダペスト生まれ。ドイツ系貴族の家柄に生まれるも、第二次大戦で困窮生活を余儀なくされ、1950年には家族と共にアメリカに渡る。その後ミュンヘンに移り、ドイツ映画でスクリーン・デビューした。自身の結婚を機にロンドンで暮らすようになり、現在までにイギリスのテレビ・ドラマや映画に数多く出演している。
 主な出演映画は以下の通り。

Assignment K (1968) 『情報局K』
On Her Majesty's Secret Service (1969) 『女王陛下の007』
Madame Sin (1972) 『原潜ポラリスSOS』
The Black Windmill (1974) 『ドラブル』
The Return of the Pink Panther (1975) 『ピンク・パンサー2』
The Pink Panther Strikes Again (1976) 『ピンク・パンサー3』
The Prisoner of Zenda (1979) 『ゼンダ城の虜』


Serafinowicz, Peter  ピーター・セラフィノウィッツ 1972.7.10-

 イギリスの俳優・コメディアン。2009年10月12日〜23日の土日を除く計10日間、午後10時45分からBBCラジオ4で放送された、オーエン・コルファーによる小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズ6作目 And Another Thing... の朗読で、スティーヴン・マンガンが本文を朗読したのに対して、注釈部分("Guide Note")を担当した。ただし、2009年10月12日に Penguin Audiobooks から発売された朗読CDでは本文・注釈部分ともにサイモン・ジョーンズが一人で務めているので、マンガンとセラフィノウィッツの朗読はラジオ放送か、あるいはBBCラジオ4の公式サイトから聴くしかない――ただし、公式サイトで聴けたのは、各エピソードの放送日から1週間以内だけだったが。
 セラフィノウィッツはリヴァプール生まれ。『SPACED 〜俺たちルームシェアリング〜』を始め、これまでに多くのテレビ・ドラマやコメディ番組に出演していて、2007年には自身の名前を冠した「ピーター・セラフィノウィッツ・ショウ」という番組も手掛けた。出演した映画作品には、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)、『くたばれ!イングランド』(2006年)、『ガーディアン・オブ・ザ・ギャラクシー』(2014年)、『SPY/スパイ』(2015年)、『ジーサンズ はじめての強盗』(2017年)などがある。また、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』では、ダース・モールの声を担当した。


Sharp, Anthony  アンソニー・シャープ 1915.6.16-1984.7.23

 イギリスの俳優。ラジオ・ドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』第5話で、宇宙の果てのレストランのウェイター(Garkbit)役と大予言者ザークォン役を務めた。
 ロンドン生まれ。数多くのテレビ・ドラマに出演し、映画では『時計じかけのオレンジ』(1971年)『王子と乞食』(1977年)『ネバーセイ・ネバーアゲイン』(1983年)等がある。


Shearman, Rob  ロブ・シアマン 1970.2.10-

 イギリスの脚本家。2005年から始まった『ドクター・フー』新シリーズのうち、「ダーレク 孤独な魂」(2005年)の脚本を担当した。
 2005年11月、アダムスが脚本を手掛けた『ドクター・フー』の 'City of Death' のDVDが発売されたが、シアマンはその特典映像 'Paris in the Springtime' に出演し、アダムスの脚本についてコメントしている。
 シアマンいわく、『ドクター・フー』のストーリー展開は、普通、とっちらかったおもちゃを第4話のラストできちんと箱に片付ける、つまり最後に地球を正常な状態に戻しておしまい、というものだが、アダムスの場合は違う。我々が普段当たり前だと考えている物事に、アダムスは思いもかけない新しい意味を持たせようとする。ドクターは、「モナリザ」は既知宇宙の中でもっとも美しい絵だと主張するが、ロマーナに指摘されて初めて「モナリザ」に眉毛がないことに気付く。だが、絵が美しいかどうかは、描かれた人物に眉毛があるかどうかで決まるものではない。また、たとえダ・ヴィンチ本人の手による「モナリザ」の絵の複製が他に9枚も存在していたとしても、絵の下に「これは偽物です」という但し書きがあったとしても、それでも一枚の絵の美が減じる訳ではない――。
 ちなみに、シアマンが 'City of Death' の中で一番好きなのは、ダッガンがワインのボトルを開けるところで、観るたびに笑ってしまうのだとか。


Sheckley, Robert ロバート・シェクリイ 1928.7.16-2005.12.9

 アメリカのSF作家。
 アダムスは、シェクリイの長編小説『奇蹟の次元』(1968年)が『銀河ヒッチハイク・ガイド』に似ているとの指摘を受けたことがある。アダムスに言わせれば彼がこの小説を読んだのは『銀河ヒッチハイク・ガイド』を発表した後のことで、いくつかのアイディアが似ているのは「単なる偶然」(Gaiman, p. 150)とのことだが、アダムスの友人アンドリュー・マーシャルによればアダムスは無名のライターだった頃に『奇蹟の次元』を読んでいるはずだという。マーシャル自身が『奇蹟の次元』のファンで、この本についてアダムスと一緒に語り合ったのだとか(Webb, p. 104)。
 シェクリイはニューヨーク・ブルックリンに生まれ、ニュージャージーで育つ。1946年から1948年まで軍隊に入り朝鮮戦争に従軍、帰国後はニューヨーク大学で学んだ。1951年の卒業すると、さまざまなSF雑誌に投稿した短編小説が採用されるようになり、たちまちフルタイムの作家となった。以後、多くの小説を発表しているが、どちらかというと長編より短編のほうが評価が高い。SF以外にも、Stephen DainシリーズというスパイスリラーやHob Draconianシリーズというミステリーも手掛けている。
 主な著作は以下の通り(*は短編集、**はロジャー・ゼラズニイとの共作)。

Untouched by Human Hands (1954)* 『人間の手がまだ触れない』 早川書房
Citizen in Space (1955)* 『宇宙市民』 早川書房
Pilgrimage to Earth (1957)* 『地球巡礼』 早川書房
Immortality Inc (1958) 『不死販売株式会社/フリージャック』 早川書房
Store of Infinity (1960)*
Notions: Unlimited (1960)* 『無限がいっぱい』 早川書房
The Status Civilization (1960) 『ロボット文明』 東京創元社
The Same to You Doubled (1961) 『残酷な方程式』 東京創元社
Calibre .50 (1961) Stephen Dainシリーズ(スパイ・スリラー)
Dead Run (1961) Stephen Dainシリーズ
Live Gold (1962) Stephen Dainシリーズ
Journey Beyond Tomorrow (1962) 『明日を越える旅』 早川書房
The Man in the Water (1962)
Shards of Space (1962)* 『宇宙のかけら』 早川書房
White Death (1963) Stephen Dainシリーズ
Journey of Joenes (1964)
The Game of X (1965)
The 10th Victim (1965) 『標的ナンバー10』 早川書房
Mindswap (1966) 『精神交換』 早川書房
Time Limit (1967) Stephen Dainシリーズ
Dimension of Miracles (1968) 『奇蹟の次元』 早川書房
The People Trap: And Other Pitfalls (1968)* 『人類の罠』 早川書房
Options (1975)
The Alchemical Marriage of Alistair Crompton (1978)
Crompton Divided (1978)
The Robot Who Looked Like Me (1978)*
Dramocles: An Intergalactic Soap Opera (1983)
Victim Prime (1987)
Hunter/Victim (1988)
Minotaur Maze (1990)
Watchbird (1990)
Bring Me the Head of Prince Charming (1991)**
If at Faust You Don't Succeed (1993)**
The Alternative Detective (1993) Hob Draconianシリーズ(ミステリー)
A Farce to Be Reckoned With (1995)**
Draconian New York (1996) Hob Draconianシリーズ
Soma Blues (1997) Hob Draconianシリーズ
Godshome (1998)

 この他に、シェクリイには出版されていない幻の一冊がある。すなわち、小説『宇宙船タイタニック』。アダムス本人が書く代わりに、最初にノベライズを依頼されたのはシェクリイだった。彼は締切までに原稿を仕上げたのだが、出版社が気に入らなかったためボツになってしまった。一体何が悪かったのか、はっきりとした理由は不明である。シェクリイの後任はテリー・ジョーンズが引き受け、無事出版にこぎ着けた。


Sheridan, Susan  スーザン・シェリダン 1947.2.24-2015.8.8.

 イギリスの女優。ラジオ・ドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』でトリリアンを演じた。また、2008年10月2日から放送の始まったラジオ・ドラマ『ラジオ・ドラマ『ダーク・ジェントリー』第2シリーズでは、Tsuliwaensis 役を務めている。
 ロンドンのギルドホール音楽・演劇学校を卒業後、舞台やテレビを中心に活躍する。声優の仕事も多くこなしており、映画『グリーン・デスティニー』の英語版ではジェイド・フォックス役を務めた。


Singh, Simon  サイモン・シン

 イギリスの科学ジャーナリスト。ロジャー・ハイフィールドと共に、2014年3月11日に開催される第12回ダグラス・アダムス記念講演の講演者に選ばれた。講演のテーマは「シンプソンズの数学(The Mathematics of The Simpsons)」。
 サマセット州ウェリントン生まれ。インペリアル・カレッジ・ロンドンで物理を専攻し、ケンブリッジ大学エマニュエル・カレッジで素粒子物理学の博士号を取得する。スイス・ジュネーブにある欧州原子核研究所(CERN)での実験に参加したり、インドで全寮制の学校で科学を教えたりした後、1990年にイギリスに戻り、BBCに就職。1996年に製作したドキュメンタリー番組「フェルマーの最終定理」でBAFTAをはじめ数々の賞を受賞、この番組をもとに執筆した『フェルマーの最終定理』もベストセラーとなった。2003年、大英帝国勲章(MBE)を受章。
 サイモン・シンの主な著作は以下の通り。

Fermat's Last Theorem (1997)  『フェルマーの最終定理』
The Code Book (1999)  『暗号解読』
Big Bang (2004) 『ビッグバン宇宙論 上/下』(文庫本のタイトルは『宇宙創成 上/下』)
Trick or Treatment?: Alternative Medicine on Trial (2008) 『代替医療のトリック』 エツァート・エルンストとの共著
The Simpsons and Their Mathematical Secrets (2013) 『数学者たちの楽園―「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち―』


Smart, Christopher クリストファー・スマート 1722.4.11-1771.5.21

 イギリスの詩人。ケンブリッジ大学在学中のアダムスの、主要研究テーマだった。
 学生時代のアダムスは、フットライツの活動にかまけて決して勉学熱心ではなかったようだが、それでもクリストファー・スマートの研究については彼にもそれなりの自負があるらしい。「在学中のスマートは、ケンブリッジ史上最悪の酔っぱらいにしてスケベ野郎だった。女装ショーもやっていたし、実際に彼が飲んだくれていたパブには僕も行ったことがある。ケンブリッジからグラブ・ストリートに出て、そこで彼は史上最低のろくでなし記者になったんだが、ある日突然極端な宗教的回心を体験して、道の真ん中でひざまずいて大声で神に祈りを捧げたんだ。そのせいで彼は精神病院送りになり、そこで彼は『子羊欣唱』(Jubilate Agno)という、『失楽園』に匹敵する長さの詩を書くんだが、これはヘブライの韻文手法(注・交唱聖歌 antiphon という手法)を用いて英語で書かれた最初の詩だった」(Gaiman, p. 10)。
 後に無神論者を標榜するアダムスが、狂気に近い信仰心から生まれた宗教詩を研究するとは何だか奇妙な気もするが、もともとアダムスがケンブリッジ大学を進学するにあたって奨学金を得たエッセイも、このクリストファー・スマートとジェラルド・マンリー・ホプキンス(1844-89。カトリックの聖職者だったが、死後初めて詩集が出版され、高く評価される)、それにビートルズのジョン・レノンの3人を関連づけて宗教詩の復活に関するものだった。10代の頃からアダムスが「神」や「宗教」といったものに、人一倍関心があったことが伺える。その関心の深さが転じて、逆に「過激な無神論者」に走った後のアダムスの目に、スマートの生涯と自身の論文はどう映ったのだろうか。
 スマートの生涯についてもう少し説明を付け加えると、ケントに生まれ、ケンブリッジ大学のペンブルック・ホールに学ぶ。在学中からラテン語の知識と詩作の才能に優れ、ポープの『批評論』のラテン語訳を手がけたこともあった。だが、(アダムスも言う通り)浪費と奇行のため大学を去り、ロンドンに出てジョンソン博士らの知己も得るが、雨降りの往来で、それも全裸で祈り始め、さらに周りの人にも一緒に祈るよう呼びかけるといった行為を繰り返したため、精神病院に収監された。スマートの病状は現在では躁鬱病ではなかったかと言われているが、代表作『ダビデに寄せる詩』(A Song for David, 1973年)も当時は狂気の産物とみなされることが多かった。1920年代になって、ようやく詩人スマートの独自性が再評価されるようになり、1939年には未完の『子羊欣唱』(Jubilate Agno、1758年から1763年にかけて断続的に書かれた)が、W. F. Stead によって編集され、Rejoice in the Lamb: A Song from Bedlam と題して出版される。また、1967年にはA. Sherboの手によるスマートの自伝も出版された。


Smith, Kevin  ケヴィン・スミス 1970.8.2-

 映画監督。
 これまでの主な監督作品は、

Clarks (1994)  『クラークス』
Mallrats (1995)  『モール・ラッツ』
Chasing Amy (1997)  『チェイシング・エイミー』
Dogma (1999)  『ドグマ』
Jay and Silent Bob Strike Back (2001)  『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』
Jersey Girl (2004) 『世界で一番パパが好き!』
Clerks II (2006) 『クラークス2/バーガーショップ戦記』
Zack and Miri Make a Porno (2008) 『恋するポルノ・グラフィティ』
Cop Out (2010) 『コップ・アウト 刑事(デカ)した奴ら』
Red State (2011)  『レッド・ステイト』
Tusk (2014) 『Mr.タスク』
Yoga Horses (2016) 『コンビニ・ウォーズ〜バイトJK VS ミニナチ軍団〜』
Holidays (2016) 『ホリデイズ』

 キリスト教を茶化したコメディ『ドグマ』のエンドクレジットの中で、この映画を製作する上で影響を受けた人の名前を挙げていて、その中にダグラス・アダムスの名前もある。順不同で書かれたという、エンドクレジットと同じ形式で書き出してみると、以下の通り。

 

Saint Matthew John Milton Robert Bolt
Saint Mark Cervantes Quentin Tarantino
Saint Luke Martin Scorsese Nikos Kazantzakis
Saint John Alan Moore Denys Arcand
Sam Kinison Thomas Moore Neil Gaiman
George Carlin Spike Lee Grant Morrison
Elaine Pagels Douglas Adams Matt Wagner

(註)分かった範囲内で、映画『ドグマ』の内容とつながりのありそうな事柄を中心に記載する。
Saint Matthew 使徒マタイ
 キリスト十二使徒の一人。
Saint Mark 聖マルコ
 聖書のマルコによる福音書の著者。
Saint Luke 聖ルカ
 聖書のルカ福音書および使徒行伝の著者。
Saint John 使徒ヨハネ
 キリスト十二使徒の一人。
Sam Kinison サム・キニソン(1953.12.8)
 アメリカのスタンダップ・コメディアン。
George Carlin ジョージ・カーリン(1937.5.12ー)
 アメリカのコメディアン。『サタデー・ナイト・ライブ』のホストを務める。俳優としても多くの映画に出演し、ケヴィン・スミス作品の常連の一人でもあり、『ドグマ』にも出演している。
Elaine Pagels エレーヌ・ペイゲルス
 グノーシス研究家。主な著作は『ナグ・ハマディ写本−初期キリスト教の正統と異端』、『悪魔の紀元』など。
John Milton ジョン・ミルトン(1608-74)
 エデンの園における人間の不服従をテーマにした長編叙事詩、『失楽園』の著者。
Cervantes セルバンテス (1547-1616)
 『ドン・キホーテ』の著者
Martin Scorsese マーティン・スコセッシ(1942-)
 映画監督。代表作は『タクシー・ドライバー』など多数あるが、『最後の誘惑』ではイエス・キリストを主人公に磔にされた人間イエスの葛藤を描き、物議を醸した。
Alan Moore アラン・ムーア(1953.11.18-)
 アメリカン・コミックスの脚本家。代表作は『フロム・ヘル』『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』『ウォッチメン』など。
Thomas Moore トマス・モア(1478-1535)
 『ユートピア』の著者。この作品で共産社会の理想国を描く一方、自身は経験なカトリック教徒として禁欲的な生活を送り、英国国教会創始をめぐってヘンリー8世と対立し、大逆罪で処刑された。
Spike Lee スパイク・リー(1958-)
 映画監督。代表先は『マルコムX』など。
Robert Bolt ロバート・ボルト(1924-95)
 イギリスの戯曲家。代表作はトマス・モアを題材とした『すべての季節の男』。映画『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』の脚本家としても知られる。
Quentin Tarantino クエンティン・タランティーノ(1963-)
 映画監督。代表作は『パルプ・フィクション』など。
Nikos Kazantzakis ニコス・カザンザキス(1883.2.18-1957.10.26)
 ギリシャの小説家・詩人・劇作家。代表作で、映画『最後の誘惑』の原作でもある『最後のこころみ』は、十字架上のキリストになお忍び寄るサタンの試みを主題にしたもので、カトリック教会の禁書となった。
Denys Arcand ドゥニ・アルカン(1941.6.25-)
 映画監督。代表作は『アメリカ帝国の滅亡』『モントリオールのジーザス』『みなさん、さようなら』など。
Grant Morrison グラント・モリソン
 アメリカン・コミックスの脚本家。代表作は Batman: Arkham AsylumThe Invisibles など。
Matt Wagner マット・ワーグナー
 アメリカン・コミックスの作家。『バットマン』や『サンドマン』シリーズにも携わっている。


Smith, Martin  マーティン・スミス

 アダムスの大学時代の友人。フットライツに受け入れられなかったアダムスは、マーティン・スミスとウィル・アダムスの計3人でゲリラ・レヴュー・グループ「アダムス・スミス・アダス」(Adams-Smith-Adams)を結成した。
 このグループのショウは、3人が脚本を書き、3人がそれを演じるもので、なかなかの好評を博し、逆にフットライツのほうから脚本を使わせてほしいと依頼を受けるに至った。が、しかし、当然自分たち3人が出演するものと思っていたのに、実際にフットライツの舞台に立てたのはマーティン・スミスのみ。この時役につけなかったことについて、アダムスは「今でも腹が立つ」と、大学を卒業して四半世紀が過ぎた1999年のインタビューでも話しているくらいだから、相当根に持っている。とは言え、二人のアダムスに代わって役を手に入れたのは、後にラジオ・ドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』でフォード役を務めるジェフリー・マッギヴァーンと、現在イギリスでもっとも成功しているコメディアンの一人であるグリフ・ライ・ジョーンズだったというから、役の取り合いをするには相手が悪すぎたかもしれない。
 ちなみに『銀河ヒッチハイク・ガイド』に登場する「クロイドンのマーティン・スミス」("bloody Martin Smith from Croydon" p.84)とは彼のことである。


Smith, Michael Marshall  マイケル・マーシャル・スミス 1965.3.3-

 イギリスの作家・脚本家。『ダーク・ジェントリー』のテレビ・ドラマ化の話が持ち上がった時に、脚本を依頼されたことがある。
 『ダーク・ジェントリー』シリーズの映像化については、1990年頃から映画やテレビ・ドラマの製作が検討され、アメリカの製作会社に売られていた。ただし、いずれのヴァージョンも実現していない。1997年になって、テレビ・ドラマ化権がイギリスの製作会社 Wall to Wall Television に移り、この時に脚本家としてマイケル・マーシャル・スミスの名前が挙がった。
 実際、1997年11月3日には、アダムスはスミスと直接会ってアウトラインを話し合ったりしている。スミスいわく、映像化しにくい原作小説を巧く脚色しようとした結果、製作会社の意向とは異なる方向に向かってしまい、アダムス、スミスともども、これはテレビ・ドラマより映画にしたほうがいいんじゃないかという結論になってしまったらしい。そして、Wall to Wall Television が『ダーク・ジェントリー』映画化権を持っていなかったことから、結局この話は立ち消えとなってしまった(Hitchhiker, p. 239)。
 スミスはナッツフォード生まれ。子供時代をアメリカや南アフリカ、オーストラリアで過ごした後、1972年にイギリスに戻る。ケンブリッジ大学キングス・カレッジで哲学と社会政治学を学ぶかたわら、フットライツにも参加していた。卒業後、BBCラジオ4のコメディ番組、And Now, in Colour の脚本家・パフォーマーとして活躍する。また、ホラーやSFの短編小説を発表するようになり、1991年には「猫を描いた男」で英国ファンタジー協会賞短編部門を受賞、現在までに同賞を計3回受賞している。1995年に出版された初の長編小説『オンリー・フォワード』でも、英国ファンタジー協会賞長編部門やフィリップ・K・ディック賞を受賞した。2001年からは、長編小説を「マイケル・マーシャル」名義で出版しているが、SF・ホラー色の強い作品を発表する時は「マイケル・マーシャル・スミス」名義にするという形で名前を使い分けているらしい。
 主な著作は以下の通り(* はマイケル・マーシャル名義の長編、** は短編集)。

Only Forward (1994) 『オンリー・フォワード』 ソニー・マガジンズ 2001年
Spares (1996) 『スペアーズ』 ソニー・マガジンズ 1997年/ ヴィレッジブックス 2001年
One of Us (1998) 『ワン・オブ・アス』 ソニー・マガジンズ 1999年
What You Make It (1999)** 『みんな行ってしまう』 創元SF文庫 2005年
The Straw Men (2001)* 『死影』 ヴィレッジブックス 2005年
Cat Stories (2001)**
More Tomorrow & Other Stories (2003)**
The Lonely Dead (2004)*  『孤影』 ヴィレッジブックス 2007年
Blood of Angels (2005)*
The Intruders (2007)*
This is Now (2007)**
Bad Things (2009)*
Killer Move (2011)*
We Are Here (2013)*
Everything You Need (2001)**


Sutherland, Joan  ジョーン・サザーランド 1926.11.7- 2010.10.10

 オーストラリア出身のソプラノ歌手。小説 Dirk Gently's Holistic Detective Agency で、マイケル・ウェントン=ウィルクスは自身の雑誌 Fathom にジョーン・サザーランドに関する記事を書いていたが、編集長の座を追われた途端にボツになってしまった。このため、マイケルの記事がどういう内容だったのかは分からないが、"Not a single line drawing of Joan Sutherland or Marilyn Horne anywhere" (p. 144)と書かれているからには、サザーランドがメゾソプラノ歌手のマリリン・ホーンとの共演を通して復活に貢献した、ベルカント・オペラのことではなかったか。


Stewart, Ian  イアン・スチュアート 1945.9.24-

 イギリスの数学者。ダグラス・アダムスのファンでもあるらしく、『銀河ヒッチハイク・ガイド』25周年を記念して出版された The Hitchhiker's Guide to the Galaxy: 25th Anniversary Edition に一言コメントを寄せている。
 また、1983年に出版した数学専攻の大学生向けに書かれた複素解析の解説書 Complex Analysis には 'The Hitchhiker's Guide to the Plane' というサブタイトルをつけているし、『数学の冒険』という自著の中では、ラプラスの決定論(「ある瞬間に宇宙に働くすべての力と,すべての物が分かり,そのデータを分析し尽くし,最大の天体から最小の原子にいたるまでの運動をすべて一つの式で書き表すことができる知性があったとすれば,その知性にとって不確実なものは何一つなく,未来は過去と同じように知られるだろう」p. 204)に対する反論として、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のディープ・ソートの例を挙げた。

アダムスの『銀河系へのヒッチハイク案内』の中に次のような話がある。高度の知性を備えた宇宙人が,‘深き思索’と呼ぶ超計算機を作って,‘生命と宇宙’についての答を求めた。ところが、七百五十年かかった計算の結果,‘42’という答えが出て,これが何を意味するかという別の問題が残ってしまったのである。ラプラスのいう‘全能の知性’のすることもこれを同じようなもので,その答も同様に不可解なものではないかと思う。(p. 206)

 勿論、ディープ・ソートが「生命と宇宙と万物についての究極の答え」を計算するのにかかった時間は、正しくは七百五十万年である。ただし、イアン・スチュアートという人は数学者の割に意外なところで数字には無頓着らしい、と考えるのは早合点というもの。原著 The Problems of Mathematics にあたってみると、

You may recall how Douglas Adams, in The Hitch Hiker's Guide to the Galaxy, tells of a race of hyperintelligent pan-dimentional beings who build a supercomputer called Deep Thought. When asked for the answer to 'Life, the Universe, and Everything', it announces that it can find it, but the program will take some time to run: about seven and a half milion years. At the end of that time it announces the answer: 'forty-two'. Which leaves just one further problem: to work out what the question was. Laplace's hypothetical intellect about as practical a proposition to me; and its answer would probably be equally intelligible.

 ディープ・ソートに関するジョークを完璧に理解していることがよく分かる、簡潔なまとめである。という訳で、「数字に無頓着な数学者」の汚名は、『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読んでいないと思われる、訳者の雨宮一郎氏に向けなければならない。
 『数学の冒険』以外の本でも、スチュアートは同じ文脈で『銀河ヒッチハイク・ガイド』を引用している。吉永良正訳『自然の中に隠された数学』では、

 未来があますところなく予測できる世界というこの同じ世界観が、ダグラス・アダムズが一九七九年に発表したSF小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』における忘れがたい事件の背景になっている。小説では、哲学者のマジクサイスとヴルームフォンデルが、スーパー・コンピュータ「深淵な思想(註・本文では「ディープ・ソート」とルビがついている)」に指示をあたえ、生命、宇宙、そして森羅万象についてのある究極の問題の答えを計算させる。SF愛好家は記憶しているだろうが、コンピュータは五〇〇万年後に「四二」という答えをだす。答えがでたとき、哲学者たちはその答えは明確で正しいが、問題自体があいまいなうえに適切でなかったことを悟るのだ。(pp. 158-159)

 惜しい、それでもまだ二百五十万年足りない。おまけに、ディープ・ソートに計算させようとしたのはランクウィルとフックであって、哲学者マジクサイスとヴルームフォンデルはそれを阻止しようとした側である。
 須田不二夫・三村和男訳の『カオス的世界像:非定形の理論から複雑系の科学へ』になると、訳者にとっては幸いなことにディープ・ソートの計算年数のくだりは最初から省略され、その代わりに章の最初に『銀河ヒッチハイク・ガイド』本文が引用されている。が、この章を担当した須田不二夫氏もまた、先行する風見訳に頼らず独自に訳していた。

「きみはほんとうはそれを好きになるつもりはないのだ」
とディープ・ソート。
「わけをいいたまえ!」
「よし」とディープ・ソートはいって「その偉大なる疑問に対する答は……」
「うん、それで……」
「宇宙、生命、そして万物についての疑問の答は……」
「うん! それから?」
「それは……」といいかけて、ディープ・ソートはためらうそぶりを見せた。
「それからどうした!」
「それは……」
「さあさあ! それで……」
「四二」とディープ・ソートは限りない威厳をもって冷静な態度でいったのであった。
  ダグラス・アダムス
『銀河ヒッチハイクガイド』より

 ラプラスの「偉大なる知性」(It)がまさに彼の教えに従い、「宇宙というもっとも大きな物体の運動ともっとも軽い原子の運動をたった一個の公式に凝集し」、それから「そのデータを解析学に委ねた」と仮定しよう。それはダグラス・アダムスの『銀河ヒッチハイクガイド』の作中人物、ルーンコールとフーチェ以上に、賢明な一つの答えを得られるだろうか。(p. 464)

 「きみはほんとうはそれを好きになるつもりはないのだ」("You're really not going to like it," )や、「わけをいいたまえ!」("Tell us!")は、風見訳の「きっと気に入らないと思いますよ」「教えてくれ」のほうが正解だと思われるが、それを除けば間違いらしい間違いはない。なお、固有名詞のルーンコールとフーチェは、風見訳ではルーンクォールとフォークフ、安原訳ではルーンクウォルとファウクになっている。
 興味深いことに、『カオス的世界像:非定形の理論から複雑系の科学へ』の三年ばかり前に、スチュアートとゴルビツキーの共著『対象性の破れが世界を創る 神は幾何学を愛したか?』の翻訳が、同じ出版社、同じ須田不二夫・三村和男訳で出ている。この本では、アダムスの『宇宙の果てのレストラン』が引用されている(p. 159)のだが、訳者あとがきによるとこの章を担当したらしい三村和男氏は、風見潤訳をそっくり使用していた。翻訳があることを知っていたなら、須田氏にも教えてあげればよさそうなものだが、須田氏も知っていたけれど敢えて使わなかったのか、その辺りの事情は不明である。
 スチュアートはケンブリッジ大学を卒業後、ウォーウィック大学にて博士号を取得し、現在はウォーウィック大学数学研究所教授に就任している。専門論文のみならず、数学に関する一般読者向けの著作も多い。
 主な著作は以下の通り。

Concepts of Modern Mathematics (1980)  『現代数学の考え方:だれにもわかる新しい数学』 講談社ブルーバックス 1981年/ちくま学芸文庫 2012年
Complex Analysis: The Hitchhiker's Guide to the Plane (1983)
The problems of mathematics (1987) 『数学の冒険』 紀伊國屋書店 1990年
Does God Play Dice? : the mathematics of chaos (1989) 『カオス的世界像:神はサイコロ遊びをするか?』 白揚社 1992年/『カオス的世界像:非定形の理論から複雑系の科学へ』(1997年の原著第二版の翻訳) 白揚社 1998年
Another Fine Math You've Got Me Into
(1992) 『スチュアート教授のおもしろ数学入門』 日経サイエンス社 1993年
Nature's Numbers: the unreal reality of mathematical imagination (1995) 『自然の中に隠された数学』
Life's Other Secret : the new mathematics of the living world (1998) 『生命に隠された秘密:新しい数学の探究』 愛智出版 2000年
Galois Theory 3rd Edition, Chapman and Hall (2000) 『明解ガロア理論 [原著第3版]』 講談社 2008年
Flatterland (2001) 『2次元より平らな世界―ヴィッキー・ライン嬢の幾何学世界遍歴』 早川書房 2003年
What shape is a snowflake? (2001) 『自然界の秘められたデザイン 雪の結晶はなぜ六角形なのか? 』 河出書房新社 2009年
Math Hysteria: Fun and Games with Mathematics (2004) 『パズルでめぐる奇妙な数学ワールド』 早川書房 2006年
The Mayor of Uglyville's Dilemma: And Other Mathematical Puzzles and Enigmas (2005) 『イアン・スチュアートの論理パズルトレーニング―論理的思考法を身に付ける』 日経BP社 2010年
Letters to a Young Mathematician (2006) 『若き数学者への手紙』 日経BP社 2007年
How to Cut a Cake And Other Mathematical Conundrums (2006) 『分ける・詰め込む・塗り分ける―読んで身につく数学的思考法 』 早川書房 2008年
Why Beauty Is Truth: A History of Symmetry (2007) 『もっとも美しい対称性』 日経BP社 2008年
Taming the Infinite: The Story of Mathematics (2008) 『無限をつかむ: イアン・スチュアートの数学物語』 近代科学社 2013年
Professor Stewart's Cabinet of Mathematical Curiosites (2008) 『数学の秘密の本棚』 ソフトバンククリエイティブ 2010年
Professor Stewart's Hoard of Mathematical Treasures (2009) 『数学の魔法の宝箱』 ソフトバンククリエイティブ 2010年
Cows in the Maze: And Other Mathematical Explorations (2010) 『迷路の中のウシ: 数学探検コレクション』 共立出版 2015年
The Mathematics of Life (2011) 『数学で生命の謎を解く』 ソフトバンククリエイティブ 2012年
17 Equations that Changed the World (2012) 『世界を変えた17の方程式』 ソフトバンククリエイティブ 2013年
Symmetry: A Very Short Introduction (2013) 『対称性 不変性の表現』 丸善出版 2017年
Visions of Infinity: The Great Mathematical Problems (2013) 『数学を変えた14の偉大な問題』 ソフトバンククリエイティブ 2013年
Professor Stewart's Casebook of Mathematical Mysteries (2014) 『数学ミステリーの冒険』 SBクリエイティブ 2015年
Professor Stewart's Incredible Numbers (2015) 『魅惑と驚きの「数」たち』 SBクリエイティブ 2016年

 この他に、テリー・プラチェットの人気SF、ディスクワールド・シリーズに関する本 The Scinece of Discworld も出版している。


Swan, Robert  ロバート・スワン 1956.7.28-

 探検家・エコロジー活動家。2004年3月11日、第2回ダグラス・アダムス記念講演で講演した。
 アイルランド生まれ。1986年に南極に到達、続く1989年には北極に到達して、史上初めて両極に徒歩で到達した探検家となった。自身の体験を基いて地球環境保護問題に積極的に取り組み、リオ地球環境会議を始めさまざまな会議に出席しスピーカーとして発言するのみならず、2001年にはチーム仲間と共に南極に赴き、ゴミ1000トンを持ち帰るという活動も行っている。2006年2月26日から3月10日にかけて、エネルギーの再生問題に関わる起業家やジャーナリスト、学生らを率いて4回目の南極遠征を達成した。1995年には、OBE(Officer of the British Empire)の称号を授与されている。

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