以下は、ダグラス・アダムスが1987年に発表した小説 Dirk Gently's Holistic Detective Agency の主要登場人物およびストーリー紹介である。当然ながら多くのネタバレを含んでいるので、原著を未読の方はその点を覚悟の上、目を通していただきたい。なお、さらなる作品解説についてはこちらへ。
〈主要登場人物〉
リチャード・マクダフ(Richard MacDuff) 主人公。ケンブリッジ大学を卒業し、現在はソフトウェア会社に務めている。 スーザン・ウェイ(Susan Way) リチャードの恋人でチェロ奏者。 ゴードン・ウェイ(Gordon Way) スーザンの兄。リチャードが務める会社の経営者でもある。 クロノティス教授、通称レッジ(Professor Chronotis) ケンブリッジ大学の欽定講座担当教授(Regius Professor、略して 'Reg')。専門は年代学(chronology)。 ダーク・ジェントリー(Dirk Gently) 全体論」を標榜する探偵。リチャードとはケンブリッジ大学からの知人。当時は、Svkad Cjell、Dirk Cjell とも名乗っていた。 ジャニス・ピアース(Janice Pearce) ダークの秘書。 マイケル・ウェントン=ウェイクス(Michael Wenton-Weakes) 父親から引き継いで雑誌 Fathom の編集長になるが、部数低迷のために母親から解雇された。スーザンに片思いしている。 A・K・ロス(A. K. Ross) 雑誌 Fathom の新編集長。リチャードの書いた記事 'Music and Fractal Landscape' を掲載した。 エレクトリック・モンク(Electric Monk) 本人に代わって、どんな事柄でも信じてくれる装置。見た目の信頼感を高めるため、常に馬に乗せられている。 ギルクス巡査(Sergeant Gilks) ゴードン殺人事件を担当した警官。
〈ストーリー〉
第1章
生命のまったくいない不毛の地に、塔が傾いて立っている。塔からは光が点滅していたが、それはやがて鋭いノイズと共に強くなり、唐突に消える。塔の下では、これまでにない何かが起こったようだが……
第2章
岩だらけの丘の上で、馬に乗ったエレクトリック・モンクがじっと谷を見下ろしている。ビデオ・レコーダーが、主人に代わってテレビ番組を観てくれるように、エレクトリック・モンクは主人に代わってどんなことでも信じてくれる道具だが、このエレクトリック・モンクは間違ってテレビに配線されてしまったためおかしくなり、砂漠に捨てられてしまった。今ではこの世のすべてが「ピンク」だと信じている。
第3章
待ちくたびれたスーザン・ウェイは、やけくそでマイケル・ウェントン=ウェイクスを誘って家を出る。スーザンが出かけた二分後、電話が鳴って留守番コールが応える。
第4章
リチャードは、ケンブリッジ大学のセント・セッズ・カレッジ(St. Cedd's College)で行われる、詩人コールリッジを記念するディナーに出席する。卒業して10年になるリチャードを強引に招待したのは、カレッジでリチャードのチューターだった、通称レッジことクロノティス教授。ジョージ三世の話をされるが、リチャードには教授の真意が分からない。また、別の教授に招待されたゲストのうちの一人は幼い少女を連れて来ていたが、少女がギリシャで見つけた古い壷は、ケンブリッジの教授たちから約200年前に作られたレプリカで値打ちなしと鑑定された。レッグは、この古いギリシアの壷を割って、中からケンブリッジのディナー用の銀の塩入れを取り出す手品を見せる。そしてリチャードに、ダーク・ジェントリーの近況について質問する。
第5章
エレクトリック・モンク、次第に「疑い」を抱くようになる。谷間に降りて、謎のドアを見つけ、馬を連れて中に入る。数分後、岩の向こうで顔に粉をこすりつけていた男が立ち上がり、ドアから中に入る。
第6章
コールリッジ・ディナーにて、コールリッジの代表作、「クーブラ・カーン」が朗読されている。リチャードは、この長い朗読がいつまで続くことかと嘆息し、学生時代のダークについて回想する。
第7章
ゴードン・ウェイの人生最後の夜。そうとは知らず、ケンブリッジ郊外にある自身のコテージに向かう途中にガソリン・スタンドに立ち寄り、部下と妹のスーザンの留守番電話に伝言を残す(ゴードンはアイディアをすぐ口に出さずにいられないタチなので、部下や知人たちは彼のために留守番電話のテープをセットし、翌日秘書がテープを回収する手はずになっている)。すると突然、彼の車のトランクから出て来た何者かがゴードンを撃ち殺す。
第8章
レッジの部屋にて。リチャードは、フラットに運び入れる途中の階段で動かなくなってしまったソファの話をする。レッグの部屋には、イギリスの幽霊屋敷の本と、ギリシアの本が置いてあった。また、天井から物音がするので階段を上がった先にあるバスルームを確認すると、そこには何故か馬がいた。リチャードは突然、今日のコールリッジ・ディナーにスーザンを誘っていたことを思い出す。
第9章
ゴードン、幽霊になる。電話がつながったままだったので、スーザンの留守電にメッセージを残そうとする。とりあえずコテージまで歩いて行くことにするが、振り返ると草の上に横たわっていたはずの自分の死体がなくなっていた。
第10章
リチャード、レッジの許を去る。念のため、寮のポーターにカレッジに馬がいるかどうか訊く。ポーターは、いない、と答える。後で別のポーターにその話をしたところ、「ついさっき、外国人の修道士のような男がやってきて、暖炉のそばでじっとラジオのニュースを聴いていた。出て行け(shoot off)と言うと、『その言葉を信じてよろしいですか?』と言う。信じろ、と答えると、『分かりました。バスルームに馬を置いたままにしてあります』と言われた」という。
第11章
ゴードン、幽霊として振舞う訓練をする。人の目に映るよう集中し、ヒッチハイクを試みる。
第12章
リチャード、ケンブリッジから家に帰る途中で道に迷う。スーザンの留守番電話に「週末は付き合うから」と入れたところ、ゴードン(の幽霊)を目にして車をスリップさせる。警官に事故について説明してロンドンに戻り、次の週末はどうしても片付けなければならない仕事があるため、スーザンと会っている時間が取れないことに気付く。
第13章
何者かが双眼鏡で、建物に不法侵入しようとしている男の様子を監視している。不法侵入者はアマチュアのようで、危うく転落して首の骨を折りそうになっている。が、どうやら3階の窓から侵入に成功し、その部屋の電話をいじっているようだが……。
第14章
リチャード、スーザンのフラットへの侵入に成功する。留守番電話のテープをチェックしていたら、ダーク・ジェントリーからの電話が入り、10分後にピザ屋に来いと言われる。リチャードがフラットを出る前に、スーザンとマイケルが帰宅。マイケルはそのままフラットを追い出される。スーザンは機嫌を直しており、今度の週末は用があって忙しいこと、留守番電話のテープは聴きもせずにリチャードに渡し、明日出勤した時にゴードンの秘書に渡してほしいと頼む。一方、自宅に戻ったマイケルは、スーザンをリチャードに、雑誌 Fathom の編集長の座をA・K・ロスに奪われたことで自暴自棄な気分になっている。
第15章
ゴードン、自分のコテージにたどり着く。台所でガスの栓を開けることはできたが、点火には失敗。台所の戸棚を開け、自分の死体を見つけて失神する。意識が戻ったとき、ガスの栓が開いたままだったためにガス爆発が起こる。
第16章
リチャード、ダークと連絡を取ろうと電話帳で名前を探すが見つからない。同僚のプログラマーのケイトから、ゴードンと連絡が取れないという電話が入る。ダークを探すために私立探偵を雇おうと職業別電話帳を調べたら、「ダーク・ジェトンリーの全体論的探偵社」の広告が載っていた。ダークのオフィスはリチャードの自宅から程近いところにあったので、歩いて向かうことに。途中の本屋でコールリッジの詩集を衝動買いし、ダークのオフィスに着くと、秘書のジャニス・ピアースが賃金を払わないダークに愛想を尽かして出て行くところで、ダークは依頼主である老婦人たち(?)を相手に電話で話しまくっていた。リチャードはダークに、ダーク流探偵術(どんなに遠く離れていて関係なさそうに見えることでも、実はすべて繋がっている云々)について説明されると同時に、ゴードンが死んだこと、リチャードに殺人の容疑がかかっていることも知らされる。
第17章
さすがのエレクトリック・モンクも、信じるのに疲れてきた。馬を見失い、木の上で一夜を過ごし、空腹に苛まれている。どうやらゴードンを殺害し、戸棚に死体を入れたのは、エレクトリック・モンクらしい(ラジオで英語を学習したエレクトリック・モンクは、'shoot off' という言葉を「出て行け」ではなく「撃ち殺せ」という意味だと理解した)。そこへトラックがやってきて、中から馬を出した(馬の扱いに困った作業員が、当座の措置として馬を野原に放しておくことにしたらしい)。こうしてエレクトリック・モンクは無事に馬と再会する。
第18章
ダークはリチャードの身に起こったことを正確に知るために催眠術をかけたいと言うが、リチャードはそれを断り、自宅に戻る。が、自宅が警官に包囲されているのを見てダークのオフィスに戻り、催眠術に同意する。リチャードの家には、ケンブリッジ州からメイソン警部(Detective Inspector)が到着する。運転手役を務めたギルクス巡査(Sergeant)は、昨夜は馬をバスルームから出したり殺人現場に立ち会ったりと忙しかった。また、運転している車のエアコンの調子がおかしかったり、ラジオのスイッチが勝手に入ったり切れたりすることを不審に思っている。
第19章
マイケル、悪夢にうなされて起きる。その悪夢はとてつもなく長時間に亘る孤独と、大量の泥、またぬるぬるしたものがぬるぬるした海を這いまわっていた(slimy things with legs that had crawled on the slimy sea)。起きても特にすることもなく、何気なくヴィバルディのレコードをかけた途端、不意に「音楽を聴く」ことに目覚める。A・S・ロス編集の Fathom をゴミ箱から取り出し、リチャードが書いた記事、"Music and Fractal Landscape" を読む。途中で「ぬらぬらした生き物」がコールリッジの「老水夫行」("The Rime of the Ancient Mariner")に出ていたことを思い出し、本棚からコールリッジのアンソロジーを取り出す。
第20章
ダークとリチャード、イズリントンの運河沿いに散歩に出る。ダークは、1・ギリシャの壷から塩入れが出て来たこと、2・階段の途中でソファがひっかかったまま動かなくなってしまったことの二つの謎が気になると言う。どちらも物理的に不可能だから、と。突然、リチャードは服を脱いで運河に飛び込む。ダークが催眠術でリチャードに暗示をかけておいたからなのだが、タネ明かしをされるまでリチャードは自分の意志で飛び込んだと思い込んでいた(泳げば頭がすっきりする云々)。
第21章
ダーク、警官が取り囲むリチャードの部屋に警察関係者を装って強引に入るも、顔見知りのギルクス巡査に見つかる。リチャードがスーザンから託されていた留守番電話のテープを聴くと、ゴードンが撃たれた時の音も入っていた。ギルクスはテープを止め、絶対に何もいじるなと言い残してダークを置いて部屋を出る。その隙に、ダークは音量を最大に上げてテープの先を聴き続け、死んだゴードンからの声を聞き、幽霊の存在を確信する。一方、マイケルはコールリッジの「クーブラ・カーン」を読み、自分がなすべきこと、またその方法を理解する。
第22章
リチャード、公衆電話でスーザンと話す。自分に殺人容疑が向けられていないことを知らされ、すぐにスーザンの許に行くと約束する。
第23章
ダーク、秘書のジャニス・ピアースと話す。レッジの手品の種明かしが見つけられずに苛立つダークに、ジャニス・ピアースは、そういう子供っぽいことが知りたければ直接子供に訊けばいいとアドバイスする。
第24章
ダーク、スーザンのフラットにやってくる。そこにはリチャードもいた。ダークは、子供が教えてくれたおかげで答えは分かった、今から一緒にケンブリッジに行こうとリチャードを誘う。また、謎は二つではなく三つだったと言う。すなわち、「ジョージ三世はレッジに何を質問したのか?」。一方、エレクトリック・モンクは昨夜と同じガソリン・スタンドに行き、売店で聞き込みをしていたギルクス巡査を神だと思い込む。神を讃えるつもりで神の仕草の真似をしたところ、ギルクス巡査はそれを侮辱と受け取りエレクトリック・モンクを逮捕する。
第25章
リチャードとダーク、ケンブリッジのセント・セッズ・カレッジへ。レッジの部屋に行ってみると、幸い彼はそこにいた。レッジは、ギリシアの壷のトリックについてもっともらしい説明をするが、ダークはそれを信じない。そして、ジョージ三世がかつて問うた「時間を遡ることができるのか」は、レッジ本人に向けられたのではないかと問う。レッジは、彼の部屋そのものがタイムマシンであると告白する。
第26章
ケンブリッジに向かう列車にて。陰気な顔つきのマイケルは、結婚披露宴に向かう途中の若い三人組の男性のうちの一人、ロドニーを掴まえ、船がどうしたとか楽園を作るだとかよく分からない話を無理矢理聞かせようとする。
第27章
レッジ、タイムマシンについて説明する。ユーザーフレンドリーで使いやすく、ビデオレコーダーで録画するより簡単だという。ただし、絶対に過去を変えてはいけない、とも。ダークはレッジに、何故自分に会いたかったのかと訊く。一方、ケンブリッジに着いたロドニーは、仲間にマイケルとの会話について仲間に説明する。マイケルの話はほとんど意味不明だったけれど、最後にマイケルが「さようなら」と言った時は、何ともイヤな感じがした、と。
第28章
レッジは、ここしばらくタイムマシンを使っていなかった。何者かに、「したいと思っているが、してはいけないと戒めていること」をやらされそうな気がしてならなかったからで、その謎を解くためにレッジはダークに会いたかったのだが、昨夜になってその何者かの気配が消えたという。ダークいわく、レッジに取り憑いていた幽霊が、昨夜リチャードへと乗り移り、そしてリチャードにスーザンのフラットへの不法侵入をやらせた、と。霊が取り憑かれた時も催眠術をかけられた時と同じで、自分の意志でないことをしていながら、後からもっともらしい理屈を付けて自分で自分を納得させてしまう。それだけに、本人が本気でいやがることをさせるのは難しく、本人も内心やりたがっていることをやらせるのは簡単だ。レッジは、自分の「やりたかったこと」を、ダークとリチャードに見せる。リチャードの次に霊に取り憑かれたマイケルもまた、セント・セッズ・カレッジに到着した。
第29章
レッジは、ダークとリチャードを1676年のモーリシャスに連れてくる。レッジの目的は、絶滅前のドードーに会うことだった。そして、ドードーを絶滅から救いたいと願いつつ、それをやってはいけないと戒めている。幽霊は、最初レッジに取り憑いて失敗し、次にエレクトリック・モンクにやらせようとした(レッジに取り憑いて遠くの惑星まで日焼けのための粉を取りに行かせ、その隙にエレクトリック・モンクを現在の地球に連れ込んだ)が、こいつは何でもかんでも信じるくせに5分以上一つのことを信じ続けさせるのがものすごく難しいことが分かって断念した。が、マイケルこそ、幽霊がやらせたいと思うことを実行させるのに、まさにうってつけの相手だった。
第30章
レッジの部屋で、ダークが自分の推理を語る。すなわち、幽霊とは、死ぬ前にやり残したことがあるとか、生前の失敗を取り戻したいと強く願う者だけがなる。それだけに、幽霊にとってタイムマシンは最高の道具である。タイムマシンを持っているレッジに取り憑いて失敗し、リチャードに取り憑いて彼の資質を試してみた(過去の失敗をなかったことにする、つまり留守番テープを取り戻す)がうまくいかず、マイケルに乗り移ったのだ、と。そこに、スキューバの道具を持ったマイケルが登場する。一方、スーザンは自宅の電話のホックを外したままだったことに気付いて元に戻すが、迷った末に留守番電話のテープをセットする(留守番電話と言えばゴードンを思い出すのでやりたくなかった)。そのゴードンは、ダークのオフィスからスーザンに電話で話しかけ続けていたが、スーザンにはゴードンの声は聞こえない。あきらめて映画でも観ようと外を歩いていた時、すぐ近くのドアから女性が悲鳴を挙げて出て来た。
第31章
幽霊、マイケルや他の人に危害を与えるつもりはないことや、かつてコールリッジにも取り憑いたことがあることなどを話す。実際、コールリッジに取り憑いた状態でレッジの部屋を訪れ、タイムマシンを使おうとしたが、コールリッジはアヘンでリラックスしすぎていてまともに何かをできる状態ではなかったため実行には至らなかった。幽霊と言えどずっと影響力を保ち続けられる訳ではなく、音楽の波動のように時間によって力が強くなったり弱くなったりするらしい。幽霊は、マイケルに取り憑いた時にリチャードが書いた記事を読んで感銘を受けたという。なお、この幽霊の正体は、Salaxala という星のエイリアンで、宇宙船の修理係だった。生存可能な新しい星を見つけて着陸したものの、着陸船が壊れて宇宙船(母船)に戻れなくなり、修理はしたものの最後の点検で「もし故障箇所が残っていたら」と思うと怖くなって、自分に代わってエレクトリック・モンクを送り出してしまったのだとか。
第32章
マイケルに取り憑いた幽霊いわく、着陸船には仲間全員が乗っていて、自分の修理不備のせいで起こった爆発によりみんな死んでしまった。母船は今なお健在だが、そこにたどり着くすべはなく、死の惑星にただ一人、幽霊になって取り残されて長い年月を過ごす羽目に。やがて、その惑星に生命が誕生し、ついには人間のような知的生命体も出現したので、今度こそ自分の心の重荷を取り除きたいのだという。すなわち、タイムマシンで過去に遡り、着陸船に戻って修理をやり直したい、と。レッジは、タイムパラドックスは危険なもので、一つの過去をいじると未来にどう影響するか分からない、実際、ドードーが死滅してしまったのは自分がシーラカンスを絶滅から救おうとしたからだと語る。それでも、はるか昔の死んだ惑星でのことなら、過去を変えてもたいした影響はなかろう、という結論に達し、幽霊の望みをかなえてやることにする。一方、ゴードンはダークのオフィスから電話をかけ、スーザンの留守番電話にメッセージを残し、成仏する。
第33章
レッジ、リチャード、ダーク、エイリアンの宇宙船に行く。リチャードは、その場に流れる音楽の美しさに感極まった挙げ句に気絶する。電話の音で目を覚ますと、レッジの部屋のベッドに寝かされていて(隣室は、前回の訪問時には馬がいたバスルーム)、電話の主はスーザンだった。スーザンに、電話を切らないでそのまま待つように言い、階段を降りてレッジのメインルームへと向かう。
第34章
ドアの向こうには、傾いた塔(のように見えるが実は故障した着陸船)と泥の河があった。ダークはリチャードに、ドアの向こうは有毒ガスがたちこめていて危険だと警告する。マイケルに取り憑いた幽霊は、スキューバダイビングの格好をして空気ポンプを背負い、着陸船へと歩いて行った。リチャードは、スーザンから電話で、雑誌 Fathom の新編集長のロスが殺されたことを知らされる。犯人はマイケル以外に考えられない、そしてそんなマイケルが理想的な媒体だったということは、幽霊の真の狙いは着陸船の修理などではなく、地球そのもののを自分たちの楽園にすることだったのだとダークは気付く。他でもない着陸船の爆発が、地球の生命誕生の起爆剤となったのであり、その爆発が起こらなければ地球上のすべての生命は存在しなくなってしまう。マイケルが着陸船にたどり着く前に阻止する方法を考えなくては――ダークがソファに座ろうとしてマイケルのジャケットをどけようとした時、ジャケットから1冊の本が転がり落ちる。
第35章
リチャード、レッジ、コールリッジの住むコテージの前に潜んでいる。ダークはポーロックから来たと名乗ってコールリッジ宅を訪問し、「クーブラ・カーン」を書いている最中のコールリッジの邪魔をする。かくしてコールリッジは「クーブラ・カーン」の第二部の構想を見失って詩は未完に終わり、人類は絶滅の危機から救われた(幽霊は失われた第二部をヒントにして過去を変える方法を思いついたから)。
第36章
リチャード、レッジ、ダーク、現在に戻る。スーザン宅を訪れたリチャードは、自分が宇宙船の中で聴いた音楽をスーザンが弾いているのを聴いて驚く。スーザンは「バッハも知らないなんて」と嘆くが、リチャードはバッハなどという作曲家はこれまで聴いたことがなかった――レッジが、宇宙船に流れていた音楽の一部を持ち帰って、ある音楽家にさずけたせいで歴史が変わったのだ。なお、レッジの部屋のタイムマシン機能は、電話がちゃんと繋がるようになった途端、失われてしまった。オフィスに戻ったダークの場合、この新しい世界ではかつての猫探しの依頼人は猫を探していなかった。そこでダークは秘書のピアースを呼んで、新しい請求書を作らせる。「人類を破滅から救う――無料」と。
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