ドクター・フー 'City of Death'


 'City of Death' の脚本は、もともとデイヴィッド・フィッシャーという脚本家が依頼されて 'The Gamble with Time' のタイトルで書いていたものだが、諸事情で彼が脚本を完成させることができなくなり、脚本編集者だったアダムスが急ぎ代行執筆した。このため、慣習としてクレジットにはアダムスの名前ではなく、David Agnewという偽名が使用されている。アダムスいわく、「もう金曜日で、月曜日から監督がやってきて製作が始まるというのに、新しい4話分の脚本を用意しなくちゃならない。そこで(プロデューサーの)グレアムは僕をオフィスに連れて行って部屋に監禁し、週末の間ずっと僕をブラック・コーヒーとウィスキー漬けにして、ようやく脚本を仕上げることができた」(Haining, p. 162)。
 1979年3月16日から19日にかけて大急ぎで書かれた脚本では、「1920年代のモンテカルロ」という設定だったのだが、ウィリアムスの指示で「現在のパリ」に変更された。言うまでもなく、アダムスとしては不本意だったようだ。1979年5月から番組初の海外ロケがパリで行われた。
 このシリーズには、ターディスを美術館の展示品と勘違いする美術愛好家の役で、ジョン・クリーズとエレノア・ブロンがカメオ出演している。この場面は、2008年4月12日にイギリスで放送された、『ドクター・フー』新シリーズの第4シリーズ第2話、'The Fires of Pompei' に、オマージュとして登場する。
 クリーズらが出演した 'City of Death' の最終話は、番組史上最高の視聴率を記録した。

 2005年11月にはイギリスで DVDが発売されたので、パソコン画面でなら実際に観ることもできる。 'City of Death' のストーリー構成の一部は、アダムスが1987年に発表した小説 Dirk Gently's Holistic Detective Agency に転用されていることもあり(詳しくはこちらへ)、そういう意味でもなかなか興味深い作品である。興味のある方はお試しあれ。

 2015年5月、'City of Death' はジェイムズ・ゴスによってノベライズされた。ゴスによるあとがきは、こちら

 


第1回放送日

1 1979.9.29
2 1979.10.6
3 1979.10.13
4 1979.10.20

 


キャスト一覧

 

The Doctor Tom Baker
Romana Lalla Ward
Art Gallery Visitor Eleanor Bron
Art Gallery Visitor John Cleese
Count Julian Glover
Countess Catherine Schell
Duggan Tom Chadbon
Hermann Kevin Flood
Kerensky David Graham
Louvre Guide Pamela Stirling
Soldier Peter Halliday

 


スタッフ一覧

 

Director Michael Hayes
Assistant Floor Manager Carol Scott
Costumes Doreen James
Costumes Jan Wright
Designer Richard McMananSmith
Film Cameraman John Walker
Film Editor John Gregory
Incidental Music Dudley Simpson
MakeUp Jean Steward
Producer Graham Williams
Production Assistant Rosemary Crowson
Production Unit Manager John Nathan-Turner
Script Editor Douglas Adams
Special Sounds Dick Mills
Studio Lighting Mike Jefferies
Studio Sound Anthony Philpott
Title Music Ron Grainer and the BBC Radiophonic Workshop, arranged by Delia Derbyshire
Visual Effects Ian Scoones
Writer David Agnew


DVD版 'City of Death'

 1979年9月29日から10月20日にかけて放送された'City of Death' は、2001年5月8日にはビデオが、2005年11月7日にはDVDが発売されている。DVDは特典映像付きの2枚組になっており、キャスト・スタッフらによるオーディオ・コメンタリーもついている。また、'Paris in the Springtime' と題された45分の特典映像には、アダムス本人のインタビュー映像に加え、『ドクター・フー』新シリーズの脚本家、ロブ・シアマンスティーヴン・モファットの 'City of Death' に対するコメントなども入っていて、なかなか興味深い。イギリスで発売されているリージョン2のDVDなら日本のPCで簡単に見ることができるので、興味のある方はご覧あれ。
 DVDの特典映像の詳細は、以下の通り。

〈オーディオ・コメンタリー〉
  マイケル・へイズ(ディレクター)/ジュリアン・グローヴァー(伯爵兼エイリアン役)/トム・シャドボン(探偵ダッガン役)
 
〈特典映像〉

Paris in the Springtime

 約45分の 'City of Death' のメイキングだが、ダグラス・アダムスへのトリビュート的な色彩が濃い。アダムス本人のインタビュー映像に加え、キャストの中ではジュリアン・グローバー、カトリーヌ・シェル、トム・シャドボンの3人が、スタッフの中ではもともとこの作品を書くはずだった脚本家のデイヴィッド・フィッシャーとアダムスの前に脚本編集を担当していたアントニー・リードの2人が、当時の模様について語っている。さらに、『ドクター・フー』新シリーズの脚本家、ロブ・シアマンスティーヴン・モファットのコメントも入っている。

Paris, W12

 撮影現場でのリハーサルの模様を映した約20分のモノクロ映像。本番前の確認のためのもののようで、最初からカラーでなくモノクロのテープで撮影されていた。本来なら、テープが上書きされ、とっくに消されていてもおかしくなかったのだが、スタジオのテープの中から奇跡的に発見され、復元された。

Prehistoric Landscapes

 実際の番組には使用されなかった、模型を使って撮影された生命誕生以前の地球の映像。

Chicken Wrangler

 卵から孵ったヒナが短時間でニワトリに成長し、死んで骨になるまでの特撮映像の撮影している様子。実際の番組では使われていない。

Eye on...Blatchford

 'City of Death' が、地球でただ一人生き残ったジャガロス族エイリアンの話だったとすれば、2005年に製作されたこのスピンオフの短編コメディは、同じように生き延びていたもう一人のエイリアンの話である。こちらのエイリアンは、イギリスの田舎町で周りに溶け込こうとけなげに努力するが、緑色の風貌が災いしてか、ことごとく裏目に出てしまう。

Photo Gallary

 番組内の映像からなるフォトギャラリー。

The Doctor Who Annual 1980

 1960年代から1980年代にかけて、毎年クリスマスシーズンには『ドクター・フー年鑑』(The Doctor Who Annual)が発売されていた。そのうちの1980年版が、PDFで完全収録されている(計64ページ)。

 

 

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