ともに楽しみましょう
更新履歴・裏ヴァージョン(2012年)


裏ヴァージョン・最新ページへ
更新履歴・裏ヴァージョン 目次へ

更新履歴・表ヴァージョンへ

目次

2012.2.4. 今年もよろしくお願いします
2012.3.3. iPlayer 活用法
2012.4.7. テレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』
2012.5.5. 小説版 Doctor Who: Shada
2012.6.2. イギリスのテレビ番組あれこれ
2012.7.7. 朗読版 Doctor Who: Shada
2012.9.1. 5年ぶりの悪戦苦闘
2012.10.6. 「SF MASTERWORKS」
2012.11.3. 日本版 Kindle Paperwhite 発売
2012.12.1. 複雑すぎる人物相関図


2012.2.4.  今年もよろしくお願いします

 2012年も既に丸1ヶ月が過ぎてしまったけれど、今さらながら新年あけましておめでとうございます。
 しかし、残念ながらと言うべきか、今年も昨年と同様に、更新の頻度は月に一度、毎月第一土曜日とさせていただきます。ただ、今年はダグラス・アダムス生誕60周年ということもあって、海の向こうではさまざまな企画があるようだし、それらの情報はなるべくこまめに「最新ニュース」に追加したいと思っています。
 ということで、今年もよろしくお願いします。
 
 気を取り直して、今年もまた例年通り追加した、「My Profile」のコーナーの「2011年のマイ・ベスト」について。
 「2011年のベスト本」は、そりゃもう誰が何と言おうとダグラス・アダムス/マーク・カーワディン共著の『これが見納め 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』で決まりでしょ、と思ってたけど、考えてみれば「My Profile」に載せているのは「本」ではなくて「小説」だった。この私が「小説」ではない「本」をベスト1に選ぶ日が来るなんて10年前は想像だにしなかったからだが、今となってはちょっと失敗だったかも? 
 でも、原著発売から20年以上経って発売されたほとんど奇跡の日本語訳『これが見納め』を除けば、2011年のベスト本として、ジョナサン・リテルの『慈しみの女神たち』を挙げるのに何の躊躇もない。上下二巻の超大作、「第二次大戦後にフランス人になりすまして生き延びた元ナチ親衛隊(SS)の将校が書き記した回想録」という設定が設定だけに、ハンパなく重くて暗くてエグイけど、読み出したら止められない。私の知識と読解力でどこまで理解できているかはさておき、こんな重量級の小説を翻訳し出版してくれた集英社に感謝。そう言えば、今回で11回目になる「マイ・ベスト」の中で、小説と映画の両方を合わせても、私がフランス語の作品を選ぶのはこれが初めてじゃないか?
 「2011年のベスト映画」に関しては、今回は3本ともコメディになった。と言っても、第2位の『宇宙人ポール』を除けば、「コメディ」と呼ぶにはシリアスすぎる内容だけど、私はコメディにできそうもないシリアスすぎる題材を敢えてコメディにする気骨というか根性が好きなのだ。
 でも、この3本に決めるまでには、正直なところ随分と迷った。本当は、『スコット・ピルグリムVS. 邪悪な元カレ軍団』とか『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』とかも入れたかったのだが、入れたい理由が作品そのものの出来の良さだけでなく、今回の更新で映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』キャスト一覧に追加した、エドガー・ライトが手掛けている、という身贔屓(?)もあるよなあ、と思ったので、敢えて退けることに。
 特に『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』は、脚本を担当したエドガー・ライト、スティーヴン・モファットジョー・コーニッシュの3人全員がダグラス・アダムス関連人物に入っているという意味で、私としては大注目/大興奮の1本だった。映像も凄かったけれど(まともに実写でやったら、金と時間と人命がいくらかかるか知れたものではない)、でもあの3人が手掛けたにしてはそこまで凄い脚本という気もしなかったので、惜しくも次点どまり。残念。でも、スティーヴン・モファットに関しては、2012年1月1日にBBCで放送されたテレビドラマ、"Sherlock series 2 Episode 1: A Scandal in Belgravia" の脚本が素晴らしかったから、いいのさ。
 
 という訳で今回の更新は、先に書いた通り映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』キャスト一覧にエドガー・ライトを加えた他に、数ヶ月ぶりにアダムスの「生い立ちの記」の続きを書いた。
 よろしければ、またお付き合いください。

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.3.3.  iPlayer 活用法

 ダグラス・アダムス関連の最新ニュースに追加した通り、2012年3月5日午後9時より、イギリスのBBCで、テレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』(全3話)が放送される。
 このドラマ、実は約2年前の2010年12月に、約60分の番組として製作/放送されている。今回はその続編、というか、前作の高視聴率を受けてシリーズ化が決定した、ということらしい。
 もっとも、一口にBBCのテレビ・ドラマで高視聴率、と言っても、『ダーク・ジェントリー』はBBC4の番組である。高視聴率というのも、あくまで「BBC4のテレビ・ドラマとしては」という意味であって、視聴者数で言えばBBC1で高視聴率の『ドクター・フー』や『SHERLOCK』とは比較にならない。が、何にせよシリーズ化決定はめでたいことだ。素直に喜ぼう。
 でも、正直に言うと、数ヶ月前に私が『ダーク・ジェントリー』シリーズ化決定の報を最初に知った時には、「ふうん、良かったね」程度の感想しか持てなかった。2010年の60分番組を観て「つまらない」と思ったから、ではない。そうではなくて、そもそもこの60分番組を観ることができなかったからだ。
 その昔、私が大学生だった頃は、テレビ・ドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』を観ることさえかなわなかった。映像化権をめぐるゴタゴタのせいで、アメリカでもイギリスでもVHSテープすら発売されていなかったのだから仕方がない。その分、大学卒業後、友人と旅行したニューヨークのショップで見つけて購入した時の感動ったらなかったが、それに比べ、今ではDVDが簡単に手に入る。テレビ・ドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』だけでなく、アダムスが脚本を書いた『ドクター・フー』の 'City of Death''The Pirate Planet' も、自宅にいながらクリック一つで購入でき、せいぜい10日も待てば配達される。昨今、新しくBBCで製作されるアダムス関連の番組に至っては、番組放送直後にラジオならCDが、テレビならDVDが発売される。かくして、たいしたタイムラグもなく欲しいものが簡単に手に入ることに慣れ切ってしまい、2010年放送のテレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』についても、あらかじめ Amazon.co.uk で予約しておけば万事オッケー、とタカを括っていたのだが――BBC4のテレビ・ドラマでは、予算規模の小さすぎ、視聴者が少なすぎ、従ってDVD化を望むべくもない、ということになろうとは夢にも思わなかった。
 これがテレビ番組ではなくラジオ番組だったなら、たとえCD化されなくても、放送から1週間以内なら BBC の iPlayer のサイトで聴くことができる。が、テレビ番組に関しては、iPlayer はイギリス国内配信限定なので、この手も使えない。
 以前のような「観られないのが当たり前」だった時代なら、「いつか観られるといいな」と憧れこそすれ欲求不満は抱かなかった。が、「観られて当たり前」の時代にあって、観られないのは腹立たしい。故に、このたび晴れて『ダーク・ジェントリー』の続編が製作されることが決まった、とか言われても、「どうせ私は観られないんだし」と、ついダグラス・アダムスのファンにあるまじき冷淡な態度を取ってしまった。
 ところが昨年末になって、日本にいながら iPlayer でBBCのテレビ番組を観る裏技を教えてもらった。それが、Tunnelbear。このソフトをダウンロードし、あらかじめ起動しておくだけで、まるで本当にイギリス国内にいるかのように、iPlayer でテレビ番組を観ることができる。英語字幕を付けることすらできる!
 これで私もついに、『ダーク・ジェントリー』新シリーズを迎える準備が整った。ふふふ、今度こそ放送開始がマジで待ち遠しいったら。
 
 でもその前に、まずは今回の更新について。前回に続き、アダムスの「生い立ちの記」を追加する。今回からようやく「ブレントウッド・スクール」の話に入ったものの、さすがにこの学校でのくだりは書くことが多いため、まずは前半部分のみをアップした。ここにきて、ようやく少しは「生い立ち」っぽい内容になったかな?

追伸/「道化師の蝶」で第146回芥川賞を受賞した円城塔さんが、2012年2月17日に開催された贈呈式のあいさつの中で「ほとんど無害」という言葉を使っていたけど、これって絶対『銀河ヒッチハイク・ガイド』を踏まえているよね? それとも単なる偶然? 気になって仕方ないんですけど!

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.4.7.  テレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』

 前回の同コーナーで、テレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』について、「BBC4のテレビ・ドラマでは、予算規模の小さすぎ、視聴者が少なすぎ、従ってDVD化を望むべくもない」と書いた約2週間後、このドラマのDVDの発売が決定していることに気が付いた。単に私が知らなかっただけ。うう、面目ない。
 という訳で、3月15日、とりいそぎダグラス・アダムス関連の「最新ニュース」にDVD発売情報を追加した。本心としては、前回の文章もなかったことにしたかったが、でもこのコーナーでバカを晒すのは今に始まったことではない。というよりむしろ、自分のバカさ加減を積極的に周知している面もある。これを読めば、私の情報収集力や英語力の程度が推察できるだろうし、そうなれば私が本サイトに乗せている情報や訳文を安易に鵜呑みにする人はいなくなるはずだから。
 勿論、この種の開き直りは決して褒められたものではない。でも、こういうサイトを匿名で作成/管理するなら、情報の信憑性を読み手が判断するための材料を提示することはやはり必要だ。
 ま、言い訳にもなってない言い訳はこのくらいにして。
 テレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』のDVDは Amazon.co.ukに予約注文したが、前回の同コーナーに書いた通り、DVDの到着を待つまでもなく、私は iPlayer + Tunnbelbear を駆使して観ることができた。ツイッター全盛のご時勢だけに、イギリスでのテレビ放送からほとんど間をおかずにほぼリアルタイムで観るのって、実に楽しい。肝心のドラマの中身のほうも私の期待以上の出来だったから、気分はますます盛り上がる。
 それに、3月26日発売のDVDの到着を待っていたら間に合わなかったが、ほぼリアルタイムで観られたおかげで、今回の更新で早くもテレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』について紹介することができた(そもそも、このドラマについて日本語で書かれたものを一日も早く読みたいと思う人はほとんどいないんじゃないかという気もするが、それはまた別の問題)。
 リアルタイムと言えば、ちょうどこのドラマが放送されている最中に、アダムスが脚本を手掛けた『ドクター・フー』の 'Shada' のノベライズが発売された。この本も Amazon.co.ukに予約注文したが、自分の手元にイギリスから本が届く前に、Amazon.com から Kindle 版をダウンロードしたため、発売日には読み始めることができた。タイムラグは全くなし、いやはやすごい世の中になったものよ。
 え、電子書籍版が素早く簡単に手に入るのに、どうしてわざわざ海外から紙の本も取り寄せたのかって?
 その点に関しては、私も紙資源の無駄じゃないかと思わないでもなかった。単純に、コレクターズ・アイテムとして所持しておきたかった、というのも事実だ。でも、本の内容をこのサイトで紹介したり引用したりする時に、電子書籍版だけではページ数を明記できない。ページ数を明記しないと、先に書いた通り、私の訳文や解説の信憑性に正しく疑いを持つ人たたちが原文で確認しようとする時に不便をかけることになる。故に、私としては紙の本も手に入れておかねばならない――もっとも、いちいち英和辞書を引く必要のない電子書籍版を手に入れた以上、今後、紙ベースで Doctor Who: Shada 読むことはまずないだろうな、とも思うけれど。
 この小説版 Doctor Who: Shada については、できれば来月の更新で解説する予定なので、乞うご期待。でもまずはその前に、Doctor Who: Shada を元ネタ(の一つ)として書かれた小説 Dirk Gently's Holistic Detective Agencyテレビ・ドラマ版を、ご紹介します。

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.5.5.  小説版 Doctor Who: Shada

 ギャレス・ロバーツによる小説版 Doctor Who: Shada は、おもしろかった。びっくりするくらいおもしろかった。オーエン・コルファー『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』で感じたもやもやを、一気に吹き飛ばしてくれた。アダムスの新作もどきを読むくらいなら、こっちのほうが絶対いいって!
 文章そのものは、とてもあっさりしている。アダムスっぽい文章を意識的に真似て作り上げたりはしていない。なのに、ストーリーの展開といい設定といい、どこもかしこもアダムスらしさに溢れている。
 どうしてそう感じるのか。その理由は、本作が、アダムスが書いた脚本を機械的にノベライズするのではなく、アダムスの脚本の狙いや仕掛けを丹念に読み解いた上で、丁寧に再構築しているからだと思う。欠点や矛盾があれば細かく補修し、「締め切りのせいで完全無欠な出来ではないけれど時間があればアダムスならきっとこう書いたにちがいない」と確証できるレベルにまで、一つずつ検証に検証を重ねて仕上げられている。
 小説につけられたロバーツ自身によるあとがきを読むと、アダムスの残した脚本と言っても、完成された1つの脚本があるということではなく、アダムスが最初に書いた脚本から、打ち合わせや現場の状況で脚本には訂正や追加が入り、最終的に撮影時に使用された脚本まで、いくつかのヴァージョンが存在しているという。小説版を書く上で、ロバーツはそれら複数の脚本の変更箇所とその理由をいちいちチェックした上で、改悪と思われるものについてはわざと変更前の状態にとどめたりもしたそうな。思わず頭が下がる真摯なお仕事ぶり。私に言わせれば、このあとがきだけでも一読の値打ちは十分にある。
 実際、こう言っちゃなんだが、2012年の今になって 'Shada' を体験するのなら、たとえ1979年にBBCでストが行われずテレビ・ドラマとして完成されたヴァージョンがあったとしても、それを観るよりこの小説を読んだほうがよりストレートに楽しめるかもしれない、という気さえする。脚本の欠陥が上手に補修されているから、ということもあるけど、それより何よりあの当時の特殊撮影の技術で「人の頭に取り付いて思考や知識を吸い取る球体(スフィア)」が視覚化されたとしたら、今となっては目もあてられない代物になっていた可能性が高い。
 だって、するすると空中を滑ってきてぴたっと額にくっつく、とかいう球体だよ? おまけに、破壊しようとすると千々に分かれて小さい球体がいっぱい出来る、っていうんだよ? そんなの絶対、実写じゃなくて読者の想像に任せたほうが無難だって。
 
 にしても、大学生だった時に、ハヤカワ文庫の『ドクター・フー』を読んであまりのつまらなさに頭を抱えたこの私が、よもや『ドクター・フー』のノベライズを英語で読んで心から楽しいと思える日が来ようとは! ただ、これって利口になった証なのかバカになった証なのか、自分でもよく分からんぞ。
 
 気を取り直して今回の更新は、勿論、小説版 Doctor Who: Shada とその著者ギャレス・ロバーツについて。今となって、改めてラッセル・T・デイヴィスとベンジャミン・クックのメール書簡 The Writer's Tale: The Last Chapter でロバーツが登場している箇所を拾い読みしてみると(後ろに索引がついているから調べるのは超簡単)、ちょっとしみじみする。
 それから、テレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』のDVDに収録されていた、パイロット版のエピソードについても追加したので、こちらもよろしく。

追伸/先月、アダムスの公式伝記本 Wish you were here: the Official Biography of Douglas Adams の著者ニック・ウェブ氏が逝去された。詳しいことは分からないけれど、まだ60代だったらしい。ご冥福をお祈りします。

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.6.2.  イギリスのテレビ番組あれこれ

 イギリスのBBCで、2012年5月11日からコメディ・ドラマ Episodes 第2シリーズの放送が始まった。主演はスティーヴン・「ダーク・ジェントリー」・マンガンで、製作者の一人はジミー・ムルヴィル
 こういう固有名詞に過剰反応する日本人は私だけなんじゃないかという気はするが、ともあれ Episodes 第1シリーズは、昨年、「マット・ルブランの元気か〜い?ハリウッド!」という(泣きたくなるような)邦題でWOWOWで放送された。第2シリーズについてもWOWOWで放送予定とのことで、有難い。ただ、WOWOWでの放送は日本語吹き替え版のみで、日本語字幕版はない。なので、第2シリーズは、一足お先に iPlayer + Tunnelbear で観てみることにした。
 ストーリーは、イギリスのテレビ界ではヒット作を連発し、人気と尊敬を勝ち得ている脚本家夫婦のショーンとベヴァリーが、アメリカのテレビ・ネットワークの社長からアメリカでのリメイクを持ちかけられ、あわよくば労せずしてワールドワイドな富と名声を手に入れられるかも、とLAに移ったものの、わがまま社長やわがまま俳優に振り回されて脚本の改悪に次ぐ改悪を強いられる、というもの。昨今、イギリスのめぼしいテレビ・ドラマが次から次へとアメリカでリメイクされているという現状を踏まえて作られた、なかなかきわどい設定のコメディだが、英米のカルチャー・ギャップと資本ギャップが巧く投影されていて、とてもおもしろい。さすがのアメリカも、このコメディだけはリメイクできそうにないしね。
 スティーヴン・マンガンが演じるショーンは、ちょっと気弱な脚本家で、アメリカ側から理不尽な脚本の訂正を求められても、あまり抵抗せず承諾してしまうタイプ。周りの迷惑を顧みず暴走する全体論的探偵ダーク・ジェントリーとは真逆の性格だが、どちらの役にも何の違和感もなくフィットしていて素晴らしい。プロの俳優って凄いよな。
 Episodes 第2シリーズは全9話で、BBCでは今のところ4話まで放送されている。残り5話も大いに楽しみだ。
 
 イギリスのテレビ局は、BBCだけではない。当たり前だが、ITVやチャンネル4といったテレビ局もあって、でも iPlayer が使えないから観られないんだよなあ、と思っていたら、とんでもない、ITVには「ITV Player」が、チャンネル4には「4oD」というサイトがあって、放送から30日以内のほとんどすべての番組をオンデマンドで無料視聴できる、という事実につい最近気が付いた。
 ……時間がいくらあっても足りないじゃないか。
 いろいろ観たくて目移りするも、まずは「4oD」で、テレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』を手掛けたハワード・オーヴァーマンの出世作、Misfits を観る。そう、チャンネル4の「4oD」では、放送から30日以内の番組だけでなく、人気作品は常にサイトに上がっていていつでも観ることができるのだ。勿論、英語字幕も付けられる。本当に何て親切な。
 Misfits の内容については、ウィキペディアで読んで「5人の若者が社会奉仕活動中に雷に打たれ、特殊能力を身につける」話、ということしか知らず、内心「そんな話でよくBAFTAの最優秀ドラマシリーズ部門賞を受賞できたな」と思っていた。が、今回、実際のドラマを観てみて、「5人の若者が社会奉仕活動中に雷に打たれ、特殊能力を身につける」話で間違いはないが、こういう設定から想像するようなアメリカのスーパーヒーローものとは似ても似つかない話に仕上がっていて驚いた。特殊能力があってもどこかズレてて、5人のぱっとしない日常生活がぐだぐだと続いていく様は、確かにすごく新鮮だったし、と同時にこのオフビートなコメディ・センスは、テレビ・ドラマ版『ダーク・ジェントリー』と相通じるものがあるとも思う。特に、オープニング・クレジットのテイストなんか、すごく似てるぞ。
 ただし、Misfits の場合、第1シリーズは全6話だが、「4oD」で観られるのは4話まで。最後まで観たければ、DVDを買うなりレンタルしてください、ということらしい。タダで全部観られないのが残念じゃないと言えば嘘になるが、でも良く出来た仕組みだよな。
 ちなみに、この Misfits もアメリカでのリメイクが決定しているそうな。別にリメイクしたっていいけどさ、でもめぼしい作品は本当に片っ端から漁ってるんだねえ。
 
 そして今週の更新は、3ヶ月ぶりにダグラス・アダムスの「生い立ちの記」を加筆。ラストまで、あともう少しだ。

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.7.7.  朗読版 Doctor Who: Shada

 ここ数日、通勤電車の中で、小説版 Doctor Who: Shada の朗読CDを聴いている。
 正確に言うと、私は Audible.com というアマゾン系列のサイトから音声データをダウンロードしたため、「CD」は所有していない。マニアとしてはコレクションの一つとして買っておくべきじゃないかとも思ったが、送料がかかるし時間もかかる――というのは嘘ではないが本当でもない。実際のところは、私が親会社の Amazon.com の優良顧客(?)だからなのか、Audible.com で好きな2作品を無料で買えるクレジットをプレゼントされたからである。いやあ、タダには勝てないわ。
 しかし、タダで手に入れたとしても、英語の朗読CDを聴いて理解する語学力までもれなくタダで付いてくる訳ではない。そもそも 'Shada' と言えば、私には2003年のオーディオ・ドラマCDで挫折したトラウマがある(詳しくは2007年3月31日付の同コーナーへ)。そんな私が、たとえ小説版 Doctor Who: Shada は楽しく読めたとしても、果たしてその朗読版を(ある程度)楽しく聴けるのだろうか?
 結論から言うと、これが意外と楽しかった。
 というのもこの朗読、一般的な小説の朗読と違って、ドアの開閉とかTARDISの離発着といった効果音があちこちに足されているのだ。さらに、K-9というロボット犬の役だけは、ララ・ウォードではなく、ドラマで実際にこの役の声を担当しているジョン・リーソンが務めている。そういう意味では、朗読というよりラジオ・ドラマのような感じがする。ただし、完全なラジオ・ドラマではないため、2003年製作のオーディオ・ドラマ版 'Shada' のような、登場人物同士による早口の掛け合いはない。
 それでも、2007年当時と比べて、私も少しはリスニング能力が向上したのかも、と思って、オーディオ・ドラマCDのほうをもう一度聴いてみたところ、確かに雲を掴むような分からなさは軽減しているではないか。でも、それって本当に英語が聴き取れるようになったからというより、小説を読んだおかげで誰と誰がどこで何について話しているか分かっているから理解しやすくなっただけ、という気もする。
 ま、そんなことをぐずぐず考えているヒマがあったら、少しでも英語の音に慣れる訓練をしたほうがマシ、ってことだけは確かだけどね。それに、さっき Audible.com の私のアカウントを確認したら、私は「Gold Membership」扱いになっていて、どうも毎月1作品までは無料でダウンロードさせてもらえるらしい。おいおい、Audible.com に実質的にはこれまで一銭も払ってない私が「Gold Membership」扱いでホントにいいの? いいなら、遠慮なくダウンロードしちゃうよ? 何たって、今の私は通勤電車に揺られている時間がえらく長いから、悲しいかなこの手のものを聴く時間だけはたっぷりあるのだ――ただし、ともすると睡眠学習法になるんだけどね。
 
 気を取り直して今回の更新は、ダグラス・アダムスの「生い立ちの記」の最終章、「ギャップ・イヤー」を追加した。
 「ギャップ・イヤー」と言えば、東大が9月入学制に移行するにあたって、3月に高校を卒業した生徒たちが9月に大学に入学するまでの猶予期間を、「ギャップ・ターム」と呼んでいることにものすごい違和感を憶えるのは私だけか? 私としては、「ギャップ・ターム」という言葉に何の違和感を感じない人たちが大学の国際化を目指していること自体、「本当に大丈夫なんだろうか?」と心配になるんだけど、ま、私は東大の卒業生じゃないからいいや(←そういう問題?)。
 
 それから、ダグラス・アダムス関連人物一覧に、イギリスのヤングアダルト小説家、バリ・ライも追加。
 以前、同コーナーにインド系コメディアン、サンジーヴ・バスカーを紹介した時に、バスカーに関する日本語の説明が見つからなくて苦労したが、今回思いがけず彼の名前を日本語で目にすることができた。何がどこでどう繋がっているか、本を開いてみるまで予測がつかないものだなあ。
 
 さらにさらに、現在イギリス各都市を巡回上演中の、『銀河ヒッチハイク・ガイド』ライブツアーの詳しい日程やゲスト出演者のリストも追加。行けるものなら、私は最終日のエディンバラに行きたかった!
 
 エディンバラには行けないけれど、今年も今回の更新の後は例年通り2ヶ月の夏休みに入ります。次回の更新は9月1日。
 それではみなさま、良い夏休みをお過ごしください。私は、まずは Amazon.co.jp から届いたばかりの 「Sherlock」第1シリーズのDVDを堪能することにします(ちょうど一年前の同コーナーでもこのテレビドラマのことで騒いでいるな、私)。
 ちなみにこの第2シリーズは、NHKのBSプレミアムにて2012年7月22日から放送とのこと。私は iPlayer + Tunnelbear で既に3話とも観ているから少しは冷静だが、でも英語じゃ分からなかったところを日本語で確認できるのはとても嬉しいし、待ち遠しいぞ。

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.9.1.  5年ぶりの悪戦苦闘

 今からちょうど5年前、私はたまたま見つけた Science Fiction Audiences: Watching Doctor Who and Star Trek (1995) という本の読解に悪戦苦闘していた。『ドクター・フー』と『スター・トレック』が、SFファンの間でどのように受け入れられたかについて書かれた本だが、数百ある『ドクター・フー』のエピソードの中で、よりにもよってアダムスが脚本を書いた 'City of Death' が大きく取り上げられていたからだ。
 私の場合、どんな英文の読解にも悪戦苦闘はつきものだが、Science Fiction Audiences: Watching Doctor Who and Star Trek が当時の私にとって特につらかったのにはいくつかの理由がある。まず、英文そのものが読みづらい。著者のジョン・タロックが大学教授だからなのか、Amazon.comのレビューでも「アカデミックすぎてあまり一般読者向けじゃない」とか何とか書かれている程に。
 だが、私にとって何より致命的だったのは、'City of Death' も、'City of Death' との比較として取り上げられているクリストファー・ベイリー脚本による 'Kinda' も、2007年8月当時の私は観たことがなかった、ということ。観たことのないテレビ・ドラマ2本を比較検討して書かれた学術論文なんか、英語どころか日本語で読んだってピンとこない。ましてや、その内容がどちらかと言うとアダムスの 'City of Death' に否定的とあっては、読んでいて楽しいはずもない。

 あれから5年。今の私は、勿論、'City of Death' を観たことがある。もう一方の 'Kinda' も、昨年とうとうDVDが発売され、泣く泣く購入して観た(何が悲しいって、'Kinda' のDVDは、「Mara Tales」のタイトルで 'Snakedance' という別のエピソードとセット販売されていることだ。というか、セットでしか買えないということだ。私としては 'Kinda' だけで十分なのに)。そして、Science Fiction Audiences: Watching Doctor Who and Star Trek (1995) の前に、ジョン・タロックが 'City of Death' と 'Kinda' についてより詳しく検証して書いた Doctor Who: The Unfolding Text (1983) という本が、都内のしかるべき場所でしかるべき手続きを取れば閲覧可能なことを知ってしまった。
 いっそ知りたくなかった、と嘆いてみても後の祭り。知ったからには、手に入れて読まざるを得ない。ううううう。
 正直言って、英文の読みづらさという点では、Science Fiction Audiences: Watching Doctor Who and Star Trek 以上だった。'City of Death' に対する評価の低さという点でも、Science Fiction Audiences: Watching Doctor Who and Star Trek 以上。でも、タロック本人がアダムスに直接行ったインタビューとか、「この本でしか読めない」内容がそこかしこに出てくるので、マニアとしてはおさえておくべき1冊であることは確かだ。
 そんなこんなで今回の更新では、Doctor Who: The Unfolding Text の内容を追記するだけにとどまらず、ダグラス・アダムスと『ドクター・フー』との関係について、全面的に書き直すことにした。自分ではそんなつもりはなかったけれど、気付いてみればこの5年ですっかり詳しくなっちゃったしねえ。というか、少なくとも2005年以降の新シリーズに関しては、すっかりファンになっちゃったしねえ。
 ま、『ドクター・フー』新シリーズがこんなにもはっきりとダグラス・アダムス・トリビュートを打ち出している以上、私が気に入るのも当然と言えば当然である。逆に、ジョン・タロックを始め、ダグラス・アダムスの『ドクター・フー』作品が嫌いだとおっしゃっていた『ドクター・フー』旧シリーズからの古参のファンの皆様は、'City of Death' を範として製作されたという新シリーズについて、一体どのような感想をお持ちなのだろう?
 ちなみに、今日からちょうど、スティーヴン・モファット指揮下の『ドクター・フー』第7シリーズの放送が始まる。ふふふ、私も早速 iPlayer + Tunnelbear で観るぞ!

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.10.6.  「SF MASTERWORKS」

 今回の更新では、今年の5月に「SF MASTERWORKS」シリーズの一冊としてイギリスの出版社ゴランツから発売された、小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』に付けられた序文を追加した。
 
 どのような選択基準だったにせよ、『銀河ヒッチハイク・ガイド』が長く読み継がれるべきSF小説の一冊と看做されたのは嬉しい。その気持ちに嘘はない。でも、こんなに凝り固まったマニアの私でさえ、またしても新しい装丁で『銀河ヒッチハイク・ガイド』が出版されると知った時は、「え、何で?」と思った。
 現在、イギリスで一般的に流通しているペーパーバック版『銀河ヒッチハイク・ガイド』の価格は、約5ポンド。それに対し、「SF MASTERWORKS」シリーズのハードカバー版『銀河ヒッチハイク・ガイド』の定価は、約9ポンド。同じテキストに、わざわざ割高な料金を払う人が一体どれだけいるだろう。
 おまけに、「SF MASTERWORKS」で初めて『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読んで気に入って、シリーズの残りの作品も揃えたい、と思ったとしても、このシリーズからは1作目しか出ていない。続きは、パン・ブックスのペーパーバックで買うしかない。となれば、わざわざ割高な本を買うメリットはますます減る。
 買った私が言うのもなんだが、謎だよね。
 ウィキペディアに掲載されていた記事によると、「SF MASTERWORKS」はもともと「名作だけど長年絶版状態にあって一般読者の手に届きにくい作品を再販する」という目的で始まった企画だったらしい。それなら分かる。有名なSF作品でも、あっさり絶版にされてしまうのは日本に限ったことではないだろう。でも、だとしたらますます『銀河ヒッチハイク・ガイド』が選ばれたことが解せなくなる。他の国ならともかく、少なくともイギリス国内においては、『銀河ヒッチハイク・ガイド』くらい「SF MASTERWORKS」シリーズの本来の趣旨に反した作品もないのではないか。
 ま、本来の趣旨を度外視してでも、「SF傑作選と銘打つからには、『銀河ヒッチハイク・ガイド』だけは外せない!」と編集の方に思っていただけたのだ、ということでいいのかな。うん、いいことにしよう。

 で、「SF MASTERWORKS」につけられた、肝心の序文の中身はと言うと、そんなに長くないし、一読したところ、当たり障りのない、ごく無難な内容のように思えるかもしれない。が、それでも、『銀河ヒッチハイク・ガイド』とロバート・シェクリイの『奇蹟の次元』の類似についてはっきりと言及しているという一点で、私にとって絶対に見過ごせない文章となった。
 そう、『銀河ヒッチハイク・ガイド』と『奇蹟の次元』は確かに似ている。でも、似ているからこそ逆に両者の資質の差がはっきりと分かる――というのが、私の『銀河ヒッチハイク・ガイド』考の第1章です。良かったら、お立ち寄りください
 また、この序文でSF評論家グレアム・スライトは、アダムスがロバート・シェクリイを褒めている記録がある("on record")、と書いているんだけど、これって2011年9月にキンドル版でのみ出版された Douglas Adams: The First and Lost Tapes を早くも引用していると思って間違いないのかしら? それとも、私が知らない/忘れているだけで、アダムスが『銀河ヒッチハイク・ガイド』を書く前にシェクリイを読んでいたことを認めるコメントを載せた記事が他にもあったのかしら?
 ものすごい重箱の隅だと分かっちゃいるが、でもシェクリイ関連のことはやはり過剰に気になる。これがマニアの悲しい性、かねえ。
 
 ところで、今回の更新では「SF MASTERWORKS」の序文とは別に、ダグラス・アダムス関連人物としてイギリスの脚本家クリス・チブナルについても新たに追加した。
 チブナルは、先月からイギリスBBCで放送が始まったスティーヴン・モファット指揮下の『ドクター・フー』第7シリーズにも参加していて、私も楽しく拝見している。シリーズ全体が終わっていないので断言できないけれど、少なくともこれまでのところ、前回の第6シリーズよりも、好き。

 それから、今月にドーセット州シャーボーンで開催されることになった、ダグラス・アダムス関連の思いがけない企画についても最新ニュースに追加したので、興味のある方、というか、イギリス在住で参加可能な方は是非ご確認あれ。いやもうほんと、行ける方が羨ましいったらないわ。

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.11.3.  日本版 Kindle Paperwhite 発売

 このコーナーで、Amazon.com で Kindle4を買ったと書いたのが、2011年11月5日。それからわずか1年足らずで、Amazon.co.jp から日本仕様の新製品、Kindle Paperwhite が発売される、と知った時は、内心、「しまった、早まったか」と舌打ちした。おまけに、今回の日本版 Kindle Paperwhite にはあらかじめ英和辞書も搭載されていると知り、「しまった」感はさらに募る。
 でも、思ったより早く高性能の新製品が発売になって悔しい思いをするのは、この種のコンピュータ製品の常とも言える。いつかどこかで見切りをつけて買わないことには、いつまで経っても買えやしない。それに、思い返せばこの1年、Kindle4 のおかげでどれだけ快適に英語のテキストを読めたことか。今回の更新では、ギャレス・ロバーツによる小説版 Doctor Who: Shada のあとがきを追加することにしたが、この本だって Kindle4 がなかったら読み終えるのにもっと時間がかかったはずだ。だからやっぱり、1年前の Kindle4 発売が、私が買うべきタイミングだったんだ、と、強引に考えることにしよう。

 しかし、そういう無理矢理なポジティブ思考では解決しきれない問題もある。それが、Kindle のアカウント設定。
 アメリカの Amazon.com でKindle4 を買うと、その Kindle4 にはあらかじめ私の Amazon.com のアカウントが設定されている。で、Amazon.com のサイトで Kindle 本を買うと、自動的に私の Kindle4 に電子書籍データが送られる、という仕組み。が、Amazon.co.jp にも Kindleストアが出来た今、当然こちらでもKindle 本を買いたいと思うのが人情と言うものだし、当然買えるだろう、と思っていたら、Amazon.co.jp のアカウントで買った電子書籍を Amazon.com アカウントで設定された Kindle4 に送ることはできないらしい。今後は Amazon.co.jp の Kindleストアで買うことにします、というなら、Amazon.com のアカウントと Amazon.co.jp のアカウントを合体させなくてならず、また一度合体してしまうと、今後は Amazon.com のアカウントで買い物できなくなるらしい。
 め、めんどくさい。
 ともあれ、Amazon.co.jp の Kindleストアで売っている電子書籍は、日本語だろうと英語だろうと、最新版の Kindle にしか対応していない、とのこと。何だよ何だよ、1年前に発売されたばかりの機種ですらダメなのかよ、と、反射的に拗ねたくなるが、見方を変えれば、Kindle4を使い続けている限り、私は上記のような Amazon.com/Amazon.co.jp 間のアカウント設定問題を先送りできる、とも言える。
 ふむ。これもやっぱり、「無理矢理なポジティブ思考」かしら?
 
 気を取り直して今回の更新は、先に書いた通り、小説版 Doctor Who: Shadaあとがきの追加。このあとがきについては、2012年5月5日付の同コーナーでも簡単に紹介した通り、著者の「思わず頭が下がる真摯なお仕事ぶり」がよく分かるので、よかったら是非ご一読ください。
 それから、私は気付いていなかったけれど、『銀河ヒッチハイク・ガイド』関連の新しい本が発売されたようなので、ダグラス・アダムス関連の最新ニュースに追加した。情けないことに、私がこの本の存在に気付いたのはつい先日のことで、直ちに Amazon.co.uk に注文したものの、今はまだ私の手元に届いていない――残念ながらこの本は、少なくとも現時点では電子書籍版は発売されていないので、海の向こうから配達されるのを待つしかないのだ。
 にしても、考えてみれば私は Amazon.com、Amazon.co.jp だけじゃなく、Amazon.co.uk のアカウントも持ってるんだよな。そして、紙の本やDVDを買うのに一番よく利用するのが Amazon.co.uk なんだよな。Amazon.com でも Amazon.co.jp でも Amazon.co.uk でも、それぞれのアカウントで電子書籍データが買えて、かつ、一つのKindle に流し込めればいいものを、どうしてそれができないんだろうな……。

このページの先頭に戻る   Topに戻る


2012.12.1.  複雑すぎる人物相関図

 今回の更新では、2011年2月に発売された I was Douglas Adams's Flatmate and Other Encounters with Legends に収録された、ジョン・カンターのインタビューを紹介する。
 
 月に一度の更新頻度になって、これでちょうど丸2年。それまでの週に一度の更新に比べれば随分とペースダウンし、その分、英語に接する時間も減るかと思いきや、このコーナーでもたびたび書いている通り、Kindle とiPlayerTunnelbear と Twitter のおかげで、自分史上かつてないくらいに英語漬けの日々となった。
 これまで、私が敢えて英語で読む/聴く/観るとしたら、それはダグラス・アダムスに直結する内容のものがほとんどだった。アダムスが書いたもの、とか、アダムスについて書いたもの、とか。だから、私が英語で読むか聴くか観るかしたら、それらはそのままこのホームページに反映させることができた。が、とりわけこの1年で、私が英語で読んだり聴いたり観たりしたものは、必ずしも「ダグラス・アダムス関連」とは言えないものが多くなってきた。
 別に、関連づけられないならそれはそれでかまわない。日本語でなら、私は日々、アダムスと関係がなくても読んだり観たりして楽しんでいる。が、英語の、それもイギリス産のものに関しては、ダグラス・アダムスとはまったく何の関係もないと思っていたら、思いがけないところで思いがけないつながりが見つかったりするからややこしい。
 たとえば、BBCのテレビドラマ・シリーズ『SHERLOCK』。2010年10月30日付の同コーナーでも書いた通り、「このドラマのクリエイターは(「リーグ・オブ・ジェントルマン」の一人として映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』のヴォゴン人の声を担当した)マーク・ゲイティスと、現在『ドクター・フー』最新シリーズの製作総指揮を務めるスティーヴン・モファット」であり、準主役のジョン・ワトソンを、映画版『銀河ヒッチハイク・ガイド』でアーサー役を務めたマーティン・フリーマンが演じている。これだけの面々が揃った時点で、私に言わせれば要チェックだし、実際に観たらめちゃくちゃおもしろくて、となると、当然の流れでこのドラマの主演俳優であるベネディクト・カンバーバッチの名前も憶えたけれど、この時点ではベネディクト・カンバーバッチとダグラス・アダムスは何の関係もない。
 が、『SHERLOCK』好きの方からツイッター経由で、この俳優が「Cabin Pressure」というBBCのラジオドラマ・シリーズに出演していること、そしてこのドラマの主要男性キャラクター3人の名前が、ダグラス、アーサー、マーティンだと知らされると――単なる偶然の一致かもしれないけど、このネーミング、何だか妙に『銀河ヒッチハイク・ガイド』を彷彿とさせませんかね?
 で、念のため「Cabin Pressure」についてネット検索したところ、このラジオドラマの脚本家兼アーサー役のジョン・フィネモアは、ケンブリッジ大学でフットライツに所属し、卒業後はラジオやテレビのコメディ番組の脚本を手掛けているが、その中の一つがやはりフットライツ出身のデイヴィッド・ミッチェルとロバート・ウェブによるスケッチ番組『おーい、ミッチェル! はーい、ウェッブ!!』。そして、ミッチェルとウェブの代表作『ピープ・ショー ボクたち妄想族』第3シリーズ第1話で『銀河ヒッチハイク・ガイド』が引用されているのは、以前このホームページで紹介した通りだ。
 さらに言うと、ジョン・フィネモアは、2010年、ロンドン・キルバーンにある「The Good Ship」というパブ兼ライヴハウス兼コメディクラブで、コメディドラマ「Warhorses of Letters」のコペンハーゲン役を演じたことがある。この作品は、2011年にBBCでラジオドラマ化されたが(主演の一人はスティーヴン・フライ。先月の28日から、第2シリーズの放送が始まったばかり)、共同脚本家の一人マリー・フィリップスがダグラス・アダムスの大ファンであることは、これまた以前このホームページで紹介した通り。
 えーーーっと。
 ここまでで、私以外の誰か、話の流れについてきてます? 最近、自分でも自分の立ち位置がよく分からなくなるんですが??
 にもかかわらず、話はこれで終わりではない。つい先日、また別の『SHERLOCK』好きの方からツイッター経由で、ベネディクト・カンバーバッチがBBCのコメディドラマ「Fortysomething」(2003年)に出演していることを教えてもらった。このドラマ、主演・監督はヒュー・ローリーで、スティーヴン・フライもゲスト出演している。この二人の名前だけでも十分要チェック扱いしておかしくないドラマだが、IMDbでさらに詳しくスタッフリストを確認してところ、そこには何と「スクリプト・コンサルタント」という肩書きでジョン・カンターの名前があった!

 ……という訳で、今回の更新は、若き日のダグラス・アダムスとフラットを共有していた友人、ジョン・カンターの話と相成ったんだが、最後までこの話の流れについてきてくれた人、誰か一人でも残っているのかしら? ちなみに、ベネディクト・カンバーバッチが次に出演するラジオドラマ「Neverwhere」の原作者はニール・ゲイマンで、監督・脚本はダーク・マッグスだったりもするんだけど??
 
 ともあれ、今回の更新を最後に、例年通り二ヶ月間の冬休みに入ります。今から2週間後には、マーティン・フリーマンがビルボ・バギンズ役を務める映画『ホビット 思いがけない冒険』の日本公開も始まるし、これはこれで私の頭の中がまた不必要にややこしくなりそうな、愉しい予感がする――が、まずはその前に、このホームページの更新を終えたその足で、これまたツイッター経由で知り合った方から送っていただいた招待券を握りしめ、本日12月1日、東京・六本木ヒルズで開催される『ホビット 思いがけない冒険』ジャパン・プレミアのレッド・カーペット観覧に行ってきます!

このページの先頭に戻る   Topに戻る