目次
2020.2.1. アーサー・デントから王様へ 2020.3.7. テリー・ジョーンズ追悼 2020.4.4. Stephen Fry's 7 Deadly Sins 2020.5.2. 在宅勤務の日々 2020.6.6. 在宅勤務の日々の終わり? 2020.7.4. #30daybookchallenge 2020.9.5. The Hitchhiker's Guide to the Future 2020.10.3. 朝日新聞一面デビュー 2020.11.7. ブダペストの思い出、再び 2020.12.5. Last Chance to See を聴く
今さらながら、あけましておめでとうございます。2020年、という響きに慣れないまま、気が付けばもう丸1ヶ月が過ぎていた……。
2020年、私が最初に映画館で観た映画は『ダウントン・アビー』だった。イギリスの貴族の館を舞台にした、イギリスの大人気テレビシリーズの劇場版である。
日本でもNHKでテレビ放送されたからご覧になった方も多いと思うし、私自身、NHKでテレビ放送されたから観た。館の主であるお貴族さまご一家から、そんなお貴族さまご一家にお仕えする下々の奉公人まで、大勢の登場人物が上手に描き分けられている上に、次から次へとさまざまな事件が起こるので、退屈することなく程よく楽しい。
……という書き方からもお分かりの通り、全シリーズを観たとは言え、私はこのドラマにたいしてハマりはしなかった。比較するのもなんだけど、同時代のイギリス・ヨークシャーのお貴族さまが主演のテレビドラマなら『バレーズ・エンド』のほうが断然好きだ。
故に、NHKでテレビ放送された時に日本語吹き替えで観ただけで十分満足だったし、ドラマシリーズのその後を描く劇場版が日本公開になり、映画館での上映が日本語字幕ではなく日本語吹き替え版ばかりだと気付いた時も、たいして不満ではなかった。それどころか、「テレビドラマを日本語吹き替えで観たんだから、劇場版も吹き替えでもいいかも?」と思っていたくらいだ。
が、たまたま私に都合のいい上映場所/上映時間が日本語字幕版だったため、「ま、字幕でもいいか?」と、軽いノリで映画館に向かったところ――映画の冒頭、オープニング・クレジットに「Simon Jones」の名前を見つけて飛び上がった。
えええええ、ラジオドラマ版&テレビドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』のアーサー・デントことサイモン・ジョーンズが、劇場版『ダウントン・アビー』に出演していなんて! サイモン・ジョーンズが今も現役で俳優の仕事をしていることは知ってたけど日本で公開されるような映画には出てなかったから、私としたことが完全に油断していたあああ!
テレビドラマシリーズ『ダウントン・アビー』に出演していないサイモン・ジョーンズが劇場版『ダウントン・アビー』で一体何の役で出演しているのか、と、それっぽい年齢の男性が出てくるたびに目を皿のようにして観ていると、何と何と、ダウントン・アビーの館を訪問する国王陛下ジョージ五世の役ではありませんか。
齢を重ねて、テレビドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』のアーサー・デントの姿とは随分お変わりになられたけれど、その声は、ラジオドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』のアーサー・デントとほとんど変わっていない。ああ、日本語字幕版で観て本当に良かった。うっかり吹き替え版で観ていたら、サイモン・ジョーンズの声が聴けないところだった。
映画のパンフレットによると、脚本家のジュリアン・フェローズはロイヤル・カップルを演じた「サイモン・ジョーンズとジェラルディン・ジェームズの演技が素晴らしい」と語っている。そのせいか、ジュリアン・フェローズが手掛ける新しいテレビドラマ The Gilded Age の出演者リストにもサイモン・ジョーンズが名を連ねていた。おおう、こちらも楽しみだ。
そして今回の更新は、在野のダグラス・アダムス・ファンによるエッセイ集 You and 42 の続きと、「Topics」欄にイギリスのクレイアニメーション『ひつじのショーン UFOフィーバー!』を追加した。
さらに、友人が手に入れて送ってくれたポルトガル語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』も、「Collection List」に加えた。このポルトガル語訳、装丁が映画版『銀河ヒッチハイク・ガイド』をモチーフにしていて素晴らしくかわいい上に、お揃いの栞まで付いているというこだわりよう。2005年に映画がポルトガルで上映された時、興行収入はお世辞にも良いとは言えなかったが、年月と共にじわじわと人気が出て来たのかな?
それから、毎年恒例の「My Profile」欄に「2019年のマイ・ベスト」も書き足したので、こちらもよろしく。追伸/ここまで書き上げた後で、テリー・ジョーンズの訃報を知った。私にとっては、モンティ・パイソンの一メンバーというだけでなく、生前のアダムスと親しい友人で、かつ『銀河ヒッチハイク・ガイド』への序文を何度も書いてくれた人、だった。ご冥福をお祈りします。
2020年1月21日、テリー・ジョーンズが亡くなった。
モンティ・パイソンのメンバーの一人で、映画監督で、作家で、歴史学者。そして何より、ダグラス・アダムスの親しい友人。1997年には、トラブル続きだったコンピュータ・ゲーム『宇宙船タイタニック』のノベライズを引き受けている。アダムスの死後、葬儀の場で弔辞を読み、『銀河ヒッチハイク・ガイド』25周年特別版ハードカバーや、『宇宙の果てのレストラン』30周年特別版ペーパーバックに序文を寄せた。
……といった類のことは、勿論、よく知っていたけれど、でもアダムスの父親違いの弟、ジェイムズ・スリフトが、ジョーンズ死去の翌日にツイートした文章には驚かされた。2001年にアダムスがカリフォルニア州サンタバーバラで急死した時、テリー・ジョーンズは自ら飛行機に乗って駆けつけ、近くのホテルに宿泊し、動揺しているであろうアダムスの家族がちゃんと食事ができているか、毎日様子を確認しに来てくれたのだという。何という心配り。なかなかできることじゃないよな。
テリー・ジョーンズが監督/脚本/出演を務めた2015年公開の映画『ミラクル・ニール!』は、友達に誘ってもらって「第8回したまちコメディ映画祭 in 台東」の日本最速上映会で観ることができた。半年以上経ってから一般公開された時にも映画館に観に行ったけれど、随所で大きな笑い声が起こるような最速上映会という場であの映画を堪能することができたのは、本当にラッキーだったと思う。
そしてまさに今、この文章を書きながら『ミラクル・ニール!』をググっていて、テリー・ジョーンズのインタビュー記事を見つけた。撮影が始まったのは2014年だけど、ジョーンズはこの映画の脚本を随分前に書き上げていて、生前のアダムスにも見せていたらしい。"Before Douglas Adams died, he looked over the script and he said that Dennis the Dog's scenes were the funniest scenes..."。何と。
アダムスが気に入ったという犬のデニス、実際の映画ではロビン・ウィリアムズが声を担当している。2014年8月に亡くなったウィリアムズにとって、これが俳優としての最後の出演作となった。素晴らしい俳優で、素晴らしい作品をたくさん遺してくれたけれど、俳優人生の掉尾を犬のデニスで飾るのも彼らしくいいんじゃかな。
ともあれ、『ミラクル・ニール!』、近いうちにまた観直さなくては。
そして今回の更新は、例によって在野のダグラス・アダムス・ファンによるエッセイ集、You and 42 の続きに加え、Topics欄の『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』を加筆した。主要登場人物が子供の頃から『銀河ヒッチハイク・ガイド』のファンだっただなんて、そういう大事なことは第7シリーズまで引っ張らずにさっさとオープンしてほしかったわ。
今年の1月半ばから、スティーヴン・フライの新作ポッドキャスト「Stephen Fry's 7 Deadly Sins」の配信が始まった。世の中は悪くなる一方でムカつくことばかり、ネット上にはさまざまな解決策やさまざまな弾劾が飛び交っているけれど、本当に悪いのは他でもない「私」なのではないか――という観点から、7 Deadly Sins、キリスト教で言うところのいわゆる「七つの大罪」を現在の視点で考察してみる、というもので、最初のイントロダクションの回と最後の総括、全9回のシリーズになっている。
正直、私のリスニング能力では、一度や二度聴いたくらいでは話の内容は半分も理解できない。が、それでもとびきり魅力的なスティーヴン・フライの語り口につられるようにして、日々の通勤電車の中で聴いていた。週に一度のペースで新しい回が配信され、最終回が配信されたのは3月9日だったが、さて世の中を少しでも良くするために必要なものとしてスティーヴン・フライが最終的にたどり着いた「解決(の一つ)」が「笑い」だった。その上で、最後の最後で飛び出した彼の発言を意訳すると、「答えというなら、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。ダグラス・アダムスが「生命と宇宙と万物についての究極の答え」は「42」だと明かしていますから。そう、本当に大事なのは「究極の答え」ではなく「究極の問い」のほうでした」
いやはや、この箇所を最初に聴いていた時、私は通勤電車の中だったにもかかわらず、あと少しで「よっしゃあああ!」と叫んで飛び上がるところだった。ほんと、危ないったらありゃしない。
スティーヴン・フライは生前のアダムスと個人的に親しかったから、彼の発言に『銀河ヒッチハイク・ガイド』が引用されること自体は不思議じゃない。でも、「七つの大罪」というタイトルのポッドキャスト・シリーズにまで出てくるとは全く想像していなかった。油断大敵、これだからダグラス・アダムス関係者各位へのストーキングは止められないわ。
そして今回の更新は、例によって在野のダグラス・アダムス・ファンによるエッセイ集、You and 42 の続きだが、今回でようようやっと最後のエッセイまでたどり着いた。
改めて確認してみたところ、この本の紹介を開始したのは2018年11月3日だったから、丸1年以上かかったことになる。長くかかったけど、意訳を通り越して手前勝手な超訳ではあるものの、自分なりに読み込むことができて良かった。
先月上旬から、新型コロナウィルス感染防止のため、勤務先から在宅勤務を命じられている。5月6日まで、と言われていたが、ゴールデンウィークに入る直前になって在宅勤務のさらなる延長を告げるメールが届いた。今度は「当面の間」だそうな。
通勤時間の長い私としては願ったり叶ったりである。毎日約1時間も通勤電車に乗り続けるという「新型コロナウイルス型ロシアン・ルーレット」から一抜けできた上、一人暮らしの自宅はすこぶる快適。外出が禁じられたとしても、買ったのに読んでない本/観てないDVDはごまんとある。この機会を利用して、せいぜい趣味に走らせてもらおうじゃないの。
と、思った私が甘かった。
確かに、私は相当に恵まれた在宅勤務者だ。正規雇用だから、少なくとも当面、給与や待遇は保証されている。かつ、突然の在宅勤務命令だったため、私が自宅でできる業務が限られていることを上司や勤務先のほうでも承知している。この立場が、今の日本ではどれだけ垂涎の的か、私だって自覚している――が、それでもなお、油断していると突然、強烈な不安に襲われる。新型コロナウイルスの潜伏期間は約2週間、今は無症状でも実はとっくに感染していて、今日にも、明日にも、症状が出始めたらどうしよう。
3月中は、中国の武漢やアメリカのニューヨークの病院がパンクして患者が廊下で寝かされている映像をテレビで見て震え上がっていた。が、4月に入り、今なおPCR検査に至るまでの道のりが異様に険しい日本の現状と比べると、「PCR検査を受けられて新型コロナウイルスに感染していると認められ、廊下だろうと何だろうと医療スタッフの監視下においてもらえるとは何て羨ましい」とさえ思えてくる。
通勤電車に乗り続ける日々から約1ヶ月が経ち、とりあえず今のところ、私は無症状である。勿論、電車には乗らなくても、日常品の買い物はするし、宅配物は受け取るしで、感染のリスクは常にある。ただ、感染を怖がり、経済の破綻を怖がりすぎて気持ちが落ち込み、そのせいで現在の体調を崩してしまっては元も子もない。そうならないためには、コンスタントに気分転換する必要がある。そして、手っ取り早い気分転換には、集中力が途切れがちな小難しい本や英文読解は向いてない。
というわけで、このホームページを立ち上げてこのかた自宅にいる時間がもっとも長い一ヶ月だったのにもかかわらず、なかなかホームページ更新の準備に着手できなかった。でも、重すぎる腰をあげてようやく取り組むことにした、若き日のダグラス・アダムスが書いた『ドクター・フー』のシノプシス原稿のおもしろいことおもしろいこと。こんなにもおもしろいものを、こんなにも長らく放置していて申し訳ない!
日本における新型コロナウイルスの感染拡大は、ひとまずおさまりつつあるらしい。
単にPCR検査を拒否しているから新規患者が出てないだけで、統計に上がってこない感染者はもっと多いんじゃないの、と私は思うが、ともあれ私の勤務先から、6月1日以降は通勤と在宅勤務が半々になるよう各部署で調整して出勤するよう指示が出た。というわけで、今の私は2日に一度のペースで片道1時間の通勤電車という、新型コロナウイルス感染のロシアンルーレットを体験している。私の感染リスクを少しでも下げるために、私の勤務先以外ではどうかこの先も向こう当分テレワークを実行してくれますように、と祈るしかない。
その一方で、かく言う私自身、前回の更新からの一ヶ月の間に随分と緊張がゆるんできたのも確かだ。4月中は、外で人とすれ違うのも恐ろしかったのに、5月に入るとかなり無頓着になっていた気がする。そしてそんな中で迎えた、2020年5月25日は――#stayinfortowelday
5月25日は、ダグラス・アダムスを追悼する「タオル・デー」。毎年、世界のあちこちでタオルを掲げた集団イベントが開催されているけれど、今年のモットーは「オンラインでお祝いしましょう」。
正直、私個人に限って言えば毎年人と集ってイベントを行っている訳ではないので、やることはいつもの年と変わりない(苦笑)。でも、SNSを通じて世界中の人とこういうハッシュタグで一丸となれるのは、やっぱりいいね。今回の更新は、前回アップした『ドクター・フー』のシノプシス原稿、'Doctor Who and The Perfect Planet' に続き、また別の『ドクター・フー』のシノプシス原稿を紹介する。
前回の 'Doctor Who and The Perfect Planet' は、無名だった頃のアダムスが『ドクター・フー』のオリジナル脚本を依頼されて最初に書き上げたシノプシスだった。実際にテレビドラマとして出来上がった 'The Pirate Planet' と比べてみると、その違いは一目瞭然、1970年代後半のイギリスのテレビドラマでは技術的にも予算的にも映像化できるはずもない箇所が見事に変更されている――予算のことを頭の片隅において脚本を書くようでは脚本家として三流だ、というべきか、予算のことを度外視して脚本を書くようでは脚本家として三流だ、というべきか、さてどちらが正解でしょう?
そして今回追加するのは、映画版『ドクター・フー』の企画に向けて書かれたシノプシス。初めて『ドクター・フー』のシノプシス原稿を書いた数年前と比べると、そりゃ少しは技術革新もあっただろうし、映画用だけに少しは予算の規模拡大も見込めただろうが、それでも「キューブリック」という固有名詞にずっこけたのは私だけではないと思うぞ。
5月末、ツイッター経由で「30日読書チャレンジ(#30daybookchallenge)」という企画を知った。
1日1冊、お題に沿った本をあげていくというものらしいが、その他の細かい規則は不明。そこで、「毎日必ず1冊ずつツイート」「同じ本は選ばない」という「マイルール」を設定し、6月1日から始めて6月30日に無事完遂した。
が、しかし。「30日読書チャレンジ」の画像で具体的な「お題」を見てもらえればお分かりの通り、私の場合、30のお題に対する回答の多くが「『銀河ヒッチハイク・ガイド』で決まり!」だったりする。それではゲームとしておもしろくないから敢えて「同じ本は選ばない」というマイルールを設定して臨んだのだが、やはり自分の中で不満は残った。
ということで、今度は逆に、「『銀河ヒッチハイク・ガイド』やダグラス・アダムス関連本を最優先で選んで30冊を埋める」に挑戦してみたいと思う。他ならぬこのホームページのこのページでなら、それも大いにアリってものでしょ。
それでは、いざ挑戦。Day 1:シリーズ本の中のお気に入り
『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズの『銀河ヒッチハイク・ガイド』。
Day 2: 好きな作家のお気に入りの本
アダムスが好きだと言っていた、イーヴリン・ウォー『一握の塵』。
Day 3: 読み終えなかった本
ジェイムズ・グリック『カオス―新しい科学をつくる』。アダムスが絶賛してたけど、全然読めてない……。
Day 4: あなたが覚えている子供の頃に読んだ本
フランシス・ホジソン・バーネット『小公女』。私のイギリス贔屓のきっかけになったような気がする。
Day 5: お気に入りの古典/名作
『銀河ヒッチハイク・ガイド』。きっぱり。
Day 6: あなたを打ちのめした本
『私立探偵ダーク・ジェントリー』。日本語訳が出る前に初めて読んで、あまりに意味がわからなくて打ちのめされた。
Day 7: ロードトリップのお供にベストなオーディオブック
ラジオドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』。
Day 8: おすすめのシリーズ
『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズ。
Day 9: 贈り物として渡したくなるお気に入りの一冊
『これが見納め 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』。
Day 10: 読めば幸せで涙が出る本
You and 42。世界には私と同じような『銀河ヒッチハイク・ガイド』ファンがたくさんいる、私は孤独じゃない!
Day 11: 一緒にディナー/一杯飲みたいキャラクター
『銀河ヒッチハイク・ガイド』のアーサー・デント。
Day 12: 嫌いな”人気”本
「嫌い」というほどでもないけれど、敢えて言うならオーエン・コルファーの『アルテミス・ファウル』シリーズかなあ。
Day 13: タイトルに色の入った本
The Long Dark Tea-Time of the Soul。ちょっと強引だけど、'dark'も「色」に入れてください。
Day 14: 新解釈版のおとぎ話
……これはさすがにパス。
Day 15: 読めば悲しさで泣いてしまう本
The Salmon of Doubt。これでおしまいというのがつらい。
Day 16: 二回以上読んでいる本
『銀河ヒッチハイク・ガイド』。
Day 17: タイトルに人の名前が入っている本
『私立探偵ダーク・ジェントリー』。
Day 18: あなたの好きな著者が故人である本
『銀河ヒッチハイク・ガイド』。
Day 19: ナレーターの声が好きなオーディオブック
ラジオドラマ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』。
Day 20: 物語の語り手が信頼できない本
グレアム・チャップマンの自伝、A Liar's Autobiography 。
Day 21: とても好きなアンソロジー本
The Anthology at the End of the Universe: Leading Science Fiction Authors on Douglas Adams' Hitchhiker's Guide to the Galaxy.
Day 22: LGBTQであるラブストーリー本
……これもさすがにパス。
Day 23: 暗記している(本の)一節
『銀河ヒッチハイク・ガイド』。
Day 24: 二人以上の著者が共著した本
『これが見納め 絶滅危惧の生きものたち、最後の光景』。
Day 25: 実は好きな作中の悪役
『 銀河ヒッチハイク・ガイド』のヴォゴン人。
Day 26: あなたおすすめの伝記
ニール・ゲイマンによるダグラス・アダムスの伝記。
Day 27: 毎年読んでしまう本
『銀河ヒッチハイク・ガイド』
Day 28: まだ読んでないけど読みたいと思っている古典/名作
ジェイムズ・グリック『カオス―新しい科学をつくる』。まだあきらめてない、というか。
Day 29: 気に入っている本の表紙
ポルトガル語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』の表紙はかなり気に入っている。
Day 30: 今まさに読んでいる本
ジェム・ロバーツの The Frood: The Authorised and Very Official History of Douglas Adams & The Hitchhiker's Guide to the Galaxy。前にも一度読んだけど、電子書籍版だったせいで読みながらちゃんとメモをとらなかったんだよな……。以上!
……気を取り直して今回の更新では、ラジオドラマ『銀河ヒッチハイク・ガイド』42周年を記念して出版されたオリジナル脚本に添えられた、サイモン・ジョーンズによる新しい序文を追加した。
この序文の中で、サイモン・ジョーンズは『銀河ヒッチハイク・ガイド』のファンと交流した時のことについてこう書いている。「『銀河ヒッチハイク・ガイド』のファンたちはいかなる時も礼儀正しい」。サイモン・ジョーンズ本人にそう断言してもらえるなんて、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のファンの一人としてすごく誇らしい。たとえ私自身はこれまで一度もその手のイベントに参加したことがないとしても。さて、今年もまた2ヶ月間の夏休みに入ります。次回の更新は9月5日。新型コロナウイルス感染予防で今年の夏は自宅巣篭もりを余儀なくされると思うので、その分、例年以上に頑張ってホームページ更新準備をしたいと思ってはいるけれど、はてさてどうなりますことか。
2020.9.5. The Hitchhiker's Guide to the Future
職場の同僚でアラサー女子の派遣社員さんが、英会話スクールに通って英語の勉強しているという。今の職場では英語を使う必要はほとんどないが(何せ私でも務まっているくらいだ)、次の転職先を見据えて頑張っているのかもしれない。で、自分の英語力がどの程度のレベルかを確認するため、毎年TOEICを受験していて、来月も受験するそうな。
えらいなあ、正社員の座にあぐらをかいている私とは志の高さが違うなあ――と、呑気に感心していたら、「一緒に受験しましょうよ、そのほうが張り合いが出るし」といきなり誘われて泡を食った。何が悲しゅうて、6000円も払ってかかなくていい恥をかかねばならんのか。相手には私が大学で英文学を専攻していたのがバレているだけに、シャレにならない。
なぜ最初から「恥をかく」と決めつけるのか、恥をかきたくなければちゃんとTOEICの試験勉強をすればいいじゃないか、とのご意見もあろう。実際、それこそが彼女の言う「張り合い」だ。お互いへのライバル心があれば嫌が応にも日々の勉強に熱が入るはず、という理屈は正しいかもしれないが、しかし……。
そりゃ私だって、英語のリスニング能力やリーディング能力が上がればいいなと漫然とは思う。けれど、私が聴いて理解したいと思うのは、TOEICの試験に出てくるようなビジネス英語ではなく、2020年になってついに発売された、The Hitchhiker's Guide to the Future に出てくるダグラス・アダムス本人の言葉なのだ。英語のリスニングをするにしても、TOEICの試験対策CDではなく、The Hitchhiker's Guide to the Future をヘビロテするほうがずっといい。一度でさくっと聴き取れない私が言うのもなんだけど、このラジオ番組内でのアダムスの語りときたら、信じられないほど的確で愉快なのだ。この番組を聴いただけで、かつてニール・ゲイマンがダグラス・アダムス記念講演の中で「ダグラスは、「作家(writer)」ではなく「説明家(explainer)」だ」と言っていたのがすごく腑に落ちる。
勿論、同僚の派遣社員さんにはダグラス・アダムス云々という話は一切せず、「いやあ、今から試験勉強する根性なんてありませんよ」とか何とか言ってお茶を濁して終わらせた。職場での布教活動(?)は、余計なトラブルの元だし。
それにしても。英語は英語でもビジネス英語には関心がありません、と私が言うと、かつては周囲から手のつけられない変人扱いされて終わりだった。が、昨今では、我ながら何だかひどく傲慢な発言に思える。貧困化が止まらない今の日本において、娯楽や気分転換以上の熱意をもって仕事やキャリアアップとは何の関係もないことにうつつを抜かすこと自体、贅沢で特権階級的なものになりつつあるということだろうか……?ともあれ今回の更新は、言うまでもなく The Hitchhiker's Guide to the Future の紹介。BBCラジオ4で最初に放送されたのは2000年だから、今から20年前くらい前のことになる。当時、iPhoneはおろかiPadさえまだ発売されてなかったことを踏まえて聴くと、アダムスの先見性に改めて脱帽するしかない。
前回の更新から2日後の9月7日(月)、朝日新聞の朝刊一面にダグラス・アダムスの名前を見つけて飛び上がった。
「折々のことば」と題して、鷲田清一氏がさまざまな人の発言や文章を紹介するコーナー。一面の左隅という、「天声人語」を読み終えると自動的に目に入る好位置にあるため、小さい囲み記事ながらそのインパクトは絶大だ。こんなにも大勢の人の目に触れるところで『銀河ヒッチハイク・ガイド』が紹介される日が来ようとは、ありがたすぎて泣けてくる。
写真ではわざと記事の一部だけを載せたが、文章はさらにこう続く。「科学だけではない。働くこと、いやそもそも生きることも楽しさがベースにないと。」いやほんと、おっしゃる通り。
この記事を書いた鷲田清一氏について、私はこれまで全く存じ上げなかったけれど、ウィキペディアによると、京都の生まれで臨床哲学とか倫理学が専門の哲学家、京都大学を卒業し、大阪大学の総長まで務められたそうな。ということは関西弁でお話になるのかな、と思ってYouTubeで検索してみたら、講演やら対談やらの映像が出るわ出るわ、自宅にいながらにして簡単に調べがついた(にしても、「せいいち」じゃなくて「きよかず」だったのか……)。つくづく便利な世の中だ。
朝日新聞一面で『銀河ヒッチハイク・ガイド』を取り上げていただいたせめてものお礼に(?)、近いうちに鷲田清一氏の著作を読んでみようと思う。ウィキペディアで紹介されている著作でもかなりの冊数だが、哲学の初心者が初めて手に取るなら『哲学の使い方』(岩波新書)あたりが無難だろうか。一番興味をひかれたのは、『平熱の京都 哲学者の都市案内』(講談社)だったけど。気を取り直して今回の更新は、CD4枚組だったThe Hitchhiker's Guide to the Futureのうち、残っていた最後の1枚分の要約を追加した。
さらに、ニール・ゲイマンとクリス・リデル共作によるイラストエッセイ本 Art Matters から、ダグラス・アダムスの言葉が引用されているエッセイ、"Why Our Future Depends on Libraries, Reading and Daydreaming" も紹介する。以前、ウェブ版ガーディアンに掲載されていたのを読んだことがあったが、書籍化されていたことに気付いたのは割と最近だった。
昨年夏、私は一人、ウィーンとブダペストを能天気に観光旅行していた。そして、2019年9月7日付の同コーナーでも書いた通り、ハンガリー語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』を手に入れようとして果たせなかった。
我がことながら、あの旅行がたった1年ほど前のことだったなんて信じられない。一時は収束に向かったかに思われた欧州での新型コロナウイルスの感染は再び急増し、多くの国でロックダウンが再開された。それだけでも大変なのに、ウィーンではつい先日、複数箇所で同時に銃が乱射されるというテロ事件まで起こった。あああああ。
ほんの1年前までは、エコノミークラスに12時間もすし詰めになって日本からウィーンへ渡航することも、2等車に2時間もすし詰めになってウィーンからブダペストへ電車移動することも、ごく普通のことだった。でも、これから先、一体何年待てば、これまでのような「ごく普通」を取り戻せるのだろう……?が、しかし。このように人の移動が厳しく制限される非常時にあってなお、人から人へ、モノの流れは途切れることなく続いている。何が言いたいかというと、
見よ、これがスイス在住の友人がハンガリー在住の友人を介して手に入れ、日本の私のもとに送ってくれた、ハンガリー語訳『銀河ヒッチハイク・ガイド』だ!
ふふふ、すごいでしょ、ありがたいでしょ? このご恩に少しでも報いるために、一字も読めないハンガリー語のテキストを無理やり目で追ってみると、あら不思議、こんなにも読めなくてもわかるところはわかる――ふむふむ、ハンガリー語で 'none at all' は 'semekkora' っていうんだね。でも、文章の位置によって語尾が変化するのね。ううむ、噂違わずハンガリー語習得って難易度高そう……。気を取り直して今回の更新だが、久しぶりにダグラス・アダムス関連から離れ、ものすごく久しぶりにアントニオ・ガデス関連の追加となる。イギリスのロイヤル・バレエ団で長年プリンシパルとして活躍した後、現在はイングランド・ナショナル・バレエの芸術監督兼リード・ブリンシパルを務めているタマラ・ロホが、ガデスの「カルメン」の舞台について書いたエッセイを紹介。
そもそもバレエに詳しくない上に、スペイン語で書かれたエッセイに添えられていた英語訳からの翻訳なので、いつものダグラス・アダムス関連のエッセイ以上に原文の意図を正しく汲み取れていない可能性が高いけど、あくまで参考用ということでご容赦ください。
2020.12.5. Last Chance to See を聴く
ダグラス・アダムスとマーク・カーワディンの共著『これが見納め 絶滅危惧の動物たち、最後の光景』は、1989年にラジオ番組として放送された Last Chance to See 全6話に基づいて書かれている。
という事実は知っていても、これまでこのラジオ番組そのものは聴くことができなかった。せいぜい2004年に発売された3枚組CDセット「Douglas Adams at the BBC」に収録された断片を拝聴するくらいのものだったのに、今年3月から突如として各種配信サービスで聴くことができるようになった――それも、Last Chance to See を始めるきっかけとなった、アイアイを探しにマダガスカルまで行った時に製作された、パイロット版まで含めて。
こんな音源が残っているならさっさと公開してくれればいいものを、とか、配信サービスは便利だけどサービスが終了した時に備えてCDでも売ってくれればいいのに、とか、あれこれ思うところもあるけれど、とにかくこれまでは聴けなかったものが聴けるのは本当にありがたい。聴いてみるまでは、絶滅危惧の動物たちに会いに世界各地を旅するドキュメンタリーを映像ではなく音声でやっても何が何だかわからないじゃないの、という気もしていたが、いざ聴いてみると、野生の動物の鳴き声やら、空港での係員とのやり取りやら、テキストでは伝えようのない臨場感が確かにあった。ただし、彼らが出会った動物たちの様子を言葉で説明されてもいまいちピンとこないので、その辺りは『これが見納め 絶滅危惧の動物たち、最後の光景』に挿入されたカラー写真を見て補う必要もあったりする。
という訳で、ラジオ番組を踏まえながら久しぶりに『これが見納め 絶滅危惧の動物たち、最後の光景』を読み返してみて、ラジオ用のナレーションを転用しつつも上手に書き直していることに改めて感心した。当時から既に30年もの年月が経過していて、それでもなお内容が古びている気は全くしない。
ただ、旅の準備のためマーク・カーワディンが「テレックスを送っていた」(p. 14)という記述には、さすがに強烈に時代の変化を感じずにはいられなかった。何と、ファックスですらなかったのか!
あと、アダムスたちご一向がキレてしまったバリのデンパサール国際空港は、2013年にリニューアルされている。ウェブ上の写真を見る限り、アダムスが体験したような混沌はすっかり過去のことになったようだ。何よりである。今回の更新は、言うまでもなく「これが見納め」コーナーの全面改訂。次回の更新は、2ヶ月の冬休み明けの2021年2月6日を予定している。
2020年に始まった新型コロナウイルス感染は、世界のあちこちで一時的におさまったかに見えてもまたぶり返している。気軽に海外旅行できる日が来るのは、日本政府が何と言おうと、はるか先のことになるだろう。それでも、2021年が少しでもマシな年になることを祈っている。