Art Matters : Because Your Imagination Can Change the World

 以下は、2018年9月6日に出版された、作家ニール・ゲイマンと画家クリス・リデルの共作によるイラストエッセイ Art Matters: Because Your Imagination Can Change the World に収録された、"Why Our Future Depends on Librabies, Reading and Daydreaming" のテキスト部分の抄訳である。ただし、訳したのが素人の私なので、少なからぬ誤訳を含んでいる可能性が高い。そのため、この訳はあくまで参考程度にとどめて、全貌をきちんと知りたい方は、必ずオリジナルにあたってくださるようお願いする。


"Why Our Future Depends on Librabies, Reading and Daydreaming"

 フィクションを読むこと、楽しみのための読書をすることは、私たちにできるもっとも重要なことだと提言したいと思います。みなさんに向けて抗弁します。図書館や司書がいかなるものかを理解してもらい、その両方を残していくために。

 私が本を読む人々、とりわけフィクションを読む人々や、読書への愛を促進してくれたり、読書の場を提供してくれる図書館や司書に関心を持っているのは当然のことです。何しろ私は作家ですから。でも、作家として以上に、読者としてもっともっと強い関心を寄せています。読書をすれば、すべてが変わるからです。

 人々がお互いを理解できなければ、アイディアを交換することも、コミュニケーションすることもできません。子供の言語能力を高める一番簡単な方法は、読み聞かせをすることです。そして、読書が楽しい行為であることを示してあげることです。

 私は、子供に読ませて悪い本などないと考えています。そんなのはたわごとで、俗物根性で、愚かです。子供たちには、読書のハシゴに上がらせてあげる必要があります。どんな本だろうと読んで楽しいと思えるなら、子供たちが読み書きのハシゴを一段ずつ上がっていく助けになります。

 本を読んでいるうち、あなたはこの世界で自分の道を切り開いていく上で極めて重要なことに気づくでしょう。すなわち、「世界はこうあらねばならぬというものではない」。物事は変えられるのです。

 フィクションは「共感」を育みます。フィクションは、26の文字といくつかの記号を使って組み立てるものであり、あなたが、あなた一人だけが、自分の想像力を頼りに世界や人物を創り出し、他の人の目を通じて外の世界を見るのです。あなたは自分以外の人になりきっており、自分の世界に戻ってきた時には、以前のあなたとはほんの少し変わっているでしょう。

 私は幸運でした。素晴らしい地方図書館のあるところで育ち、そこの司書さんたちは、連れ添いのいない小さな少年が、毎朝、児童向けコーナーに戻っていっても気にとめませんでした。分類カードと格闘して幽霊とか魔法とかロケットとかが出てくる本を探したり、吸血鬼とか探偵とか魔法使いとか不思議とかを探していました。

 素晴らしい司書さんたちでした。本が好きで、本が読まれることも好きでした。私がどんな本を読もうと、バカにしたりしませんでした。この純朴そうな小さな男の子は読書が大好きらしい、と喜んでいたようで、今読んでいる本について話しかけてくれたものです。私のために他の本を見つけてきてくれることもありました。私の力になろうとしてくれたのです。私を一人前の大人のように扱ってくれました。8歳だった私は、そんなふうに扱われることに慣れてなかったのですが。

 図書館とは、自由を目的としています。読む自由、アイディアの自由、コミュニケーションの自由。教育も、娯楽も、安全な場所を作ることも、情報にアクセスすることも、目的としています。

 私は、すべての本がタブレット端末に移行するだろう、とも、するべし、とも思いません。電子書籍なるものが誕生する20年以上前、ダグラス・アダムスが一度私に指摘してくれたことがあります。モノとしての本はサメのようなものだ、と。

 サメは、太古の昔から生息しています。恐竜の誕生前から、海にはサメがいました。サメが今なおサメの姿のままなのは、他の何かになるよりもサメのままでいたほうが有利だからです。

 モノとしての本は、頑丈で、壊れにくく、お風呂場にも耐え、太陽光で作動でき、手に持った時の感触も素敵です。本は本であることに向いており、この先も本が存在できる場所はあり続けるでしょう。

 図書館は、安全な場所であり、この世界からの避難所でもあります。司書さんたちがいてくれる場所でもあります。

 子供たちには本を読むこと、そして、本を読む楽しみを教えなければなりません。私たちには図書館が必要です。本が必要です。私たちは読み書きのできる市民であらねばなりません。

 本は、死者と通じ合う手段です。今はもういない人たちからの教えを学ぶ手段であり、人間性を育み、進歩し、何度も何度も学び直すというより少しずつ知識を増やしていく手段です。

 私たちは娯楽として本を読む義務があります。私たちが本を読んでいるのを他のひとたちが目にすれば、読書が良いものであると示せます。私たちは図書館を支持し、図書館の閉鎖に反対する義務があります。図書館の価値を認めないなら、それは過去の人々の声を黙らせ、未来を損ねているのと同じです。

 フィクションとは、真実を語る嘘です。私たちは皆、夢想する義務があります。想像する義務があります。誰にも何かを変える力なんてない、巨大な社会に比べれば個人なんてちっぽけすぎて無と同じ、というふりをするのは簡単です。でも、真実は違います。個人が未来を作るのです。それも、想像力を使うことによって。

 かつてアルバート・アインシュタインは、子供たちの頭をよくするにはどうしたらいいかと訊かれて、こう答えました。「頭のいい子供になってほしいなら、おとぎ話を読んであげなさい。もっと頭のいい子供になってほしいなら、もっとおとぎ話を読んでやるのです。」

 私は、私たちの子供たちに本を読んだり読んでもらったりする場所が与えられることを望みます。そうすれば、子供たちは想像を膨らませ、物事を理解できるようになるでしょう。

ニール・ゲイマン

 

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