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目次

2013.2.2. 「2012年のマイ・ベスト」
2013.3.2. マーティン・フリーマンという俳優
2013.4.7. リメンバー311
2013.5.4. オスカー俳優、アーサー・デントになる
2013.6.1. タオル・デーを楽しむ
2013.7.6. 映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』キャスト・インタビュー
2013.9.7. 新旧二人のアーサー・デントが直接対決
2013.10.5. 英語で哲学
2013.11.2. 残念なお知らせ
2013.12.7. 日本語訳で哲学?


2013.2.2.  「2012年のマイ・ベスト」

 新年もはや一ヶ月が過ぎ、今さら言うことでもありませんが、あけましておめでとうございます。今年も、月に一度の更新を地味に続けていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。
 
 で、今年もまた例年通り、まずは「My Profile」コーナーに追加した、「2012年のマイ・ベスト」について。
 「2012年のベスト本」については、ずっと「今年はレオ・ペルッツの『夜毎に石の橋の下で』で決まりだな」と思っていた。が、12月末にジュリアン・バーンズの『終わりの感覚』が発売され、ひとしきり迷ったものの、ジュリアン・バーンズに軍配を上げた。
 迷った理由は、作品の良し悪し/好き嫌いとは別だった。「My Profile」コーナーに上げるベスト本には、できれば同じ作家の作品を並べるのは避けたいのだが、ジュリアン・バーンズの場合、まだ日本語に翻訳されていない Arthur & George が日本で出版された暁には、こちらのほうこそ「ベスト本」に入れたくなるんじゃないか、と思ったから。でもまあ、「同じ作家を選ぶなかれ」は絶対のルールじゃないし、実際に日本語訳の Arthur & George を読んだら期待したほどおもしろくなかったということだってありうるし、というか、そもそも Arthur & George の日本語訳が出版される日が来るかどうかも怪しいし、そんな理由で『終わりの感覚』を退けるのも、どうなのよ? 
 ということで、2012年のベストは『終わりの感覚』で決まり。何といっても、読後のインパクトは強烈で、「My Profile」コーナーに書いた、「10分間くらい呆然」は、決して誇張ではありません。昨年ベスト本に選んだジョナサン・リテルの『慈しみの女神たち』と違って、200ページに満たないくらいの短い小説なので、良かったら是非お試しあれ。
 一方、「2012年のベスト映画」で1位に選んだ『戦火の馬』については、迷うまでもなかった。大スクリーンで、馬が走り回るのを観ているだけで大興奮できる私にとっては、「2012年はこれしかない!」である。ちなみに、この映画で主人公馬のジョーイを演じた馬は、私が2004年のベスト映画1位に選んだ『シービスケット』で主役シービスケットを演じた馬のうちの一頭だったらしい。ってことは、私は一体、この馬にこれまで何度泣かされたんだ?
 『戦火の馬』に関しては、映画公開に先駆けて日本語訳が出版されたマイケル・モーパーゴの原作小説のほうも素晴らしかった。はっきり言って、この原作小説を「2012年のベスト本」に選出してもいいくらい。ジャンルとしては児童文学になるのかもしれないけれど、訳者あとがきを含め、子供だけに読ませておくのはもったいなすぎる。
 ついでに言うと、『戦火の馬』は映画化の前の2007年に舞台化されていて、こちらの評価もものすごく高い(というか、この舞台版『戦火の馬』を観てスピルバーグは映画化を決意した)。ロンドンでは今なおロングラン上演されており、チケット販売サイトでは、現時点で2013年10月分まで予約購入することができる。うう、いつか観てみたいなあ。
 でも、観たいと言えば、昨年イギリス各地を巡業した『銀河ヒッチハイク・ガイド』ライブツアーが、2013年9月にロンドンで再上演されるとのことで、言うまでもなくこちらのほうがもっと切実に観たい。でも、今の職場で9月中旬に長期休暇を取るのはさすがに無理そうなんだよな。残念。
 
 と、何だか年初からため息まじりの文章になってしまったけれど、気を取り直して今回の更新は、映画『ホビット 思いがけない冒険』の公開を記念して、2004年にロビー・スタンプが行った、マーティン・「アーサー・デント/ジョン・ワトソン/ビルボ・バギンズ」・フリーマンへのインタビュー。それから、2013年3月12日開催の第11回ダグラス・アダムス記念講演の講演者アダム・ラザフォードについても追加した。

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2013.3.2.  マーティン・フリーマンという俳優

 映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』が公開されたのは2005年、今からもう7年も前のことになる。月日の流れるのは本当に早い。この7年で、私の生活はたいして変わっていないというのに。
 が、しかし。前回の更新で追加した、「映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』キャスト・インタビュー」の中で、アーサー役のマーティン・フリーマンが、「ネームバリューのない自分がハリウッド大作の主役に起用されるはずがないと思ってた」と答えているのを今になって改めて読み、この7年で彼の俳優人生は大きく変わったよなあ、と、一ファンとしてしみじみ嬉しくなった。
 何たって、イギリスの大ヒットドラマ『Sherlock』のジョン・ワトソン役に続き、ピーター・ジャクソン監督の『ホビット』三部作で主演だよ? 昨年12月1日、東京・六本木ヒルズで開催された『ホビット 思いがけない冒険』ジャパン・プレミアのレッド・カーペットには、私も何時間も立って並んで参加してきたけど、その時に沸き起こったマーティン・コールは凄かったし、それに応えるマーティン・フリーマンはかわいらしいったらなかったし、ついでに配給会社関係各位の熱意の程もすごく分かった――ただ、その割に、全世界での大ヒットぶりに比べ、日本での興行成績が全然ふるわなかったのも悲しすぎる事実で、ったくもう、前作『ロード・オブ・ザ・リング』を観た人なら当然『ホビット』だって観たいでしょうに、みんな一体どうしちゃったのよ、ううむ、これはやはり『ホビット 思いがけない冒険』のポスターにマーティン・フリーマンのかわいらしさが全く反映されていなかったのが最大の敗因にちがいない、だからあのポスターを見て「何だかなあ」と思ってスルーしたという人がいらっしゃいましたら、この際DVDレンタルでもいいですから彼のビルボ・バギンズを観てみてください。それはもう、抜群にかわいらしいですから。
 さらに言うと、これはもう私の漠然とした印象でしかないのだが、マーティン・フリーマンという一人の俳優が、イギリスのサブカルチャーを代表する三人のキャラクター、アーサー・デント、ジョン・ワトソン、ビルボ・バギンズを演じたことによって、何となく、イギリス人が考えるところの「理想的なイギリス人像」のようなものが透けて見えるような気がする。イギリスはよく「伝統と革新の国」と言われるけれど、一人の人間の中にも「伝統と革新」、つまり、穏やかな日常生活を大事にしたいという気持ちと、外の世界に飛び出して命からがらの冒険をしたいという気持ち、この矛盾する二つの気持ちを抱いていることが理想なのかな、と。
 アーサーもジョンもビルボも、基本的に平穏で快適な暮らしを望んでいる。でも同時に、自分では気付いていないけれど、心の奥底で思いがけない冒険を求めてもいる。だから、ある日突然、アーサーにとってはエイリアン、ジョンにとってはシャーロック、ビルボにとってはガンダルフという外的要因によって、平穏な自宅から危険な外の世界に連れ出されると、「どうして僕がこんな目に」とぶつぶつ文句を言いながら、それでもいざ宇宙の驚異や恐ろしい犯罪現場や獰猛なドラゴンと向き合う時には、意外なまでの勇気や度胸を発揮する。そのくせ、小市民から試練を経て偉大な英雄になる、ということもなく、冒険が終わればまた元の小市民の暮らしに戻るのだ――冒険の前と後では、内面に変化があったとしても、少なくとも外面はほとんど変わらない。
 そして、マーティン・フリーマンという俳優は、英雄的な活躍をするけれど決して英雄そのものにはならない、どんな大冒険をしても地に足のついた感覚を失わない、「理想的な普通の人」を体現するのがものすごく巧いと思う。
 まったく、「自分がハリウッド大作の主役に起用されるはずがないと思ってた」ですって? とんでもない。あなたが21世紀のアーサー・デントを、ジョン・ワトソンを、ビルボ・バギンズを演じなかったら、一体誰が演じるというのよ!
 
 そして今回の更新は、アーサー役のマーティン・フリーマンに続き、フォード・プリーフェクト役のモス・デフのインタビューを追加。

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2013.3.2.  リメンバー311

 2013年3月11日、検索サイト「Google」の公式ロゴが、ダグラス・アダムスの誕生日を祝ったデザインに変わった。これは「Doodle」と呼ばれるプロジェクトで、世界中のさまざまなイベントや記念日に対応してデザインされ、その日一日だけの特別なロゴとなる。内容によっては特定の国だけだったりもするが(たとえば2013年3月1日の芥川龍之介の誕生祝いは日本国内限定)、2013年3月11日に関しては、世界中の「Google」のロゴがダグラス・アダムス・トリビュートと化した――日本だけは例外扱いだったけれど。
 残念だが、こればっかりは仕方ない。日本ではまだまだ『銀河ヒッチハイク・ガイド』の知名度が低いから、という意味ではなくて、今の日本で「リメンバー311」と言えば、ダグラス・アダムスではなく東日本大震災であるべきだ、と、この私でさえ思うからだ。
 でも、だからと言って、私には日本人以外の人にも「311」を同じように記憶していてもらいたい、という気持ちはない。そりゃ東日本大震災とツナミとフクシマのことは覚えていてほしいが、3月11日という日付とリンクしていなくて構わない――私たちがチェルノブイリの悲劇は覚えていても、あの事故が起こった日付までは気にしていないのと同じように。だから、私たち日本人にとっては「リメンバー311」は東日本大震災であり続けるけれど、そうでなければ困るけれど、でも日本以外の人たちにはこれからもダグラス・アダムスの誕生祝いを続けてくれることを、私は望む。
 幸いなことに、これまでに使用された「Doodle」のデザインはGoogleのサイトに残されているので、今からでも見ることができる。それがこちら(http://www.google.com/doodles/douglas-adams-61st-birthday)。
 このデザイン、単なる画像ではなくて、カーソルを動かして左奥の自動ドアのボタンを押すと、ドアが開いてテレビドラマ版のマーヴィンが登場するし、「銀河ヒッチハイク・ガイド」のイラストの上でクリックすると、バベル魚とか地球の項目がアニメーションで説明されたりする。「空を飛ぶ方法」という、『宇宙クリケット大戦争』に出てくる少々マニアックな項目もある。無限不可能性ドライヴを説明するアニメーションには、映画版『銀河ヒッチハイク・ガイド』への目配せがあったりもする。これはもう何というか、ものすごく「知っている」人が作っている、としか思えない。
 ひょっとすると、他の「Doodle」にも通常の画像ではなくこういう作りのものもあるのかもしれない。が、それでも、ここまで凝りに凝った作品は珍しいのではないか――やっぱり、インターネットの世界では、『銀河ヒッチハイク・ガイド』の知名度と影響力はハンパじゃないのよ。えっへん。
 
 と、気を良くしたところで、今回の更新は、私も負けずに(?)少々マニアックな内容で勝負することにする。無名だった頃のアダムスとフラットで同居していたことのある、コメディ作家ジョン・カンターが2006年に発表した、処女小説 Seeds of Greatness を紹介。え、いくら何でもそれはダグラス・アダムスとは関係ないでしょう、と思われるかもしれないけれど、実際に読んでみると、淡くて微妙なほのめかしが作品のあちこちに埋め込まれているんだよな、これが。
 また、さらにマニアックなところで、アメリカの理論物理学者、ロバート・B・ラフリンも追加。インターネットの世界だけでなく、理論物理学者の世界でも『銀河ヒッチハイク・ガイド』の知名度と影響力はハンパじゃないのよ(多分)。

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2013.5.4.  オスカー俳優、アーサー・デントになる

 フランスの映画雑誌『プレミア』2013年2月号は、オスカー俳優ジャン・デュジャルダンが表紙を飾った。
 2012年に映画『アーティスト』でアカデミー賞主演男優賞を受賞してから約1年。受賞を機に、フランス国内だけでなくインターナショナルに大ブレイクするか、と思われたけど、そんなにブレイクしなかったよね、と、今年の2月に行われたアカデミー賞授賞式の司会者に軽く揶揄されていたけれど、でもフランス人にしてみれば、貴重なフランス人コメディ俳優の才能がハリウッドに流出するのは痛し痒しじゃないだろうか。
 『プレミア』のジャン・デュジャルダン特集の記事は、その辺りのフランス人ファンの気持ちをついたものらしく、最初のページの見出しには、わざと英語で "jean goes to hollywood?" と書かれている。実際、デュジャルダンは、今年公開予定のマーティン・スコセッシ監督/レオナルド・ディカプリオ主演の The Wolf of Wall Street や、ジョージ・クルーニー監督/マット・デイモン主演の The Monuments Men に脇役で出演している。だから、デュジャルダンの演技力が国際的に高く評価されるのは嬉しいが、ハリウッド大作でイロモノ脇役として浪費されるのはちょっとね、と、フランス人がやきもきする気持ちは、私にも何となく想像がつく。
 想像はつくが、しかし、そもそも私はジャン・デュジャルダンにもフランス産コメディにも関心が薄い。もっとぶっちゃけて言えば、「私の知ったことではない」。にもかかわらず、先程からジャン・デュジャルダンについてぐだぐだと書きつらねている理由は、"jean goes to hollywood?" の見出しがついた特集記事の写真にある。それがこちら。

 こ、こ、これは、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のパロディではないかあっっ!
 私の気のせいじゃない、勘違いじゃない、妄想じゃない。フランス人のオスカー俳優ジャン・デュジャルダンが、アーサー・デントに扮している。それも、フランスの有名映画雑誌『プレミア』の特集記事の、最初の見開き記事になっている。うわわわわ、一体いつから映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』が、現在ハリウッド大作映画の代名詞扱いされるほどの存在になったのよ?!
 というか、そもそもフランスでは『銀河ヒッチハイク・ガイド』はあんまり人気なかったよね? 2005年8月に、フランスで映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』が公開された時も、興行収入はそんなによくなかったはず。こういう時に備えて(?)、当時私がせっせと転記しておいた各国の映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』興行成績リストを見れば一目瞭然、ほらほらほら、フランスでは公開1週目が5位で2週目が8位、3週目以降は早くもベスト10圏外になっている。そりゃ、ほとんど単館ロードショー扱いだった日本よりはマシだけど、でも、フランスに限らず、ゲルマン語圏の国に比べてラテン語圏の国では、映画だけでなくそもそも『銀河ヒッチハイク・ガイド』の原作自体が不人気だった。それが、いつの間にフランスで、こんなにも『銀河ヒッチハイク・ガイド』が浸透していたんだろう!
 ……まあね、たとえ『銀河ヒッチハイク・ガイド』をまったく知らない人がこの写真を見ても、「何だこりゃ?」とは思わず、「ハリウッド映画のパニック映画にありがちな一場面をコミカルに揶揄したもの」としてすんなり受け止められるのは確か。だから、この写真だけを見て「フランスでもついに『銀河ヒッチハイク・ガイド』がブレイクした!」と大騒ぎするのは早計なんだろうけど、でもやっぱり騒がずにはいられない。きゃーーーーー!
 
 気を取り直して今回の更新は、イギリスとアメリカにおける『銀河ヒッチハイク・ガイド』の浸透っぷりを示す証拠を追加。イギリス人大学生が企てた「トースター・プロジェクト」と、アメリカのSF雑誌「ローカス」が行った長編SF小説の人気投票の結果を紹介する。

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2013.6.1.  タオル・デーを楽しむ

 5月25日は、タオル・デー。『銀河ヒッチハイク・ガイド』のファンは、ダグラス・アダムスを追悼し、タオルを持って過ごす。
 勿論、私も毎年、率先して実行しています――と胸を張って言いたいところだけれど、日本在住の勤め人の悲しさ、5月25日が平日だと、せいぜい職場の机の上にタオルハンカチを置いて気休めをするくらいが関の山だったりする。
 が、今年の5月25日は土曜日だ。土曜出勤を命じられてもいなければ、プライベートでも特別な用事は入っていない。だから、思う存分、タオル・デーを過ごすことができる。と言っても、せいぜい自宅に籠って一日中肩からタオルを下げているだけなんだけど、ただ、これだけはやろうと決めていたことがあった。
 映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』を、ブルーレイで観る。
 ブルーレイ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』そのものは、随分と前に購入して持っていた。が、私がブルーレイのプレイヤー本体を購入したのは、つい先月のこと。この私が初めてブルーレイを使うなら、『銀河ヒッチハイク・ガイド』を観るしかない。それも、どうせならタオル・デーに決行するしかないでしょ!
 ……我ながら、世間の共感をまったく得られそうもないことを書いている。
 ま、ともあれ、初挑戦のブルーレイ版『銀河ヒッチハイク・ガイド』は、映画館で観たりDVDで観たりWOWOWで放送されたのをHDDに録画して観たりした時に比べ、映像がより鮮明だった、のは確かだが、おかげで主人公アーサー役のマーティン・フリーマンの顔の肌の調子がやたら気になって仕方なかった。この映画のマーティン・フリーマンは、その後に撮影された『Sherlock』のジョン・ワトソンや『ホビット 思いがけない冒険』のビルボ・バギンズに比べて明らかに若いのに、肌の状態に限って言えば、今のほうがずっと良くなっている、気がする。そりゃ悪くなるよりはいいけれど、でもこれは単に皮膚の毛穴まで映し出す鮮明すぎるブルーレイ映像のせいでそう思えるのであって、『Sherlock』や『ホビット 思いがけない冒険』もブルーレイで観ればまた違うのかしら? それとも、ブルーレイ映像に対処すべく、俳優のメイク方法も改善されてたりするのかな?
 あと、せっかくブルーレイで観るんだから、ということで、DVDにはついていない英語字幕で観てみたところ、映画の最初と最後に流れるイルカの歌をカラオケ感覚で一緒に歌えて楽しかった。DVDには、ブルーレイにはない特典映像として「シング・アロング・ソング(英語版)」が入っているけれど(特典映像に関しては、なぜかブルーレイよりDVDのほうが充実している。DVDにはついている音声解説も、ブルーレイには入ってない。マニアの私は両方買うからいいけど、普通の人は悩むんじゃないか?)、映画を見終わった後の流れでニール・ハノンと一緒に歌う楽しさはまた格別だ。
 と、私が一人で楽しいんだか暗いんだかよく分からないタオル・デーを過ごしている一方、遠く離れたイギリス・ケンブリッジでは「タオル・デー・ツアー」なるものが企画され、アダムスの一人娘ポリーや、種違いの弟ジェイムズ・スリフトらも参加したらしい。ツイッターで流れて来た写真を見る限り、天候にも恵まれたようだ。いいなあ、いいなあ、羨ましいなあ。
 
 気を取り直して今回の更新は、映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』のキャスト・インタビュー。トリリアンことトリシア・マクミランを演じた、ズーイー・デシャネルを追加した。
 それから、ダグラス・アダムス関連の最新ニュースとして、「銀河ヒッチハイク・ガイド財団」も追加。設立メンバーには、ポリー・アダムス、ジェイムズ・スリフトに加え、映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』の製作総指揮を務め、キャスト・インタビューもしているロビー・スタンプも名を連ねていて、何だかちょっとほっとした。


2013.7.6.  映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』キャスト・インタビュー

 今年に入ってから、映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』のキャスト・インタビューとして、マーティン・フリーマンモス・デフズーイー・デシャネルの3人を紹介してきたけれど、実を言うと私の本命の本命は、今回の更新で追加するビル・ナイだった。
 勿論、先の3人のインタビューだって十分以上に興味深い。マーティン・フリーマンが語る、監督ガース・ジェニングスとの最初の出会いの話はとてもおもしろいし(アマンダ・アビントンを車の中で待たせてたって? そりゃ気が気がじゃなっただろう)、何より彼のアーサー・デントという役柄に対する解釈が素晴らしくて、なるほど、できる役者さんって、その場その場の感情や台詞だけでなく、役の内側から本当にちゃんと理解しているんだ、ってことがすごく良く伝わってくる。一方、アーサー以上に解釈の自由度が高いというか解釈の幅が広いフォードやトリリアンを演じることになったモス・デフズーイー・デシャネルの場合は、自分たちが最初に思い描いていたキャラクター像から柔軟にイメージを変更し、役作りに磨きをかけていったことが分かる。
 が、しかし。彼ら3人のインタビューなら、ここまで詳しくないにせよ、他の雑誌記事等でも見つけることができる。でも、『銀河ヒッチハイク・ガイド』について語るビル・ナイには、そう滅多にお目にかかれない。だって、あのビル・ナイが、『銀河ヒッチハイク・ガイド』はずっと前から愛読していて、また彼の周りの人たちもみんな『銀河ヒッチハイク・ガイド』を知っている、って話しているんだよ? 私なんか、それだけでもう嬉しすぎて泣きそう。こんなインタビューを、この私のホームページで取り上げずして何とする?
 にもかかわらず、と言おうか、だからこそ、と言おうか、実際にインタビューを日本語に移す上で、一番手こずったのもビル・ナイだった。
 私程度のお粗末な英語力でも、彼のインタビューを読んでいると、何だか彼の肉声が聞こえてきそうな気がする。肩の力が抜けていて、一見はぐらかしているようにも思えるけど、奥の奥ではすごく真摯な、あの感じ。どうやったら、あの感じを日本語に置き換えられるのか――と、さんざん悩んだ末に出た答えは、「今の私には無理」。
 じゃあどうするのか、あきらめて放置するのか、それとも――と、ちょっと迷った末に出た答えは、「勝手なイメージでヘンな色をつけずに直訳でいこう」。という訳で、ビル・ナイの一人称も、ヘタに「僕」とか使わずに、もっとも単純に「私」でいくことにした。
 勿論、ビル・ナイに限らず、マーティン・フリーマンモス・デフズーイー・デシャネルについても、私の日本語訳が俳優のイメージと違う、と感じられた方はきっといらっしゃると思う。イメージの問題だけじゃなく、れっきとした誤訳だって少なからずあると思う。だから、本気で興味を持たれた方は、是非オリジナルのインタビューにあたっていただけると嬉しい。
 これらのインタビューが収録された小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』の「Film Tie-in Edition」は、映画の一般公開の約1ヶ月前にあたる2005年4月に発売された。私は、以前「ロンドン映画鑑賞記」に書いた通り、この本をノッティング・ヒル・ゲートのウォーターストーンズで購入したが、早いものであれからもう8年が経つ。当時のロンドンの書店では、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のペーパーバックは軒並みこの版に置き換えられていたが、今ではちょっと入手困難かしら?
 
 そしてこのホームページは、今回の更新の後、例年通り約2ヶ月の夏休みに入ります。次回の更新は、9月7日の予定。2ヶ月かけて、映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』キャスト・インタビューに替わる新しいネタを準備する所存ですので、これからもどうぞよろしく。

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2013.9.7.  新旧二人のアーサー・デントが直接対決

 先月上旬、ツイッター経由で「2005年のマーティン・フリーマン出演のラジオドラマが再放送される」という情報が届いた。
 リンク先のBBCの公式サイトを覗いてみると、GK Chesterton - The Club of Queer Trades、とある。ん、G・K・チェスタトン? 私はチェスタトンの熱心な読者ではないが、このラジオドラマのことはどこかで目にしたことがある、気がする。2005年と言えば映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』が公開された年なんだけど、何だろう、何だっけ……と思いながら公式サイト内をクリックしているうち、第4話のキャストを見て飛び上がった。
 サイモン・ジョーンズ
 お、思い出した、確かサイモン・ジョーンズがどこかに寄せた序文の中で、2005年に映画版『銀河ヒッチハイク・ガイド』でアーサー・デント役を務めたマーティン・フリーマンと、たまたま一緒にラジオドラマで共演したとか何とか書いてたっけ、えーーと、それって何の本だっただろう、でも大丈夫、こういう時は自分で作ったサイトの中の、ダグラス・アダムス関連人物一覧のサイモン・ジョーンズの項目を見ればすぐに分かる――ほら見つかった、M・J・シンプソンの A Completely and Utterly Unauthorised Guide to Hitchhiker's Guide の改訂版(2005年)だ。私の(いい加減な)訳文で該当箇所を引用すると、

水曜は、G・K・チェスタトンの小説『奇商クラブ』(The League of Queer Trades)のラジオ・ドラマ第4話の収録のため、BBCに行った。その番組のキャストの中にはジェフリー・マッギヴァーンもいて、僕は彼の快適な控え室にずっと居座っていたのだが、その他に、タッチストーン製作の映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』でアーサー・デント役を務めることになったマーティン・フリーマンがいたのだ。

 サイモン・ジョーンズがこの序文を書いたのは2005年1月で、BBCの公式サイトによるとラジオドラマ『奇商クラブ』第4話が放送されたのが2005年5月。そして、映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』がイギリスで一般公開されたのは2005年4月28日、ということは、映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』がイギリスで上映されているのとほぼ同時期に、このラジオドラマも放送されていたことになる。当時の『銀河ヒッチハイク・ガイド』のマニアックなファンは、新旧二人のアーサー・デントの共演をさぞ楽しんだことだろう。
 あれから8年以上が過ぎて、私もついにマニアックなお楽しみのご相伴に預かることに。私の英語力じゃG・K・チェスタトンのリスニングなんて絶対に無理だけど、放送直前に原作小説の日本語訳を読んだのが功を奏し、意外と難なく楽しむことができた。が、マーティン・フリーマン演じる私立探偵ルパートは声ですぐ分かったのに対し、ゲスト出演のサイモン・ジョーンズの声はものすごく分かりづらかった。必死に耳をこらして、どうやら家屋周旋業者モンモレンシー役で間違いないと最終的には確信したものの、ダブル・アーサー・デント状態を避けるため、サイモン・ジョーンズはかなり意識して声のトーンを変えたのかしら?
 
 気を取り直して、今日は夏休み明けの最初の更新、ということで、ちょうど一年ほど前の2012年7月に発売された、Philosophy and the Hitchhiker's Guide to the Galaxy を紹介する。次回以降、1章ずつ紹介していく予定なので、どうぞよろしく。
 あ、それから、昨年に引き続きイギリス国内ツアーが決定した、『銀河ヒッチハイク・ガイド』ライブの詳細についても追加した。公演回数が去年より増えているってことは、前回がそれだけ高評だったってことよね? せめて音源だけでもダウンロード購入させてくれればいいのに!

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2013.10.5.  英語で哲学

 前回の更新で追加した第1章に引き続き、今回は『銀河ヒッチハイク・ガイドと哲学』 の第2章を紹介する。
 
 が、しかし。
 以前、『銀河ヒッチハイク・ガイドの科学』を紹介した時も何度となく頭を抱えたが、今回の『銀河ヒッチハイク・ガイドと哲学』も、負けず劣らず手強い。何たって、「英語で科学」と「英語で哲学」だもの。私にとって、これよりさらに手に負えないものがあるとしたら、「英語で数学」かしら?
 ううう。いつの日か『銀河ヒッチハイク・ガイドの数学』などという本が出たら、どうしよう。「英語で哲学」は、少なくともそれよりはまだマシ。そう思って、もうしばらく精進するか。
 
 でも、思い起こせば、私が「英語で哲学」と格闘するのはこれが初めてではなかった。2009年9月、テリー・イーグルトンが書いた小冊子 The Meaning of Life に『銀河ヒッチハイク・ガイド』が登場する、と知った時も、英語で書かれた哲学の本を力づくで読んだっけ。その時の艱難辛苦については2009年10月3日付の同コーナーで愚痴っていて、ってことは、あれからちょうど丸3年経った今も、私はまったく何の進歩もしていないということになる。我ながら、しょうがないねえ。
 実を言うと、イーグルトンThe Meaning of Life は、先月の3日、彩流社から『人生の意味とは何か』のタイトルで日本語訳が出版された。いつもの私なら、この日本語訳を早速手に入れて、私が適当に訳した該当箇所を、プロの訳者の訳文に差し替えるのだが、今回に限っては本屋で見つけてぱらぱらっと目を通したきり、見なかったことにして放置している。何故かって? 『人生の意味とは何か』では、2013年のこの期に及んで、The Hitchhiker's Guide to the Galaxy が「ヒッチハイカーのための銀河系ガイド」と訳されていたからだ。
 The Hitchhiker's Guide to the Galaxy は、これまでにもいろんな訳者からいろんな邦題を付けられてきた。私が咄嗟に思いつく限りでも、イアン・スチュアート著、雨宮一郎訳の『数学の冒険』では「銀河系へのヒッチハイク案内」になっているし、高山宏訳のルイス・キャロル注釈本『新注 不思議の国のアリス』では「ヒッチハイカーの銀河案内」と訳された。また、雑誌『スヌーザー』に掲載された田中宗一郎のレディオヘッドへのインタビュー記事では、「ヒッチハイカーズ・ガイド・トゥ・ギャラクシー」と書かれている。
 ただし、これらの訳はいずれも1990年代、新潮文庫の小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』が絶版になって久しい時代のことだった。雨宮訳は1990年、高山訳は1994年、田中訳は1997年である。故に、この時期ならバラエティ豊かな邦題が付くのも納得できる。
 でも、2013年の今は、ちょっとネット検索すれば、The Hitchhiker's Guide to the Galaxy が『銀河ヒッチハイク・ガイド』という邦題で河出文庫から出版されていることくらい、すぐに分かったはずだ。イーグルトンThe Meaning of Life を翻訳するならダグラス・アダムスくらい読んでおけ、とは言わないが(『銀河ヒッチハイク・ガイド』の日本語訳は読んでないけど原著でなら読んだ、という可能性は否定できないけど、該当箇所の日本語訳を読む限り、そういうふうには思えなかった)、イーグルトンの『人生の意味とは何か』に触発された読者がダグラス・アダムスと出会うかもしれないせっかくの機会を、「ヒッチハイカーのための銀河系ガイド」というオリジナリティありすぎの邦題で潰さなくてもいいんじゃない?

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2013.11.2.  残念なお知らせ

 私は最近、毎朝の通勤電車の中で、ツイッターのTLを確認している。10月22日(火)の朝も、いつも通り、iPhoneのツイッター・アプリを立ち上げ、ぼんやりと流し読みしていたら、イギリス各地を巡業中の『銀河ヒッチハイク・ガイド』ライブツアーの残りの公演がすべてキャンセルになったとの報が飛び込んできた。
 えええええ!
 ツイートに添えられていたリンク先の情報サイトによると、日本時間では22日だが現地イギリス時間では21日にキャンセルが発表され、その日の上演すら急遽取りやめとのこと。主要出演者の誰かが怪我をしたか病気になったのかとも思ったが、本当の理由はチケットの売れ行きが不振で、このままツアーを続けても赤字が膨らむばかりだから、らしい。
 何てこった。
 その日の夜、家に帰ってからライブツアーの公式サイトを確認してみたところ、トップページにキャンセル告知のお知らせが貼られていて、その他の内容はすべて削除されていた。

Although a well-loved show, Hitchhiker's Live has been subject to the same extreme economic pressures as many productions touring the UK this autumn. Ticket sales across the board have been lower than average and we have not escaped this trend. A difficult financial environment for such a large and technical show means that covering operating costs has become impossible. As a result in the last 24 hours we have had no option but make the extremely hard and painful decision to stop the tour.

 今になってこういうことを言うのもなんだけど、最初の企画では、昨年行った『銀河ヒッチハイク・ガイド』ライブツアーが好評だったので、今年9月に2日間限定でロンドンで再演する、というだけじゃなかったっけ? それが、いつの間にか今年も本格的にイギリス各地を回ってライブツアーをやる、という話になっていて、私としては内心ちょっと「2年連続で地方公演をして、お客さんは入るのかな?」と心配していた。
 その後、ライブツアーの詳細が発表され、このホームページにその情報を載せるべくデータを加工してみると、その心配はますます膨んだ。昨年より公演回数が多い、というだけでも不安要素は十分なのに、地方は地方でも、オックスフォードとかマンチェスターとかカーディフといった、ある程度以上の人口を備えた都市ではなく、私がこれまで聞いたこともないような小さい街の名前もいっぱい含まれていたからだ。おまけに、それぞれの劇場の客席数は決して少なくない――いくらイギリスで『銀河ヒッチハイク・ガイド』の知名度と人気が絶大だとしても、本当に客席は埋まるのかしら? 
 と、素人の私ですら危ぶんだのに、どうしてプロの興行師たちが判断を誤ったのか。経費と収益のバランスだけを計算し、多くの経費をかけた分、チケット代で取り戻さねばならず、そのためには公演回数を増やすしかなかったのか。でも、経費回収の必要があったのなら、公式サイトでライブ音源をイギリス国外に売ってくれればよかったのよ!
 ったくもう。今さら私が日本で頭を抱えても仕方がないと分かっちゃいるが、あまりにも残念すぎる結果にやっぱり頭を抱えて呻いてしまう。あああああ。
 
 それでも強引に気を取り直して今回の更新は、前回に引き続き、『銀河ヒッチハイク・ガイドと哲学』の第3章を紹介。あと、ダグラス・アダムス関連の最新ニュースとして、マーティン・フリーマンの伝記本発売の件も追加した。

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2013.12.7.  日本語訳で哲学?

 2013年10月5日付の同コーナーで、英語で哲学はキツい、という旨のことを書いた。
 が、言うまでもなく、私にとって哲学がキツいと感じられるのは、英語でも日本語でも同じことである。大体、私には哲学と屁理屈の区別もつかないのだ。だから、日本語で読んでも意味不明なものは英語で読んだって分かりゃしない、と言ったほうが正しい。
 今回の更新では、『銀河ヒッチハイク・ガイドと哲学』の第4章を追加したが、これまた分かりにくいったらなかった。ただ、この章にもさまざまな本からの引用が含まれているので、引用元の日本語訳を見つければ少しは理解しやすくなるはず、と思ったんだけど、実際、第3章までは割とそうだったんだけど、残念ながら今回はそんなに単純ではなかった。
 第4章では、不死をめぐる問題について、哲学界のスーパースターの一人、ウィトゲンシュタインのお言葉が引用されている。"The solution of the riddle of life is seen in the vanishing of problem."
 註に出典が明記されているため、このお言葉の日本語訳を見つけ出すこと自体は簡単だった。かの有名な、ウィトゲンシュタイン著『論理哲学論考』の6-522――「生の問題の解決を、ひとは問題の消滅によって気づく」。
 ううううう。日本語で読んでも何が言いたいのかさっぱり分からないのは私だけ?
 ちなみに、最初にこの一文を英語で読んだ時、「人生の謎なんて、目先のトラブルが解消されてしまえば、ひとりでに解決するものよ」という意味かと思ってしまったのは、内緒だ。
 
 あ、そうそう、今まで書き忘れていたけれど、日本語訳に関してはまったく別の種類の問題もあったっけ。『銀河ヒッチハイク・ガイドと哲学』の内容を日本語で解説するにあたって、『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズからの引用箇所については既存の日本語訳を利用したが、敢えて新潮文庫の風見潤訳と河出文庫の安原和見訳の両方を併用している。新潮文庫が絶版になって久しい現在、安原訳で統一したほうが一般的だし紛らわしくないと分かっちゃいるが、引用箇所次第では風見訳のほうがピンとくることもあって、どうにも捨て難いのだ。
 ということで、安原訳で『銀河ヒッチハイク・ガイド』に出会った方には申し訳ないけれど、どうかご容赦ください。でも、思い出してみれば、2005年の映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』の日本語字幕でも、風見訳と安原訳が併用されていたよね?
 
 あ、そうだ、日本語訳に関しては、さらに別の問題もあったんだ。『銀河ヒッチハイク・ガイドと哲学』の第1章と第3章には、ピーター・シンガーという哲学者が登場するが、私は彼の名前にまったく憶えがなかった。で、ネット検索して、「へええ、ちゃんと日本語訳も出ているんだな。ってことは、私が知らなかっただけで、日本でもそれなりに有名な人なんだろうな」と思っていた。
 が、つい先日、自室の本棚を整理していて気が付いた――他でもない、私の蔵書の中にもシンガーが編集を手掛けた本、『大型類人猿の権利宣言』が混ざっていることに!
 どうしてこんな本を持っているかと言えば、答えは簡単、ダグラス・アダムスとマーク・カワディンの共著 Last Chance to See の一部が日本語訳で採録されているからだ(みすず書房からLast Chance to Seeの全訳が『これが見納め』の邦題で出版されるのは、『大型類人猿の権利宣言』が出てから10年後のこと)。そして、どうしてシンガーの名前にまったく憶えがなかったのかと言えば、これまた答えは簡単、Last Chance to See からの採録箇所しか読んでなかったからだ。あーあ。
 
 気を取り直して(?)、今年も今回の更新を最後に、例年通り二ヶ月間の冬休みに入ります。次回の更新は、2014年2月7日の予定。
 願わくば、嗚呼、この休みの間に少しでも『銀河ヒッチハイク・ガイドと哲学』を読み進めておきたいものよ。でも、この本の編者ニコラス・ジョルが序文の中で「とっつきやすいのは、多分、第1章と第3章と第9章」(p. 19)と書いていて、ということは道のりはまだまだ険しそう。とほほほほ。。

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