以下は、コンピュータ・ゲーム『宇宙船タイタニック』の、テリー・ジョーンズによるノベライズの概略である。ただし、読解のが素人の私なので、少なからぬ誤読を含んでいる可能性が高い。そのため、全貌をきちんと知りたい方は、必ずオリジナルにあたってくださるようお願いする。
(このノベライズにアダムスが寄せた序文については、こちらへ)
第1章
惑星ブレロンティンで、宇宙一と言われる新しい宇宙船が初出航しようとしているのに、なぜかその生みの親であるレオヴィナスの姿が見当たらない。
その代わり(?)、惑星ヤサカの代表団が押し掛けてきた。
実はこの新しい宇宙船はとんだ金食い虫で、製造はトラブルの連続だった。コンピュータもダメならエンジンもダメ、設計者のレオヴィナスは親会社と対立し、マネージャーのブロボスティゴンと揉め、ブロボスティゴンは会計士のスカリオンティスと揉め、スカリオンティスはレオヴィタスと揉めている有様。
この宇宙船製造事業は、関係者全員を財政破綻に陥らせた。中でも最大の被害を被ったのが建設業界の最優良企業、惑星ヤサカである。惑星ブレロンティンの警察長官は、ヤサカの代表団を宇宙船出航の観客エリアから追い出そうとする。
第2章
記念すべき初出航前日、記者会見が行われる。レオヴィナスは、宇宙船の製造を惑星ヤサカから惑星ブレロンティンに移したせいでヤサカの経済を破壊したことの責任について問われ、優先すべき一番の義務は自分の芸術を追求することだと答える。が、それで皆を納得させられた様子はない。
直前の事故で眉毛が焼けてしまい、見た目が悪くなったこともあって、レオヴィナスは宇宙船出航イベントが億劫になっている。思考と感情が二つに引き裂かれているような状態で、それは宇宙船の人工知能対ターニアにも反映された。タイターニアは、たとえどんなに優れた人工知能でも、モチベーション=感情なしに思考を続けることができないというレオヴィタスの考えに基づいて設計されている。
記者会見終了後、レオヴィナスは一人で宇宙船を見に行き、船の中に入った。
第3章
レオヴィナスが一人で宇宙船の中にいると、暗闇から人影が現れた。レオヴィナスが一番会いたくなかった相手、記者だった。
宇宙船の出来を証明するため、レオヴィナスは記者を案内する。確かに豪華な内装だが、でも明日が出航だというのにまだ2人の作業員が最終チェックか何かをしている。レオヴィナスはパネルの一つが上下逆に取り付けられていることに気付いて怒る。
この宇宙船では、さまざまなロボットが各種サービスに従事している。しかし、ロボットの回路の経費をケチったのか(マネージャーのブロボスティゴンのせいか?)、倒れたままのロボットもある。
記者は、宇宙船のポンコツぶりのスクープ記事の可能性に目覚める。この船にはどうやらスプリンクラーも取り付けられていないようだ、と、メモを取りながら船の中心部に入る。エレベーターが上下している「中央井戸」と呼ばれる豪華な空間には運河が流れていて、この水が冷却装置の役割も果たしている。運河には、ロボットの漕ぎ手が操縦するゴンドラまで浮かんでいる。
続いて二人はセカンドクラスのエリアへと移動するためエレベーターに乗る。この宇宙船にはすべてのロボットに性格があり、エレベーターのロボットも例外ではない。
セカンドクラスのプロムナードデッキは、レオヴィナスが一番気が進まない場所だった。半透明の天蓋があり、出航後は星空を眺めながらそぞろ歩けるはずなのだが、今は宇宙船を覆っている巨大布の裏の色しか見えない。おまけに床にはケーブルやら穴やらがある。つまり、未完成ということ。
レオヴィナスは宇宙船が完成したというのは嘘だったと知り、ショックで崩れ落ちる。が、一人の作業員を見つけて怒鳴る。するとその作業員は「自分のオウムを回収しに来ただけ」と答える。どうして動物禁制の宇宙船の中にオウムがいるのか。レオヴィナス、哀れなタイターニアを想ってすすり泣く。タイターニアは船の守護者であり、すべてに目を配っているはずだった。それがどうしてこんなことに?
第4章
レオヴィナスはマネージャーのブロボスティゴンに電話する。が、電話に出たのは彼の妻のクロッサで、夫は宇宙船に行ったはずだと言う。何かトラブルがあったらしく、会計士のスカリオンティスに会いに行った、と。
イヤな予感がしたレオヴィナスは、タイターニアが設置されている中央ドームへと向かう。タイターニアの心臓部はドームの中心にあり、ドームの巨大シャンデリアで知らない人の目を欺いている。その秘密の部屋に入ると、タイターニアはバラバラにされており、その場にいたブロボスティゴンがレオヴィナスに襲いかかる。が、レオヴィナスが反撃して逆に突き飛ばす。
ブロボスティゴンは、宇宙船製造の失敗による財務破綻を避けるべく、保険金狙いでわざと宇宙船を破壊しようとしたのだった。真相を知って怒ったレオヴィナスが再度ブロボスティゴンを突き飛ばすと、よろけたブロボスティゴンはたまたまそこにいた掃除ロボットのトレイの上に倒れこみ、トレイに乗ったものを全てゴミとみなす掃除ロボットはたちまちブロボスティゴンを吸い込んだ。
しかし、ブロボスティゴンと会うはずだった会計士スカリオンティスの姿は見えない。おまけによく観察してみると、バラバラになったタイターニアの部品のうち、頭脳の部分がなくなっている。もし、このまま明日宇宙船が発射されたら、何が起こるかわからない。
第5章
レオヴィナスはロビーのデスクロボットに会計士の居場所を尋ねる。ロボットの返事は要領を得ないが、レオヴィナスがゴールドカードを見せた途端にロボットは態度を変え、一等船室のレストランに行ってみるようレオヴィナスに勧める。
一等船室のレストランに入ろうとしたレオヴィナスを給仕長ロボットが止めようとする。が、レオヴィナスは会計士の姿を見つけ、給仕長ロボットを会計士に向かってぶん投げる。レオヴィナスと会計士の格闘が始まり、最終的には会計士がレオヴィナスを殴り倒してレストランから出ていく。
第6章
記者は、オウムを取りにきた作業員に話しかけている。オウムをこっそり鳥籠に入れて隠していたが、誰かが鳥籠を開け、オウムが逃げ出したらしい。
オウムのことは会社に内緒にしておいてあげるから、その代わりに宇宙船がこんなにも未完成な事情を教えてほしい、と、記者は作業員に交渉する。作業員はオウムを見つけてくれたら教えると答え、記者は作業員に惑星ヤサカの大使館の電話番号が書かれた金属片を渡して去る。記者は一人で宇宙船内を見て回る。どこもかしこも未完成だ。中央ドームで会計士と出会したので、逃げようとする相手を押さえて詰問すると、会計士は宇宙船の爆破計画を記者に打ち明ける。その時、オウムが会計士に飛びかかり、そのはずみで会計士は中央井戸に落下した。爆破して補償金をせしめる計画だったから、井戸の周りにつけるはずだった手すりを省略したのが運の尽きだった。
オウム、記者の肩にとまる。
第7章
惑星ブレロンティンの警察長官は、凶暴な警察ウサギを放って惑星ヤサカの抗議者たちを血祭りにして鎮める。
ブレロンティンの元首は、レオヴィナスが見つからないことに気を揉んでいる。本当はレオヴィナスと一緒に記念撮影したかったのだが、これ以上の混乱を避けるためと促され、レオヴィナス抜きで出航イベントの会場に向かう。その際、これも大事な慣習だからと言われ、嫌いな魚ペーストのサンドイッチをしぶしぶ受け取る。
元首が宇宙船にシャンパンの瓶をぶつけると同時に、宇宙船のカバーが取り除かれる。その大きさと美しさに観客は息を呑む。
宇宙船が建造デッキを離れて動き出してからわずか10秒後、宇宙船は突然姿を消した。
第8章
ダンとルーシーは13年もの付き合いがあるカップルで、元牧師館だった建物をホテルにする計画を立てている。元手となる資本は、ダンがナイジェルと共同経営していた「トップ10トラベル」という旅行会社を売却したことで手に入ったものだ。そういう次第で、ダンとルーシーに加え、ナイジェルとナイジェルの恋人ネッティの4人が、今、ホテルに改造する予定の建物を検分している。
もともとルーシーは、サンタモニカのバーでたまたま出会ったナイジェルから声をかけられ、彼の共同経営者のダンを紹介された。が、ナイジェルのことを知れば知るほど、ルーシーは彼のことが嫌いになっていた。ブロンド美女のネッティをバカ扱いしているところも気に入らない。
ナイジェルが譲渡書類にサインするため、ホテルに戻る必要がある(後に、譲渡書類はまだ届いていないことが判明する)。車を出す前に、ネッティは星空を背景に建物の写真を撮っている。が、フラッシュを使わずにシャッターボタンを押した(真っ暗な夜空の写真しか撮れてない)ことで、ナイジェルはネッティをいじる。
4人が車に乗り込むと、突然、強い風が吹く。そして、流れ星のようなものが見えたかと思うと、夜空に大爆発が起こり、巨大な何かが落下して元牧師館を真っ二つにした。
ネッティは「宇宙船だ!」と叫んで駆け寄ろうとする。残りの3人は止めようとして慌てて彼女の後を追う。
宇宙船の中から出てきた何かが、彼らに丁重に挨拶する。ルーシーは悲鳴をあげ続けるが、宇宙人は彼らにお詫びとして無料クルーズ旅行に招待すると言う。ネッティは迷わずオファーを受け、ダンはネッティに続き、ルーシーもその場の勢いでダンの後に続いた。
宇宙船の中を覗くと、そこが美しいロビーでロボットがいて、自分たちに向かってお辞儀している。どうやら怖くはなさそうだ。
「宇宙船タイタニックは、最新鋭の豪華客船です」
ロボットたちは、自動的に相手の脳をスキャンして相手の言語パターンを調整することができる。つまり、地球人たちは知らぬ間にブレロンティン語を話している。宇宙船は、宇宙船タイタニック本体めがけて飛んでいく。ナイジェルだけが一人、地上に残って宇宙船が飛び去るのを見ている。心なしか、ほっとしているような素振りがある。が、車に戻り、隣の席に見知らぬ白ヒゲの老人が泣きながら座っていることに気づいて飛び上がる。
第9章
宇宙船が離陸した時の影響で重力がかかり、そうとは知らぬまま3人は失神した。
ネッティは目を覚まし、一人、自宅のフラットと同じくらいの広さの客室に運び込まれたことに気づく。テレビ画面は砂嵐になっていて、リモコンらしきものを押してみてもテレビ画面に変化はないが、客室の隅のランプが「ようこそ!」と喋り出す。テレビのリモコンと思われたものは、客室の世話係を務めるロボット、ベルボーイならぬベルロボットを起動するためのものだった。
ベルボットが貸してくれたメガネをかけると、意味不明な宇宙人の文字が自動翻訳されて英語に見えるようになる。ネッティはベルロボットに友人たちに会わせるよう命じるが、ベルボットは彼らの居場所を知らない。でも、ロビーのデスクロボットに訊けばわかると言う。が、ネッティたちがいる「スーパー銀河クラス」からはロビーに電話できないので、デスクボットに訊きたければ自力でロビーに行くしかない。ベルロボットは、仕事の性質上、客室の近くから離れられないことになっている。ルーシー、ドアをノックする音で目を覚ます。ノックしていたのはダンだった。2人は、ネッティを探すためロビーに向かうことにする。その途中でダンとルーシーが乗り込んだエレベーターにはリフトロボットがついていて、ロビーのある階に行くよう指示するのに意外と手こずる。
エレベーターから見える宇宙船内部はすごく豪華で、ダンとルーシーが古い牧師館を改装して作る予定だったホテルとは雲泥の差だ。この光景を見てダンがどう思っているか、ルーシーにはわからない。これまでだって、ダンの考えをわかったためしがない。
最上階でエレベーターを降り、ロビーに向かって歩いていくと、ロビーのデスクランプと話をしているネッティを発見する。デスクランプとの会話は不毛に終わったようだ。
ダンは、一刻も早く船を降りるにはどうすればいいか、ドアロボットに訊く。ドアロボットいわく、この宇宙船は航行中なので下船は不可能とのこと。安易に宇宙船に乗船したネッティに、ダンは怒り心頭だ。パニックを起こしてまたしても叫び声を上げ始めたルーシーに、ダンは黙れと怒鳴りつける。
ネッティは、あまり気にしていない。下船するのはもう少し宇宙船を見物してからでも遅くないと思っている。でもまずは船長と会って相談すべし、ということで、ドアロボットに質問したところ、ファーストクラスの客でなければ船長とは会えないとのこと。3人は強引にファーストクラスエリアに入ろうとするも、ドアロボットに「凶暴なウサギを連れたセキュリティを呼びますよ?」と言われ、止められる。どのみち、ドアは鍵がかかっていて入れないのだが。
ダンは、クレームを入れられたくなければ無料でファーストクラスにアップグレードしろとドアロボットを脅す。でも、そもそもアップグレードはドアロボットには無理、それができるのはデスクロボット――さきほどネッティが話しかけていた、あのデスクランプだ。
そこで3人は、大女優とマネージャーと弁護士のフリをして芝居を打ち、デスクロボットにファーストクラスへのアップグレードを命じるも、失敗する。どうしてもアップグレードしたいなら銀河ゴールドカードで支払いするしかないらしいが、そもそもそんなカード自体持っていない以上、どうにもならない。
彼ら3人が実は「スーパー銀河クラス」の無料優待券の客だとわかると、デスクロボットの対応はいよいよ冷たくなる。セカンドクラスからのアップグレードならまだしも、優待券の客など上級の船員に会うことすら禁じられていると言う。
ならばせめて「スーパー銀河クラス」からセカンドクラスにアップグレードできないかと訊くと、デスクロボットは、それなら無料のアップグレードのクーポン券が客室に置いてあるはずだと教えてくれる。
第10章
3人はそれぞれの客室に戻ることにする。
自分の客室の名前を覚えていたネッティは、難なく戻ってクーポン券を見つける。さっさとロビーに戻り、アップグレードを済ませ、セカンドクラスエリアへと急ぐ。
ダンとルーシーは、自分の客室の名前を覚えていなかったため、客室のドアというドアを片端から試してみるしかない。2人はイライラして喧嘩腰になる(ダンがネッティに色目を使っている疑惑など)。ようやく自分の客室のドアに辿り着き、バウチャーを手に入れる。その頃、ネッティはセカンドクラスエリアに到着している。広い運河と、運河に浮かぶゴンドラが目に入る。近くにいたゴンドラ漕ぎのロボットに声をかけ、エンジンルームに連れて行ってくれるよう頼む。
ネッティは、異星人の宇宙船で意外とくつろいでいる自分に驚く。この3ヶ月というもの、ナイジェルにべったり依存していたのに。今から地球に戻っても、ナイジェルは自分を待っていてはくれないだろう。でも、今のネッティにはそのことがあまり気にならない。
エンジンルームに着くと、すごく寒い。ネッティがエンジンルームを目指したのは、ここなら船長に直接繋がる電話があると踏んだからだったが、電話の代わりに爆弾を発見してしまった。
と、その時、ネッティは突如暗闇に吸い込まれてしまった。
第11章
ダンとルーシーもセカンドクラスにアップグレードできた。が、ファーストクラスにはなれない。
デスクボットと言い合っているうちに、どんどん寒く、どんどん息苦しくなってきたことに気づく。この宇宙船は、ファーストクラスもしくはセカンドクラスの客がいないと酸素と暖房をケチる仕組みになっているらしい。おまけに、バウチャーからのアップグレード客については月末まで登録されない仕組みでもあるらしい。
ネッティを見つけて3人で行動しようと言うダンに対し、ルーシーはネッティに気があるんだろうと詰問する。そして、ファーストクラスへのアップグレードの件はダンに委ね、自分は酸素供給のトラブルのほうに専念すると言ってその場を離れる。
ダンはひとりぼっちになる。でも、今さびしいのはルーシーがいないからではないような……?
第12章
ルーシーは、LAで生まれ育ったにもかかわらず(?)、頭がよくて優秀な弁護士である。その知力を生かしてエレベーターへと向かう。エレベーターのそばにはフロアガイドがあるはずで、フロアガイドを見れば医務室の場所がわかるはず。そして、医務室には酸素ボンベがあるはずだ。
確かに宇宙船タイタニックにも広大な医務室はあった。が、クレジットカードがなければ利用できない仕組みのようだ。そこでルーシーは別の誰かの姿を目にする。宇宙人が2人いて、そのうちの一人(記者)がルーシーを見ている。逃げようとするルーシーをつかまえ、失神したルーシーを最寄りのベッドに寝かせる。
意識が戻ったルーシーは、自分がベッドにしばられていること、宇宙人が別の死体(会計士のスカリオンティス)を検分していることに気付いて悲鳴を上げる。近づいてきた宇宙人(記者)は、ルーシーの口をふさぎ、今は宇宙船に仕掛けられた爆弾を探しているところだから黙れと言う。
記者はスカリオンティスのポケットから紙片を見つけて立ち去ろうとする。ルーシーは必死で記者を呼び止め、拘束を解いてもらう。
酸素より爆弾のほうが緊急性が高い、ということで、記者とルーシーはセカンドクラスエリアへと戻り、ゴンドラに乗ってエンジンルームへ行く。
記者が何やら痛がっている様子なので、ルーシーが訊くと、スカリオンティスにランプで殴られたとのこと。ルーシーは傷口からガラスの破片を抜いてやる。記者から何かを渡されたのでお礼の品かと思ったら、それは絆創膏だった。記者いわく、「失血死する前に貼ってくれ」。
第13章
ルーシーと記者、エンジンルームに入る。
記者、部屋の隅にあったキャビネットを開けて、「Press To Arm」と書かれたボタンを押す。すると直ちに爆弾が起動し、カウンドダウンを始めた。記者の使っていた翻訳ソフトが変換ミスをし、記者は「Please Press Dog」と読んでしまったらしい。
パニックを起こして叫び始めたルーシーに、記者が黙ってくれと言う。黙ったルーシーに、記者はキスする。
こうなった以上、救命ボートを探して逃げ出すしかない。ダンはデスクランプと交渉を続けるがうまくいかない。そこへルーシーと謎の男(記者)が戻ってくる。
救命ボートはファーストクラスにしかない。ダンは、今すぐアップグレードしないとこの不始末を世間にバラして会社ごと潰すと脅すが、デスクロボットには通じない。記者がデスクロボットを暴力で脅しても、やはり効かない。
そこに、ひどく年老いた人物が現れ、全員をアップグレードするようデスクロボットに命じる。デスクロボットはすんなり応じ、船の酸素供給も復活する。全員でファーストクラスエリアに移動する。
第14章
ダンは、謎の老人の正体がネッティであることに気づく。
宇宙船タイタニックのエンジンはレオヴィナスの特製で、ブラックホールを利用している。危険だから安全対策が必要なのに、マネージャーのブロボスティゴンも会計士のスカリオンティスも「どうせ誰もエンジンルームには入らない」と手抜き工事をした。そのせいでブラックホールに落ちたネッティは、ものすごい勢いで時間と距離を移動し(どうして助かったのか、ネッティにも不明)、そのせいでポイントマイルがすごく溜まり、溜まったマイルでみんなをファーストクラスにアップグレードすることができた。
ファーストクラスエリアに入った途端に倒れたネッティをそのままに、ルーシーと記者は救命ボートを探す。ダンだけがネッティを助けようとする。
救命ボードへの道順は掲示されていたが、肝心の救命ボートは積まれていなかった。例によってスカリオンティス「どうせ客はいないんだし」と判断したせいだ。
ルーシー、記者にキスする。もうじき死ぬ、というやけっぱちな気持ちから2人はその場でセックスするが、時間になっても爆発は起こらなかった。
第15章
ネッティはダンに、爆弾を止めるためにエンジンルームに行って、爆弾に話しかけるよう頼む。
ダンがエンジンルームに駆け込むと、大きな爆弾が目に入る。爆弾はカウントダウンをしているが、ダンが話しかけるとどこまでカウントしていたかわからなくなって、また最初からカウントし直す。
これでカウントダウン完了まで16分の時間を稼げた、ということで、ダンはネッティのところに戻る。ダンは、ネッティの頭の良さに初めて気づく。ルーシーは、内心のバツの悪さを隠して、地球では初対面の相手とセックスするのはよくあることであるかのように振る舞う。記者は、自分たちの種族と違って、地球ではデートも婚約もなしにいきなりセックスできることに感心する。そしてすっかりルーシーに惚れ込んでしまい、爆弾もそっちのけでいちゃつこうとする。
エンジンルームに戻り、ルーシーは必死で爆弾に話しかけてカウントダウンの邪魔をする。記者にも話しかけさせて、その隙にこの宇宙船の船長室を探しに行きたいと記者に言うと、記者は理性を取り戻すにはあと1回オーガズムが必要だとルーシーにせがむ。
第16章
その頃、ネッティは宇宙船タイタニックの美容室にいる。美容室だと知らなければ拷問部屋みたいに見える装置が並んでいる。「Press for service」と書かれたボタンを押すと、レオヴィナス特製の美容マシンが動き出す。
ネッティの顔を覆うガラスケースに、リラックス効果のある紫のガスが送り込まれる。ネッティは、ダンが戻ってくるまでこのまま寛ぐことにする。エンジンルームでは、記者がルーシーに3回目をねだっている。記者との会話とセックスに気を取られているうちに、ルーシーは危うく爆弾のカウントダウンを止め損なうところだった。
そこへダンがエンジンルームに飛び込んでくる。ルーシーと記者がセックスしたことに気付いて記者を殴ろうとするが、ルーシーが間に入る。ダンはしぶしぶ納得。とにかく今は、爆弾のカウントダウンを除けば、宇宙船の船長をつかまえて地球に連れて行ってくれるよう頼むのが先決、ということで、ダンはエンジンルームを出て宇宙船の先端へと向かう。ルーシーは、なおもいちゃつこうとする記者をかつて習った防御術で投げ飛ばし、ダンの後を追って船長を探しに行く。実のところ、船長はこの宇宙船に乗船していないのだが。
第17章
ルーシーがダンに追いついた頃、ダンは船長室を見つけていた。でも、肝心の船長はいない。
船長室にはコンソールの画面が3つあるが、テトリスとかシューティングとかドライビングのような、ビデオ・ゲームみたいなものが映っている。宇宙船の航行を管理しているというより、アミューズメントパークっぽい。実際、宇宙船タイタニックは人工知能タイターニアによる全自動運転が基本なので、船長はあまりやることがないのだ。
ダンとルーシー、記者のことや過去の男のことなどで一通り喧嘩した後、今後の結婚について話し合う。ダンは、ホテルに造り直す予定だった牧師館は潰れてしまったけれどまた建て直してホテルを造り、その経営が軌道に乗ったらルーシーと結婚すると言うが、それもこれも地球に戻れたらの話。
船長室のコンソールに映るゲームもどきは、単なるゲームではなかった。その証拠に、窓から見える光景とゲームの動きが一致している。宇宙船タイタニックは本当に外から攻撃されている。
そこに記者が飛び込んでくる。記者いわく、宇宙船は全自動だけど、いくつかのパーツが欠けていてそれを正しく戻さなければならない、とのこと。そうこうしている間に、宇宙船タイタニックは小さい宇宙船に取り囲まれていて、「協力しろ」との声が聞こえてくるが、どう対処すればいいのか3人にはわからない。
続いてミサイルを撃ち込まれ、「降伏しろ」と言われる。3人は「降伏する」と言いたいが、どうすれば相手に声が届くのかがわからない。
攻撃が始まる。が、しばらくすると攻撃は止まり、攻撃してきた相手が宇宙船タイタニックの修理を始める。記者いわく、攻撃してきたのはヤサカ人たちだが、彼らは壊れたままのマシンを放置できない気質らしい。で、「修理が済んだらまた攻撃を始める!」
記者は、ダンとルーシーに武器を渡す。ヤサカ人たちは、現実世界とデータ世界の両方でこの船を乗っ取るつもりなので、こちらもその両方で戦わねばならない。ということで、ダンは記者からバーチャル・リアリティのヘルメットを渡される。
ダンがバーチャル・リアリティに没入したと見てとるや、記者はルーシーにキスしてまたいちゃつこうとする。ルーシーは記者をおしのけ、ヤサカ人たちの攻撃を思い出させた上で、記者に「ところで爆弾は?」と訊く。記者は電話越しに爆弾に話しかけ、間一髪のタイミングで切り抜ける。次の危機まであまり時間がない、ということで、記者とルーシーは急いでセックスする。
第18章
外から叩くような音が止み、敵(?)が宇宙船内に入ってきた。
記者は武器を持てるだけ持って部屋から出る。ルーシーも続き、運河のところでヤサカ人たちとの撃ち合いになる。
ダンはバーチャル・リアリティのヘルメットをかぶったまま、現実世界の撃ち合いに気づかずふらふらと出てくる。そんなダンをルーシーは押し戻し、記者と共に従業員室に撤退する。
第19章
ヤサカ人の襲撃チームのリーダー、ボルファスは、従業員室に入るなり、焦げたカーテンを交換させる。
ヤサカ人たちは、この宇宙船を製造したことを誇りに思っている。とりわけカーテンには思い入れがあり、それを傷つけたブレロンティン人への怒りが爆発し、その場にいた記者、ルーシー、ダンの3人に向かって銃を撃つ。
といっても、ヤサカ人たちは職人技を愛する種族であり、それをダメにされると過剰に怒りが炸裂する傾向がある。そのため、怒りにまかせて銃を撃ちまくっても人や物に深刻なダメージを与えない「SD銃」というものを開発した。ヤサカ人たちが3人に向かって撃ったのもこのSD銃であり、3人は怪我はしなかったものの、ボルファスに逮捕される。
ボルファスは、宇宙船の内装がお粗末な仕上がりであることに気付き、怒りにまかせてまたSD銃を撃ちまくろうとする。が、その時、部屋に入ってきたネッティを見て一目で恋に落ちる。ネッティは、宇宙船の美容マシンの成果で若さが戻っただけでなく、前より美しさが増している。そんなネッティに、ボルファスは挨拶し、部下たちを紹介する。
記者、ルーシー、ダンの3人が爆弾について騒いでもボルファスは耳を貸さず、3人を監房送りにする。が、ネッティに言われると携帯電話を貸し、彼女が爆弾に話しかけて時間稼ぎをする。
ネッティはボルファスにこれまでの経緯を説明し、ボルファスはネッティたちを地球に送り届けると言ってくれる。
第20章
ダンと記者は同じ監房に入れられ、ルーシーは別の監房に入れられる。
記者は、ルーシーに誘われてセックスしたことをダンに話し、ダンは記者に飛びかかる。
喧嘩騒ぎを耳にしたルーシーが「やめて」と叫び、ダンは記者に休戦を申し出る。とりあえず、セックスの話はしないこと。それから、記者がこの宇宙船について知っていることをすべて話してほしい、と。
記者いわく、スクープのために単独で宇宙船に潜り込んだが、宇宙船は発射直後から壊れていて、見知らぬ惑星(地球)にぶつかった。ファーストクラスのダイニングから人の声が聞こえたので行ってみると、会計士のスカリオンティスにやられたレオヴィナスが倒れていた。レオヴィナスは、助けようとした記者を振り切って、外の惑星に飛び出してしまった。どうやら記者のことをブレロンティン人だと思い込んだらしい。
記者、ボルファスから呼び出される。ボルファスは、人工知能のタイターニアに地球に行くよう指示しようとして人工知能の中枢部分が失わていることに気付き、記者のしわざかと疑っていた。もちろんそうではない。記者と話し、どうやら船外に運び出された様子はないから、恐らくまだ船内のどこかに隠されているにちがいないという結論に達する。
第21章
宇宙船のロボットたちの動きがどんどんおかしくなっていく。
中でも、バーのロボットは、伍長のゴルホリウォルが頼んでもバーの棚にある人工知能の一部とみられるパーツを渡してくれない。バーカウンターの中にも入れてくれない。それでも、人工知能のピースがどこに隠されているのかだけは大体判明した。
牢屋番は、一人で閉じ込められていたダンのことも解放してくれる。ダンは、ルーシーがいる船長室に一直線に向かう。
その頃、ルーシー、記者、ネッティ、ボルファスは宇宙船の窓から惑星ヤサカを見ていた。宇宙船は、惑星ヤサカを視認できる場所にいたのだ。
ボルファスは、ブレロンティンの攻撃船の存在に気づく。ざっと50か60ほどの船が、宇宙船タイタニックに向かってくるが、これらはブレロンティンの保険会社の船だった。法的には宇宙船タイタニックは保険会社のものだから、速やかに引き渡せと言う。ボルファスが拒否すると、傭兵たちが乗り込んできた。
安全のため、ルーシー、記者、ネッティは再び監房に入れられることになる。が、その途中で傭兵たちと出くわし、応戦することに。
ネッティ、爆弾のことを思い出して電話する。ギリギリのところで間に合うも、爆弾の様子もおかしくて、「あなたのために最後にもう一度だけカウントをやり直します」という返事が返ってくる。あまりに間一髪のタイミングだったため、危機を脱したとわかった途端に腰がくだけてしまったネッティの体を、ダンが支える。
ブレロンティンの傭兵たちはあっさり退散する。地球人たちの容赦ない反撃に恐れをなしたらしい。というのも、普通は相手に武器を向けて直接撃ったりしないからだ。ボルファスは、ネッティも戦ったと知ってたじろぐ。
ともあれ、このままではあと13分ほどで爆弾が爆発してしまうから、まずは爆弾の件を最優先で対処しなければならない。爆弾は、ネッティが話しかけても無視してカウントダウンを続けている。連れてこられた爆弾処理ロボットが爆弾の金属プレートを外し、カウントダウン停止ボタンを押す。確かにカウントダウンは止まったが、爆弾はデフォルト・モードになった。これを正常に戻すにはマニュアルが必要で、ロボットはパニックするが、ネッティがマニュアルを見つける。マニュアルによると、デフォルト・モードになるとあとは特定の時間(6ドーミリオン日)が過ぎたら自動的に爆発する仕組みになっていて止められない、とのこと。
第22章
6ドーミリオン日は、地球の時間に換算すると大体10日間くらいになる。
ダン、ネッティ、ロボットは、船長室に戻る。
最後の希望は、人工知能のピースをすべて見つけることだ。そうすれば、タイターニアが爆発を止めてくれるはず。ボルファス、ヤサカの運命をかけてピースをもう一度探すよう部下たちに命じる。
その時、ルーシーの悲鳴が聞こえる。実は、ブレロンティンの傭兵たちとの応戦が終わった後、ルーシーは記者に別室にひっぱりこまれ、またしてもセックスをせがまれていた。記者から「結婚してくれ」と言われてつい承諾するも、結婚相手はダンのはずだった、と慌てたところにオウムが飛んできて、ルーシーがオウムを払いのけようとしてうっかりインターコムのボタンを押してしまったのだ。船長室では、ルーシーの悲鳴に続き、オウムが「すごい天才」を叫ぶのも聞こえたが、そこでインターコムが切れて通話終了となる。
ボルファスはオウムの言葉に強く反応する。というのも、惑星ヤサカではオウムが真実を伝えると信じられているからだ。一同が揃って声の聞こえてきた部屋に飛び込むと、記者とルーシーがセックスしている真っ最中だった。当然、ダンはブチ切れる。
ボルファスが人工知能のありかについてオウムに問うても、オウムは「すごい天才」と繰り返すのみ。が、ネッティがオウムが正しい答えを言っていると気づく。「すごい天才」とはレオヴィナスのことで、レオヴィナスがパーツを持ったまま地球で下船してしまった、だから宇宙船の中をくまなく探してもすべてのパーツが見つからないのだ、と。
でも、地球の位置を特定できるのはタイターニアだけ。そのタイターニアがないとなると八方塞がりだ。
宇宙船タイタニック、惑星ヤサカのドックに入港する準備を始める。
第23章
惑星ヤサカで開かれた祝賀パーティーは盛り上がらない。ヤサカ人にしてみれば、せっかく宇宙船タイタニックを取り戻したというのに、自爆スイッチが入っているためしばらくのちに銀河のはずれに捨てにいくしかなくて、保険金の支払いを受けることができない。地球人にとっても、宇宙船タイタニックの人工知能がなければヤサカ人たちに地球の場所を教えられないため、地球に戻れる見込みがゼロになる。
ネッティだけは、まだあきらめ切れずにいる。何か、手段が残っているような気がしてならない。
パーティーは伍長ゴルホリウォルの庭で開催されている。惑星ヤサカでは、国家規模のイベントであっても個人の持ち回りで行うのが慣習になっていて、惑星ブレロンティンのおいしくないカナッペパーティーと違い、豊富な食糧でのバーベキューパーティーが行われている。
ボルファスはネッティにうっとりしながら落ち込んでいる。妻からは医者に診てもらえと言われる。惑星ヤサカでは恋は病気扱いなのだ。
ルーシーは、落ち込んでいるダンに結婚を申し込むも拒否させる。そんな二人のところにネッティがやってきて、地球でのホテルビジネスはナイジェルの裏切りで最初から不可能だったことを明かす。資金源と考えていた旅行会社は、既にナイジェルが二束三文で売り払った後だった。この期に及んでネッティが白状したのは、ルーシーとダンに腹をくくって惑星ヤサカで生きていく覚悟を持ってもらうためだったが、ルーシーもダンも、相手に気を遣っていただけで本心では二人ともホテルビジネスに関心がなかったことがはっきりする。
第24章
ネッティは惑星ヤサカの男たちから求婚されまくる。首相から手渡された特製の香水をつけると、その香りでダンまでネッティにぞっこんになり、無理に迫ってネッティに押し除けられる始末だ。
そのネッティは、自分のハンドバッグが見つからず気がかりだったが、伍長のゴルホリウォルがネッティに渡してくれる。惑星ヤサカでは、パーティのホストは客人のハンドバッグを預かり、パーティーの間に中身を修理するのが礼儀だったからだ。ゴルホリウォルは、ネッティのハンドバッグの中に入っていたネガフィルムをプリントしてくれていて、そこには破壊される前の牧師館の写真もあった。
ネッティ、ヤサカ人たちのところに戻り、航海士のロデンにその写真を見せる。写真に映った夜空の星の位置関係から、地球の場所を逆算して特定できるのではないか、と。ロデンは、理屈の上では可能だが実際にできるかどうか挑戦してみると言い、ゴルホリウォルから元のネガフィルムを受け取る。
第25章
2ドーミリオン日かかって、地球の場所を特定できた。ただ、惑星ヤサカからは遠すぎて通常の飛行だと地球にたどり着くまで何週間もかかり、その前に爆弾が爆発してしまう。宇宙船タイタニックには特別な機関が備わっていて、それを使えば爆発する前に地球に行ける。
ダンとネッティが地球探しに専念していた時も、ルーシーだけは一人離れていた。ネッティがルーシーを見つけて地球に戻れるかもしれないと告げると、ルーシーは地球に戻る気になれないと言う。ダンと共通の夢を持っていると思っていたが、それは誤解だった。実を言うともともとルーシーが恋していたのはダンではなくナイジェルのほうで、それというのもイギリス人のナイジェルがエキゾチックだったから。ルーシーにとって、ダンは単なる穴埋めにすぎなかった。
そこに記者がやってくる。宇宙船タイタニックの出航準備が整ったとのこと。そして、ルーシーが結婚を承諾してくれるまで離れない、と。ルーシーは、彼女のほうこそ彼と一緒にいるためにここに留まるつもりだった、と答える。とは言え、ここまで来た以上、事の顛末を最後まで見届けよう、ということになり、ネッティ、ルーシー、記者の3人は宇宙船タイタニックへと向かう。
第26章
宇宙船タイタニック、スムーズに地球に向かう。
ボルファスは、ネッティへの恋をあきらめようと頑張っている。
ネッティは、ダンのことが気がかりだ。ダンは落ち込んで食事時間以外は船室に閉じこもっている。
ルーシーと記者も船室に閉じこもっているが、こちらは二人でセックスざんまい。
プロキシマ・ケンタウリを過ぎ、地球がだいぶ近づいてきたので、ボルファスと航海士のロデンはネッティに地球の位置を確認してもらおうとするが、もちろんネッティにもダンにもルーシーにもできない。太陽を特定できた後でさえ、この3人は地球が太陽から何番目の惑星なのか答えることができず、ロデンは心底あきれる。危うく火星に着陸するところだったが、赤ではなく青い惑星のはずだということで間違いに気づく。
4人は着陸用小型船で地球に入る。半日ほどの時間で、レオヴィナスと人工知能のパーツを見つけなければならない。
第27章
レオヴィナス、言葉の通じない地球で一人取り残されている。
オックスフォードの警官はレオヴィナスを不法移民とみなし、外国語のできる大学教授が呼ばれる。が、どんな外国語で話しかけても、レオヴィナスには通じない。ただ、レオヴィナスが話しているのはどの言語でもないことだけははっきりした。つまり単なるデタラメであり、レオヴィナスはボケ老人扱いされて留置所に入れられる。
レオヴィナスにも、入れられたのがホテルでないことだけはわかる。「弁護士を呼べ」と言ってもやはり言葉は通じない。
第28章
着陸用小型船が、壊れた牧師館のそばに着陸する。
ダンが船から出た途端、地元の警察に取り囲まれる。ダンは船の中に戻り、離陸させる。
パニックを起こしているダンとルーシーを横目に、ネッティが仕切り直す。ダンとネッティを、彼らが以前滞在していたホテルの近くにこっそり下ろして辺りの様子を探らせ、ネッティと記者はナイジェルに会いにいく。ナイジェルなら、ひょっとすると宇宙船タイタニックから出てきたレオヴィナスを目撃しているかもしれないからだ。
着陸用小型船は、普通の車のフリをしてM40を走っていく。ロンドンに近づくにつれ渋滞がひどくなったため、普通の車のフリをやめて空中に飛び上がるも、気づく人は誰もいない。
ネッティは合鍵を使ってナイジェルの家に入る。ナイジェルは、ナンシーという女性と一緒にベッドにいた。
ネッティ、ナイジェルから白いヒゲの老人に関する情報を聞き出す。ナイジェルいわく、彼の車に乗っていたので警察署に送り届けたとのこと。ネッティはナイジェルとナンシーにキスして外に出る。
第29章
レオヴィナス、1週間のつらい監獄生活を耐えている。
話す相手も読むものもない中で、過去の自分を振り返り、おのれの思い上がりに気付く。素晴らしい才能に恵まれたのに、結局ただの一人の幸せにできなかった。自分を持ち上げることしか頭になく、愛したと言えるのは人工知能のタイターニアだけ。
そんな自己憐憫が楽しくなり始めた頃、訪問者がやってきた。記者とネッティだ。
レオヴィナスは記者を大歓迎する(記者にとっては意外な反応だった)。続いてネッティに求婚する(香水の残り香による効果)。
記者とネッティがタイターニアのコア部品について訊くと、レオヴィナスはその辺に放り捨てたと答える。記者、部屋の隅に放置されていた部品を見つける。
第30章
ダンとルーシーは、白ひげの老人の目撃者を見つけられず、空しくホテルに戻る。もはや二人の間には何もないことをルーシーはしみじみ感じる。二人は別れを決意する。
その時、シャワーで香水を洗い落としたネッティ、記者、レオヴィナスの3人がやってくる。既に宇宙船タイタニックに戻るべき時間は過ぎていたが、ダメ元で着陸用小型船から戻ってみると、宇宙船はまだ爆発していなかった。単なる計算間違いで、実際にはまだ20分残っていたとわかる。
レオヴィナスがタイターニアの頭部を設置し直すと、女神像が息を吹き返す。そして、爆弾の自爆を直ちに止めてくれる。
ヤサカ人たちは、お礼として4人に宇宙船の共同権をくれる。でも、ダンは地球に戻ることを選ぶ。ルーシーと記者は、宇宙船を高級ホテルとして経営することにする。
その後、ルーシーと記者は結婚する。記者が執筆した体験談はベストセラーになり、金ができて記者を続ける必要がなくなったため、自分の本名は「Tiddlepuss」だとルーシーに告げる。ルーシーは彼のことをティドルと呼ぶことにする。
レオヴィナスはネッティへの失恋を乗り越え、タイターニアと楽しく会話する日々を過ごす。自信を取り戻したけれど、以前ほど尊大ではなくなった。
ボルファスを筆頭に多くのヤサカ人たちは、ネッティへの想いをなかなか断ち切れずにいる。
ネッティは、ダンに求婚し、仲のよい恋人兼友人になった。数学の学位を取ってレオヴィナスの仕事を手伝って大金を稼ぎ、ダンと共に古い牧師館を改装して小さなホテルの経営に乗り出す。
オウムも元気、惑星ヤサカで表彰され特製メダルをもらう。やがて生まれた4羽のヒナは、ダン、ルーシー、ネッティ、キシャと名付けられた。