舞台版『銀河ヒッチハイク・ガイド』


<プロフェッショナル>

The Science Fiction Theatre Of Liverpool Production

公演日程: 1979年5月1日〜9日
公演会場:Institute for Contemporary Arts, London
演出:Ken Campbell

 『銀河ヒッチハイク・ガイド』、最初の舞台化は1979年5月1日から9日まで、ロンドンのICA(インスティテュート・フォー・コンテンポラリー・アーツ)で行われた。小説版『銀河ヒッチハイク・ガイド』が出版されるのは1979年10月だから、その半年近くも前のことになる。
 演出のケン・キャンベルは、『銀河ヒッチハイク・ガイド』という作品の特徴を最大限に活かすため、劇場に特殊な装置を導入した。役者が舞台に出たり引っ込んだりするのではなく、逆に観客をホバークラフト式の席に座らせ、舞台の回りを移動させることにしたのだ。このシステムを採った結果、客席はわずか80、興行全体でもわずか640席しかなく、チケットは公演のはるか前に全席売り切れとなった。かと言って、予備の席を用意することもできず、サイモン・ジョーンズいわく、「僕はアーサー・デントなんですが、と言ったら、まるで僕が『シバの女王です』と言ったみたいな目で見られた」。(Simpson, p. 27)
 興行面のみならず批評も好評で、次回は500人用のホバークラフトを用意して再演するとの報道もなされた。

The Theatr Clowyd Productions

公演日程: 1980年1月15日〜2月23日
公演会場:Theatres in Banor, Aberystwyth, Cardiff and Mold
演出:Jonathan Petherbridge

 ウェールズ地方の地元の劇団、シアター・クライドによる公演。ラジオ・ドラマ第1期の内容を舞台化したものだが、こちらもなかなか凝ったつくりになっていた。火曜・水曜・木曜に、コアなファンでない人向けに『銀河ヒッチハイク・ガイド』に出てくる2つのエピソードを取り上げて短くまとめたヴァージョンと、それから金曜・土曜はマニア向けに延々3時間に亘ってすべてのパートを演じるのだが、ただし話のつながりの基本的なところを、半時間の休みの間に観客に決めてもらうというヴァージョンと、2種類のヴァージョンが用意され、観客からも批評家からも好評を得る。そして、ロンドンの有名な劇場、オールド・ヴィク・シアターでの再演の申し込みも受けたが、不運なことに事情を知らないアダムスが、この時既に舞台化の権利をケン・キャンベルに渡していたため、実現しなかった。
 が、1981年の後半からは、同劇団による短い2エピソード・ヴァージョンでイギリス・ウェールズの各地で巡業公演が行われている。

The Rainbow Theatre Production

公演日程: 1980年7月16日から8週間の予定?
公演会場:Rainbow Theatre, London
演出:Ken Campbell

 1979年に大評判になったケン・キャンベル版の再演。だが、前回とは上演の規模が格段に大きくなった。
 ロンドンのレインボー・シアターは、3000人が収容できる大劇場である。予算は30万ポンド。劇場のロビーは宇宙船のデッキに造り直され、天井からは空飛ぶ円盤が吊された。アダムスは『銀河ヒッチハイク・ガイド』のいずれの舞台化には直接かかわってはいないが、それでもこの舞台のために新しく「本日の料理」のエピソードを書き足している。
 にもかかわらず、この公演は記録的な大失敗に終わった。批評はさんざん、客の入りは20パーセント足らず、興行は4週目にして早くも深刻な財政危機に陥った。8月20日の「スタンダード」紙で、副プロデューサーのリチャード・ダンクリーは何とかこの危機を乗り越える努力をするとの意向を示したが、その翌日の21日には同じ「スタンダード」紙で予定を3週間繰り上げて公演を打ち切ると報じられた。ちなみに、その「スタンダード」に掲載されたこの舞台の批評は、「この公演を観ることに匹敵するくらい悲惨な時間の過ごし方は、ちょっと他に考えつかない」(Gaiman, p. 56)だったが。
 この大失敗の理由について、アダムスは、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のおもしろさはもともと送り手を受け手が近い距離にいてこそ発揮されるのであり、それを3000人収容も大劇場でやろうとしたことに無理があったのでは、と語っている。また、ケン・キャンベルに言わせれば、レインボー・シアターに見合うサイズのホバークラフトを用意できなかったからだとか。(同, p. 57)

Theatre Royal

公演日程: 1982年5月〜6月
公演会場:Theatre Royal, Plymouth
演出:Jonathan Petherbridge

 シアター・クライドの、ジョナサン・ピーターブリッジ演出。1981年の公演の時と同じ俳優も何人か出演した。

Derby Playhouse

公演日程: 1982年9月〜10月
公演会場:Derby Playhouse
演出:Christopher Honer

 この舞台も、ピーターブリッジ版を脚色して上演された。

Belgrade Theatre

公演日程: 1983年6月7月
公演会場:Belgrade Theatre, Coventry
演出:Rob Bettinson

 ピーターブリッジ版の脚本で上演された。

La Boite Theatre

公演日程: 1983年10月〜12月
公演会場:La Boite Theatre, Brisbane, Australia

 イギリス以外の国で上演された、最初で最後のプロ公演。レインボー・シアター版の脚本と、ピーターブリッジ版の脚本の両方を折衷して新たに脚色された。この公演では、ザフォドの頭は一つで腕は二本にされている。

The Hitchhiker's Guide to the Galaxy Radio Show Live

公演日程: 2012年6月8日〜7月21日/2013年9月14日〜11月30日

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 (2012年のライヴを覗いて)1984年以降プロによる公演が行われなくなるのは、『銀河ヒッチハイク・ガイド』映画化の企画が持ち上がったためである。映画化にまつわる契約では、映画が完成するまで原作の視覚化は認められないので、プロの興行を行うことができなくなった。だが、この契約ではアマチュアの劇団が独自で公演することまでは禁止していないので、今も世界各地でさまざまな団体が舞台版『銀河ヒッチハイク・ガイド』を上演している。


<アマチュア>

※ アマチュアによる『銀河ヒッチハイク・ガイド』の舞台化については、MJ. Simpson, A Completely and Utterly Unauthorised Guide to Hitchhiker's Guide を全面的に参照した

1982年秋
performed by students at a school in Harnover, New Hampshre, USA

 小説版『銀河ヒッチハイク・ガイド』を脚色したもの。

1985年2月〜3月
Cresecent Theatre, Birmingham

 ピーターブリッジ版で上演。

1985
performed by students at Harwards Heath College, Sussex

1986年11月
performed by RATS(Redditch Amateur Theatrical Society) at the Palace Theatre, Redditch

 ピーターブリッジ版で上演。

1987年2月
performed at the Comedia Colonia in Germany

Axel Pape という俳優による一人芝居。

1987年4月
Portsmouth Drama Centre, Southsea

 『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズ3作目と4作目を合わせて舞台化した。

1988年12月
the Loft Theatre, Leamingston Spa

1990年
the Romsey Operatic Dramatic Society

1990年
the Menlo Players Guild of California

 1994年に再演された

1992年5月
the Bermuda Musical and Dramatic Society

 ピーターブリッジ版で上演。初日の公演には、その時ちょうどカリブ海周辺を旅行中だったエドワード王子も観に来ていたとか。

1994年12月
performed by students at Liverpool John Moore's University

1995年3月
performed by students at Barry Boy's School, South Wales

1995年5月
the Arena Theatre Company at the Regent Centre, Christchurch, Dorset

 1960年代風のポップ・ソングでミュージカル仕立てになっていた。結果は、M・J・シンプソンいわく「悲惨」だったそうだけれど(Simpson, p. 33)。

1996年6月
performed by students who had been studying the novel in English at Wildern School, Southampton

1996年10月
The Strathclyde Theatre Company

 あたかも『銀河ヒッチハイク・ガイド』というラジオ・ドラマの製作現場を際限したかのように、舞台の上で役者たちがマイクを囲んで立ち、ラジオ・ドラマの脚本を読んでいくという演出だった。

1999年4月
performed at the University of Hawaii

 30分ばかりの抜粋版。

1998年
Linz, Austria

2000年2月
by a group of German students at Brechtbau

 Freiberg で5月に再演された。

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