アダムスが脚本編集者として手掛けたうちの一本。
'Nightmare of Eden' は人によって評価の分かれる作品のようだ。ちなみに、オーストラリアのファンジンに掲載されたワースト調査では15位に入っている(Tulloch, p. 147)。ワープしていた二つの宇宙船が、実体化する際に衝突してしまった。救援にやってきたドクターとロマーナは、二つの宇宙船を安全に分離させようとするが、分子構造が不安定になっている船には、動物学者が絶滅危惧種を結晶化して保護するためのCET(Continuous Event Transmuter)プロジェクション・マシンがあった。ドクターやロマーナの目にはひどく危なっかしく見えるこの装置は、案の定、データ化されて閉じ込められているはずの異星エデンを実体化させ、エデンの危険なエイリアンを宇宙船内に解き放ってしまう。さらに、この宇宙船には何故か宇宙一危険な麻薬も見つかる――麻薬の密輸に手を染めているのは、一体誰なのか?
プロットの中に絶滅危惧種の保護や麻薬の密輸といった問題を上手に取り込んでいる、と言えなくもないが、実際に作品を観ていると、ドクターのノリの軽さや着ぐるみエイリアンのチャチさが手伝って、深刻に考えさせられるようなことにはならない。ただ、ラストを締めくくるロマーナとK9のやり取りは、いささか意味深い。
第1回放送日 1 1979.11.24
2 1979.12.1
3 1979.12.8
4 1979.12.15
キャスト一覧
| The Doctor | Tom Baker |
| Romana | Lalla Ward |
| Voice of K9 | David Brierley |
| Costa | Peter Craze |
| Crewman | Richard Barnes |
| Crewman | Sebastian Stride |
| Crewman | Eden Phillips |
| Della | Jennifer Lonsdale |
| Dymond | Geoffrey Bateman |
| Fisk | Geoffrey Hinsliff |
| Passenger | Annette Peters |
| Passenger | Lionel Sansby |
| Passenger | Peter Roberts |
| Passenger | Maggie Petersen |
| Rigg | David Daker |
| Secker | Stephen Jenn |
| Stott | Barry Andrews |
| Tryst | Lewis Fiander |
スタッフ一覧
| Director | Alan Bromly |
| Graham Williams | |
| Assistant Floor Manager | Val McCrimmon |
| Costumes | Rupert Jarvis |
| Designer | Roger Cann |
| Incidental Music | Dudley Simpson |
| MakeUp | Joan Stribling |
| Producer | Graham Williams |
| Production Assistant | Carolyn Montagu |
| Production Unit Manager | John Nathan-Turner |
| Script Editor | Douglas Adams |
| Special Sounds | Dick Mills |
| Studio Lighting | Warwick Fielding |
| Studio Sound | Anthony Philpott |
| Title Music | Ron Grainer and the BBC Radiophonic Workshop, arranged by Delia Derbyshire |
| Visual Effects | Colin Mapson |
| Writer | Bob Baker |
'Nightmare of Eden' のDVDは、2012年4月にイギリスで発売された。
〈オーディオ・コメンタリー〉
ララ・ウォード(ロマーナ)/Peter Craze(コスタ)/ボブ・ベイカー(脚本家)/Colin Mapson(視覚効果デザイナー)/Joan Stribling(メイクアップデザイナー)
〈特典映像〉The Nightmare of Television Centre
'Nightmare of Eden' 撮影の舞台裏を、視覚効果デザイナーの Colin Mapson、ビデオ効果デザイナーのA・J・ミッチェル、アシスタント・フロア・マネージャーの Val McCrimmon の三人が語る。予算がなくて思うような効果が得られなかった(というより悲惨な出来になってしまった)ことや、監督はキャリアの長いベテランだが『ドクター・フー』のような特撮を多用する作品を撮るのは初めてだった上、周りの人の忠告を聞き入れようとしなかったため、スタッフやキャスト、とりわけ主役のトム・ベイカーとの関係が険悪なものになった挙げ句、監督は降板になり、大混乱の中で製作が続けられたことなど、「今だから話せる」な内容ばかりで、これでよく完成にこぎつけたものだと感心させられる。
Going Solo
'Nightmare of Eden' の脚本を書いたボブ・ベイカーは、これまでデイヴ・マーティンと共同執筆していたが、今回初めて単独で脚本執筆に臨んだ。作品に麻薬を取り入れるというアイディアに、プロデューサーのグレアム・ウィリアムズは渋ったが、脚本編集者のダグラス・アダムスは気にしなかったという。また、ボブ・ベイカーはアダムスと話をしながら宇宙一危険な麻薬の正体を決めたらしい。ただし、もともとの麻薬の名前は'Zip'というシンプルなものだったのに、いつの間にやら発音しづらい奇妙な名称に変更されていたのだとか。
The Doctor's Strange Love
コメディアンの Josie Long、ライターの Joe Lidster と Simon Guerrier、『ドクター・フー』のファン3人が、'Nightmare of Eden' について語り合う。3人とも、作品に対してかなり好意的。