お薦めロシア・アニメーション

 ノルシュテイン作品の他にも、素晴らしいロシア・アニメーションはたくさんある。以下、今の私が思いつくお薦め作品を挙げてみた。勿論、私の独断に基づく選択なので趣味はとても偏っているが、もし何かの機会があったら、試しに一度、だまされたと思って観ていただけると嬉しい。少なくとも、ヘタな流行映画よりもハズレの確率は低いはずだ。


<長編アニメーション>
 ここに挙げた2作品は、ソビエト時代の長編セル・アニメーションの古典的名作。ディズニー・アニメーションとの趣きの違いをお楽しみあれ。

「イワンと仔馬」 1947年 監督:イワノフ=ワノ 58分

 原作はロシアの童話「せむしの仔馬」。カンヌ映画祭特別賞を受賞するほどの完成度の高い作品で人気も高かったが、逆にオリジナル・ネガが傷んでプリントできなくなってしまったため、1975年にイワノフ=ワノ自身の手によるリメイク版が製作された。その後、オリジナルを保管していた国立フィルム保管所が傷んだネガの修復に成功したため、現在では1947年度版を観ることができる。

「雪の女王」 1957年 監督:レフ・アタマーノフ 65分

 原作はアンデルセンの童話「雪の女王」。若き日の宮崎駿監督が、この作品を観て多大な影響を受けたというのは有名な話である。


<短編アニメーション>
 さまざまな手法と素材を使った、より実験色・芸術色の強い作品群。こんなアニメーションもあったのか、と目からうろこが落ちるはず。

「コンフリクト」 1983年 監督:ガリ・バルディン 8分

 マッチ棒を使ったマッチ棒アニメーション。マッチ箱から出てきた、青い頭のマッチと緑の頭のマッチ。二種類のマッチの間で、やがて陣地の取り合いが始まり、争いは次第にエスカレートしていく。シンプルな素材、シンプルな動き、シンプルな主題でありながら、その印象は強烈。

「ブレーク!」 1985年 監督:ガリ・バルディン 10分

 粘土を使ったクレイ・アニメーション。ボクシングの試合を、リズムの違う音楽に合わせてコミカルに描く。粘土アニメならではのアイディアも満載。ライプチヒ国際短編映画祭グランプリ受賞。

「ガイドゥーク」 1985年 監督:ユーリー・カツァプ/レオニード・ゴロホフ 10分

 両監督は旧モルダヴィア共和国に生まれ、モルドワフィルムでこのアニメーションを製作した。奥行きのある画面構成と民族色豊かな映像が美しい。カンヌ国際映画祭短編部門グランプリ受賞。

「紆余曲折」 1987年 監督:ガリ・バルディン 10分

 針金を使った針金アニメーション。最初はただの針金。それが動き出して人になり、今度は人が針金で家を作り、ペットの犬と作り、庭を作り、恋人を作るが。「コンフリクト」同様、寓意と風刺に富んだ作品。カンヌ国際映画祭短編部門グランプリ受賞。

「ムムー」 1987年 監督:ワレンチン・カラヴァーエフ 20分

 原作はツルゲーネフの短編小説「ムムー」。切り絵アニメーションの手法で製作された。孤独な庭番ゲラーシムにとって、唯一の友は子犬のムムーだった。だが、独裁的でわがままな領主の老嬢は、ゲラーシムにムムーを殺せと命じる。

「わが悲しみを誰につたえよう」 1988年 監督:ナターリア・オルロワ 10分

 原作はチェーホフの短編小説「ワーニカ」。靴屋に奉公に出された、幼い少年ワーニカの目に写る夜の都会と残酷な大人達の姿が、ガラスの表面に絵を描いて動かす「ガラス絵」アニメーションの手法で描き出される。

「夢」 1988年 監督:ニーナ・ショーリナ 10分

 19世紀ロシアの長編小説をモチーフとした、人形アニメーション。