ダグラス・アダムス関連人物一覧  -K-

Kaku, Michio ミチオ・カク
Kinnear, Rory ローリー・キニア


Kaku, Michio  ミチオ・カク 1947.1.24-

 日系アメリカ人の理論物理学者。2008年、イギリスの新聞『テレグラフ』のインタビューの中で、『銀河ヒッチハイク・ガイド』のファンであること、アダムス本人とも一度会っていることを明かした。中でも、「42」という答えが気に入っているとのこと。答えがあっても問いがわからなければ意味がない、というのは、アインシュタインの有名な方程式、E=MC2 がたとえE=MC2 が星々の秘密を解き明かしていたとしても、そもそもの問いがわからない人にはまったく意味をなさないのと同じことだ、と語っている。
 また、自身の著作の中でも『銀河ヒッチハイク・ガイド』を引用している。2005年に出版した著書『パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ』では、「量子論的な並行宇宙」と題された第六章の冒頭で、風見潤訳の『銀河ヒッチハイク・ガイド』の112ページより「無限不可能性ドライブは、超空間で退屈な時をすごす必要もなく、一瞬にして恒星間の広大な距離を横切ることができるというすばらしい方法である」を引用した後、

 ダグラス・アダムスが書いてベストセラーになった奇想天外なドタバタSF『銀河ヒッチハイク・ガイド』では、主人公が、最高に巧みな手段で星間旅行をする宇宙船にたまたま乗り込む。(略)不確定性原理を利用して広大な銀河間空間を一気に駆け抜けるという手段だ。もしもありそうにない事象の確率を制御できるようになったら、超高速飛行やタイムトラベルなど、どんなことでも可能になる。(略)アダムスは面白半分に書いているが、われわれ物理学者は、そうした確率がどうにか制御できるようになれば、魔法と変わらない芸当もできると認めている(p. 177-178)。

 さらにもう一カ所、宇宙における人類の位置づけについて、宇宙の中で人類だけを特別視する理由はないと考える「コペルニクス原理」と、人類のような知的生命体が存在することには特別な意味があると考える「人間原理」の二つの意見を紹介した上で、前者の例として、

ここでダグラス・アダムスのSFパロディ『宇宙の果てのレストラン』(風見訳、新潮社)も思い出される。その本に登場する総合認識渦動化装置は、どんなにまともな人間もひどい狂人に変えてしまう。装置の小部屋のなかに全宇宙の地図が現れ、小さな矢印で「あなたはここ」と示されるのだ(p. 412)。

 『パラレルワールド』の日本語訳が出版されたのは2006年1月のこと。この時点では既に河出書房新社から安原和見訳が出版されていており、またこの本の巻末につけられた「推薦図書」でもちゃんと安原訳が紹介されている。にもかかわらず、わざわざ絶版状態の風見訳で引用したからには、訳者の斉藤隆央氏は風見訳のほうがお好みだったのだろうか。なお、「SFパロディ」という言葉は、原書では 'parody' ではなく 'spoof' となっている。
 2008年に出版された『サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か』では、SF作品によく出てくるテレポーテーションが実際に可能かどうかを検証する章の中で、

  (最高に奇想天外なことも有限の確率で起こりうるという)量子論の奇妙だが奥深いこの特性を、ダグラス・アダムスは、映画にもなったドタバタ小説『銀河ヒッチハイク・ガイド』のなかでうまく利用している。銀河を駆け抜ける簡便な方法が必要だったため、無限不可能性ドライヴという「超空間でぶらぶら暇をもてあまさずに、無限大分の一秒で恒星間の広大な距離を横切るすばらしい新方式」を考え出したのだ。そのマシンでは、どんな量子論的事象の起きる確率も自由に変えられるので、とうてい起こりそうにない事象もよくあることになる。だから、最寄りの恒星系へひとっ飛びで行きたければ、その星にあなたが姿を現す確率を変えるだけでいい。すると、ほらどうだ! あなたは一瞬でそこにテレポートする。(p. 96)

  『サイエンス・インポッシブル』を翻訳したのも斉藤隆央氏だが、この本では風見訳にも安原訳にも頼ることなく、まったくオリジナルの訳文になっている。また、この本の訳者あとがきに

かりに超高度な文明があったとしても、われわれにコンタクトしようとはせず、人間がアリ塚に対してとる態度のように、単に無視するだろうと指摘する。そして邪魔になったらつぶしてしまうのだ(なんだが本書でも紹介されるドタバタSF『銀河ヒッチハイク・ガイド』で、宇宙規模の道路工事によって地球が吹っ飛ばされる冒頭のシーンを思わせるが、カク氏の頭にもそれがあったのかもしれない)。(p. 414)

 と書かれているところをみると、斉藤隆央氏も『銀河ヒッチハイク・ガイド』を読了済みと考えて間違いなさそうだ。
 カクはカリフォルニア州サンノゼ生まれ。1968年にハーバード大学を卒業し、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得した。現在はニューヨーク市立大学で理論物理学教授。研究論文だけでなく、一般人向けの科学の解説書も執筆している他、さまざまな科学番組やインタビュー番組などでテレビに出演している。
 主な著作は以下の通り(* は、ジェニファー・トレイナー・トンプソンとの共著)。

Nuclear Power: Both Sides (1982)*
Quantum Field Theory: A Modern Introduction (1993)
Hyperspace: A Scientific Odyssey Through Parallel Universes, Time Warps, and the Tenth Dimension (1994)
Beyond Einstein: Superstrings and the Quest for the Final Theory (1995)* 『アインシュタインを超える 宇宙の統一理論を求めて』 講談社ブルーバックス新版版 1997年
Introduction to Superstrings and M-Theory (1999) 『超弦理論とM理論』 シュプリンガー・フェアラーク東京 2000年
Strings, Conformal Fields, and M-Theory (1999)
Visions: How Science Will Revolutionize the 21st Century and Beyond (1999) 『サイエンス21』 翔泳社 2000年
Einstein's Cosmos: How Albert Einstein's Vision Transformed Our Understanding of Space and Time (2004) 『アインシュタイン よじれた宇宙(コスモス)の遺産』 WAVE出版 2007年
Parallel Worlds: The Science of Alternative Universes and Our Future in the Cosmos (2004) 『パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ』 日本放送出版協会 2006年
Physics of the Impossible (2008) 『サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か』 日本放送出版協会 2008年
Physics of the Future: How Science Will Shape Human Destiny and Our Daily Lives by the Year 2100 (2011) 『2100年の科学ライフ』 NHK出版 2012年
The Future of the Mind: The Scientific Quest to Understand, Enhance, and Empower the Mind (2014) 『フューチャー・オブ・マインド―心の未来を科学する』 NHK出版 2015年



Kinnear, Rory  ローリー・キニア 1978.2.17-

 イギリスの俳優。アマチュア時代に、オックスフォードにあるオックスフォード・プレイハウスで舞台版『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』が上演された時、主人公ダーク役を演じた。
 ロンドン生まれ。両親も俳優。私立校のセント・ポール・スクールからオックスフォード大学に進学し、英文学を専攻した。大学卒業後はLAMDAで演技を学び、プロの俳優としてデビューしてからは、映画やテレビドラマ、舞台等で幅広く活躍している。2013年にナショナル・シアターで上演された『オセロ』ではイアーゴ役を務め、オリヴィエ賞主演男優賞を受賞した。
 主な出演映画は以下の通り。

Quantum of Solace (2008)  『007/慰めの報酬』
Wild Target (2010) 『ターゲット』
Skyfall (2012) 『007/スカイフォール』
Broken (2012)  『ブロークン』
Cuban Fury (2014)  『カムバック!』
The Imitation Game (2014) 『イミテーション・ゲーム』
Man Up (2015)  『マン・アップ! 60億分の1のサイテーな恋のはじまり』
Spectre (2015)  『007/スペクター』
Trespass Against Us (2016)  『アウトサイダーズ』
iBoy (2017)  『iBOY』
Peterloo (2018) 『ピータールー マンチェスターの悲劇』


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